第9話

 途中買い物をしたりしてアパートに戻った。

 結局、彼女の姉から行方に関してはまったく聞きだせなかった。

 分かったことは、土曜日の電話で様子がおかしかったことと、父親のことを嫌っていた。そして、その父親は生きていたということ。


 あとは……何だったっけ


 途中で子どもがきて、何だかよく分からなくなってしまった。

 それから、彼女の友達二人の連絡先を手に入れた。

 二人のうち――由香と香織のうち、由香とは月一回の飲み会で何度か顔を合わせたことがある。たしか小柄でかわいらしい感じの子だった。

 夕方を待って由香に電話をした。

 事情を話したところ、由香も心配はしているがまったく心あたりがないとのことだった。ただ、少し気になることがあるという。

 何でもいい、手がかりがほしい俺は明日の昼休みに少し時間をもらうことにした。

 由香の勤める会社近くの公園で会うことにし、電話を切った。

「さてと――」

 明日の昼まではのんびりできる。

「久しぶりに酒でも飲むかな」

 先週具合が悪くなるまでは毎晩飲んでいた。

 それもかなりの量を飲むため記憶をなくすこともしばしばあった。

「せっかく飲んでないんだし、彼女が見つかるまで禁酒するか。願掛けなんてガラじゃないけど」

 結局その日は早く布団に入った。

 仕事をしたわけでもないのに、なぜか疲れていた。そして、その日も夢を見た。

 二日降り続いた雨が止んだ日の早朝、由香と電話している夢だった。

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