専門学校の制度と卒業学歴「専門士」「高度専門士」~大卒との違い~

 専門学校は全国に約2800校あり、約60万人が通っています。進学先として18才人口の約2割を占めています。平成に入って常にこれくらいの割合の人が専門学校への進学を選択しており、代表的な進路の1つです。

 しかし、専門学校について知らない人は多いです。専門学校進学者がほとんどいない高校を出て、大学に進み、周りにそういった人々ばかりの職場にいれば知る機会はありません。これは教員も例外ではありません。経験もなければ、教員免許を取るための学習の中でも扱われないため、専門学校進学者が多い高校に勤務して初めて知る教員も少なくありません。

 保護者や教員、あまり専門学校出身者がいない職場の方など、多くの人に専門学校制度について知っていただきたいと思います。


1.専修学校制度と「専門学校」

 専門学校は「小学校・中学校・高等学校・大学」などの主な学校(一条校)とは別枠に設定された学校です。この一条校には「高等専門学校」が含まれますが、「専門学校」は高専とは全く別の制度です。

 主な学校以外で、職業などの教育を行う修業年限1年以上など国が定める基準を満たした学校を「専修学校」と言い、中卒対象の「高等課程」、高卒対象の「専門課程」、その他の「一般課程」があります。

 そして、専門課程を置く専修学校は、専門学校と称することができます。基本的には専門学校は、高卒者を対象に職業関連の教育を1~4年行う短大や大学ではない学校となります。

 ただし、「専門課程を置く専修学校」なら専門学校と名乗れるため、専門学校に高等課程・一般課程が置かれる場合もあります。以下、本文では専門課程を前提として話を進めます。


2.専門学校の歴史 ~卒業資格の制定~

 1960年代に職業訓練機関が多数できたことを受けて、専修学校制度は1976年に作られました。同年文部省「昭和五十年代前期高等教育計画」で大学の量的抑制と地方分散が打ち出される中、専修学校はその対象外だったため、大都市圏を中心に高卒進学需要の受け皿となり拡大しました。また、大学に比べて基準が緩く、社会の変化・ニーズに素早く対応できる点も特徴です。

 次第に、専門学校は同じ年数短大・大学と通ったのと同等の資格が得られるようになります。1994年から2年通い専門学校を卒業した者に「専門士」が与えられるようになりました。これは短大卒「短期大学士」や高専卒「準学士」と同等とされます。また、2005年には4年通い卒業した者に「高度専門士」が与えられるようになりました。これは大卒「学士」と同等とされ、大学院への進学も可能です。

 卒業資格が定められたことで、専門学校を卒業したといっても、専門士を得たか、高度専門士を得たか、特に得ていないかで意味が異なるようになりました。


3.「高度専門士」は学歴として大卒と同等なのか

 専門学校を卒業して得た「専門士」「高度専門士」は、制度上同じ年数の短大・大学の卒業と同等です。しかし、実際にどう扱うかは業界や企業の判断です。

 国家関連の資格等や公務員においては、同等に見なされることが多いです。例えば、社会保険労務士試験の受験資格は短大卒以上ですが、2001年から専門士所有者にも受験資格があります。また、2012年から始まった法務省出入国在留管理庁の高度外国人材制度では、高度専門士所有者は「大学と同等以上の教育を受けた者」として扱われます。

 一方、民間企業において学歴の扱いを縛る法律などはなく、各企業の判断です。専門学校出身者が多い所では不利な扱いは少ないことが考えられますし、逆に全くいない所では高度専門士もないこととされ高卒同等と扱われるかもしれません。大学や大学院を卒業した者の扱いもそれぞれですから一概には言えませんが、専門士・高度専門士は短大卒・大卒に比べて、学校の専門とは違う業種へ行った時に理解が得にくい傾向にはあると思います。


4.日本の高等教育を支える専門学校を知ろう

 専門学校は学校教育法上、主な学校ではないものの規定があるという中途半端な立ち位置です。しかし、高等教育を担う機関の一つとして行政的にも考えられており、実際に多くの人が学んでいます。

 しかし、専修学校制度が始まって半世紀となる中でも、専門学校について何も知らないという人も少なくありません。まずは教育に携わる人、そして生徒・保護者に、社会に様々な人がいることを知る意味でも、進学校の生徒含めて専門学校についての認識が少しでも広まってほしいと思います。


(本文おわり。詳しい参考文献は以下URLに記載)

https://note.com/gakumarui/n/n317bad056157

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