捜索開始 ~姉の証言~

第6話

 遠くから――そして少し高い場所から見ていた。

 玲の姉に会ったことはないが、川にうつぶせで浮いている人物が彼女の姉だと、なぜか分かっていた。

 川から道路側へと視線を移す。

 真っ青な顔をした彼女が川へ向かって走ってきた。

 警官となにやら話している。


 車に残っているのは――母親と小さな女の子二人か……


 気が付いたら自分の体が、高い所から車のそばまで移動していた。

 窓を開け、川岸を見つめている母親にささやいた。

「おたくの娘さん、腹を刺されて川に浮いてましたよ」

「……ママ?」

「そう、君たちのママ。殺されちゃったみたいだね」

 言い終わるが早いか、母親が車から降りた。

 足元がもつれて倒れこむ。

 近くで見ていた人が手を貸し、体を起こして支えている。

 続けて小さな女の子が二人降りてきた。

 大きいほうの子は泣きそうな顔をしている。

 下の子は無表情――いや、かすかに微笑んでいる。


 まだ小さすぎて理解できないのか……


「さあ、川の近くまで行ってごらん。ママが死んでるよ」

 女の子たちが走り出したのを見て、高い場所へ戻る。


「見ちゃだめっ!」


 ――玲の叫び声で目が覚めた。

 目覚めた俺は、笑っていた。

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