クレア

「クレア、アーデン陛下との縁談話がきた」


 お父様が仰る意味が分かりませんでした。


「どういう事ですの?」


 さぁ…?と、お父様も悩むように答えます。


 アーデン陛下と聖女リディア様は、この国の誰もが憧れる王様と王妃様。


 稀代の悪役令嬢、悪しき魔女ラケルから聖女を守り、身分違いを乗り越えて結ばれる、国の皆が憧れる奇跡の恋愛談ですわ。

 年明けには演劇にも取り入れられるとか。


 だからこそ何故、縁談が来るのかしら?

 あの方々の仲は周知の事実ですのに。


「旦那様、叔母様が王家に嫁がれる前に、王家では正室、側室で争った過去がありますよね?今更、側室を作るなんて、色々と外聞がよく無いと思いますが…」


 お母様の意見にお父様は悩む、わたくしも悩む。


「ただしローラン公爵家にとって有利な話でもあるし、クレアの婚約者は今いないからなぁ…」


 わたくしの婚約者は2年前、自分の領に住む娘を拐い殺した罪で処刑されましたから。


 レグルス・シュバルツ侯爵令息。


 特に愛していた訳ではありませんが何とも情けないですわ。


「そう言えばまた同じような事件があったようですわね」

「全く…この国はどうしてしまったのか…」


 実は婚約者だけではなく、若い貴族間で同じような事件が多発しているみたいです。


 共通点は若い女性を攫ってわざわざ髪を銀色に染めてから、拷問しながら身体を弄んで殺すとか。

 あぁ気持ち悪いですわ。


 聖女を狙った稀代の魔女が処刑される前後から、学園の殿方達はどこかおかしくなっていたような?


 わたくし達中等部の多数の殿方達が毎日高等部の寮に向かい、夜中に濁った目をしながら帰ってくる光景は恐ろしかったですわ。


 今となっては、魔女に呪いでも掛けられているのではとも思ってしまいますわ。


 そう言えば…あの魔女も確か白銀の髪だったはずなので、この事件も魔女の呪いかしら?


 いや、今は関係無い事ですわね。


「お父様、お母様、わたくし一度陛下とお会いしてもよろしいでしょうか?」


 カッコいい陛下と会えるなら、ご褒美ですわ!



◆◆◆



 な、なんて光輝いてますの!?美しさのあまり直視出来ませんわ!


 目の前に座る国王アーデン陛下。御身のお隣にはわたくしの、いや全ての女性の憧れである聖女リディア様。


 この方達と家族になれますの!?

 ご、ご、ご褒美ですわ!!


「ローラン公爵にクレア嬢。わざわざお越し頂き感謝する。母上の実家から縁談をと考えていたものでな」


 くぅ…、笑顔が眩しい!!お父様、呆れた顔で見ないで下さい。


「…娘は見ての通りこの縁談を喜んでおります。ただ、失礼を承知の上で陛下にお尋ねしてもよろしいでしょうか?」


 お父様が尋ねると、陛下はマトを突いた答えをされました。


「側室問題であろう?公爵」

「流石、元王妃陛下に似て聡明であらせますな」


 やはり陛下もこの件は危惧されていたようです。


「でしたら、なおのこと納得致しかねます。陛下は昨今の若い貴族の様に色に狂っているとも思えません。陛下の評判を落としてまで、何故、此度の縁談を求められますか?」


 お父様は家族で悩んだ問題を、直接陛下にお伺いする。必要な時は腹の探り合いをせずに、包み隠さないのがお父様流ですわ。


 お父様、カッコいい!!


「その返答は私から致します。公にしておりませんが、私には世継ぎをお作りする能力がありません。これは聖女の力の代償と思って頂いて差し支えありません」

「…それは…驚きました」


 聖女様の説明に言葉が出ません。

 奇跡の夫婦にこの様な悩み事がありますなんて。


「ですからこの縁談は信頼出来る貴族、かつ能力の高いクレア嬢が適任と思いました」


 なる程それなら納得ですわ。


「では、失礼を承知でもう一つお伺いします。何故我が公爵家をお選びになられましたか?前当主とはいえ公爵家が貴方様を毒殺しようとした事、お忘れではありますまい」


 あら?お父様は今更、何を言ってるのかしら?


「それは簡単ですわお父様。前王妃様…ベアトリクス様があの事件後に、遠戚のお父様を新たな当主に選んだ理由は信頼されていたからです。お父様の政策は国益に繋がりますもの」

「…はぁ」


 お父様があからさまにため息をつき、お前が言ってどうするって顔をわたくしに向けております。


 あ…、やってしまいましたわ。貴族の会話は相手に言わせないと意味がないですのに。


「くくく、ここまで秀才とはな!素直過ぎる所もあるがその秀才は是非欲しい!クレア嬢は学園時代から優秀で、中等部ながらラケルやリディアに比類されたと聞く。どうだろうクレア嬢、側室の件を受けて頂けないか?」


 眩しい笑顔で言われて誰が断る事が出来ますの?目をハートにして、はいと答えましたわ!



◆◆◆



 その後の話はすぐにまとまり国を上げて結婚の儀が行われましたわ。

 本日はわたくしが王家が住む屋敷に住む日で、陛下とリディア様がお出迎えしてくださいました。


 陛下はとても素晴らしい男性でリディア様も優しく聡明な女性でした。


 天国はここにありましたわ、お父様、お母様!!


 わたくし用の屋敷を別に用意してくださるとの事でしたが、仲良くなる為にも家族が増えるまでは一緒に住まわして欲しいと、無理を承知でお願致しました。


 リディア様が笑いながら喜んでと仰ってくださいましたわ。


 この美しさは何なの!?

 お姉様とお呼びしてもよろしいでしょうか?とお伺いしたら、喜んで可愛い妹のクレアと頭を撫でてくださいました。


 ああ、鼻血が…。

 川とお花畑が見えますわ…。


 その日の夜。


 メイドの方々やお姉様にお手伝い頂き、しっかりと準備して夜は陛下と床を共に致しました。


 初めてなので大変でしたが、

 その痛みも幸せでしたわ。


 翌日、夫婦の決まりをいくつか作る事になりましたの。


 まず日頃の正室側室は対等であるが、国に関わる行事では必ず正室を優先する。


 わたくしの子供の後継人はわたくしになる事。

 正室であるリディアお姉様は補佐に回る事。


 夫婦の床は4日のサイクルでお姉様、休、わたくし、休を守る事。

 しっかりとした子種を得る事と、お姉様も対等に愛する為に必要な事ですから。


 休の日は妻のわたくし達が仲良くなる為に過ごす事も可能となりました。


 数ヶ月程でこの生活にも慣れましたわ。


 ただ…、そこで見えてきた疑問が一つあって、奇跡の夫婦は仮面夫婦なのかしら?


 陛下と床を共にする日はお互いが邪魔をしない様に少し離れた部屋で一夜を過ごします。


 ただ、声や音を完全抑える事は出来ないのに、お姉様と陛下が一緒の時はその様な声が一切聞こえませんわ。


おかしいです。


 休の日に三人で寝る時がありますが、お姉様と陛下は互いに背を向けお姉様はすぐに寝てしまわれます。


 陛下はわたくしを弄り、そのままお姉様の隣で長い時間愛し合う事も何度もありました。


 昔から気になると確かめたくなってしまいます。

 我慢出来ずに確かめてしまいましたわ。


 床をする部屋の前に行きこっそりと覗いてみると誰もいない。

 すでに2人は自分達のお部屋にお戻りになっていました。


 数時間はいたと思われるのですが、朝までいる事もないのは不思議でした。


 実はお姉様は夜が弱いのかしら?


 そう思いましたがお姉様と2人で寝る時は、長い時間楽しいお話をして下さいます。


 疑問は消えませんでしたが直接確かめる訳には行きませんわ。


 3人で寝る時は陛下のお相手をする事が当たり前になって来ました。

 まぁ、わたくしも気持ちよさが分かって来たのでご褒美ですわ!!


一度チラッと背中を向けているお姉様を見た事があります。


 息を殺して震えていました。


 陛下は気付いてませんがあれだけ激しく愛し合うのですから、お姉様はやはり起きてました。


 そんな中わたくしは陛下のお子を授かりました。


 リディアお姉様が泣いて喜び、わたくしにいつも以上に優しくして下さいました。


 ただ問題は陛下ですわ。


 陛下の夜のお相手が難しいため、4日サイクルはやめて、お姉様が2日毎にお相手する事をご提案致しました。


 私に任せてとお姉様が言い引き受けてくださる事になりました。


 これなら安心です。


 それから数週間陛下は持て余す事も、我慢している様子はありません。


 時々二人の床から陛下の興奮する声も聞こえてくるようになった為、お姉様が相手をされていると思います。


 わたくしの心配は杞憂でしたわ。

 さすが奇跡の夫婦!



◆◆◆



 そしてお腹の子供が安定した頃です。


 夜中にふと目が覚めたわたくしは、なんとなく廊下を歩きました。

 するとお姉様の部屋の入り口が少し開いて、中から声が聞こえてくるではありませんか。


 あら?何かしら、何かしら?


 覗いてみると寝巻きの陛下と、キャミソールのお姉様がいました。


 二人とも美しいですわ…。


「今日は昂って我慢の限界だ、いつものをお願いしても良いか?」

「申し訳ございませんが、私はそんな気分ではありません。月のモノで酷く不安定でして、今は貴方に対して憎しみを抑え込む事が出来ませんから」


 …ん?

 不穏な言葉が聞こえましたがどういう事ですの?


 でも陛下はお姉様の言葉を無視して、お姉様を床に無理やり座らせて小さい口に無理やり指を突っ込みました。


 お姉様がえずき陛下の手を払います。


「えほっ」


 いいいいけない!

 み、み、見たらまずいですわ!!


 陛下がズボンを脱いでリディアお姉様がため息をつきます。


 お姉様が口に涎を溜めて口を開き唇から一筋の涎が垂れました。


 えっ…お、お姉様のこんな場面!?

 だ、駄目なのに…足が動かないから、目が離せませんわ…。


 こんな時にも絵になるお姉様って美し過ぎませんか?


 お姉様は陛下の熱くなったモノを咥えて舌を出しながら、少しずつ喉の奥に挿れていく。


 お姉様が首をゆっくりと動かして、陛下が興奮し夜の静寂にその行為の音が響きます。


 もう駄目、これ以上は失礼ですわ!


 だけど、興奮が高まった陛下が突然リディアお姉様の頭を掴み、自分で腰を振りだしたではありませんか!


「んっ!!げほっ!!」


 喉の奥に無理矢理押し込まれ、お姉様が涙を流してえずき咳込む。


 足をバタつかせて逃げようとしますが陛下が頭をしっかりと掴んでいる為逃げられません。


 喉深くまで食い込んでいる為首筋には血管が、細い喉には陛下のモノの形が浮かび上がっています。


 お二人はこんなに激しくされてますの!?


 苦しみの余り、お姉様は片手で自らの喉を掴み、

もう片手で陛下の太もも辺りを掴みます。


 お姉様の爪がお姉様の喉に食い込み、お姉様の綺麗な首から血が流れています。


「げぼっ、がぼっ!」


 お姉様の事を全く考えない激しい動きに、陛下がどんどん高まっていきます。


「憎いなら殺してみろよ!国を守る事を諦めるならな」


 お姉様の髪の毛を掴み、喉を壊す様に無理やり奥へ、さらに奥へと押し込みます。


 不穏な言葉を陛下が仰りますが、これはさすがにおかしくありませんか?


 お姉様は完全に気道が塞がってしまい、目が虚になっていきます。

 顔も青ざめて痙攣してきてますが、陛下の腰は喉を壊す勢いで動いて全く止まりません。


 このままじゃ死…。


 陛下が獣のように叫び、お姉様の喉奥に押し込みながら果てます。

 お姉様の喉が少し膨らみビクンと痙攣して失禁してしまいました。


 お姉様が殺される…。

 そう思うのに、わたくしはこの光景に恐怖を覚えて、動く事も出来ず息を殺す事しか出来ません。


 お姉様の口や鼻から、白く濁ったものがごぼごぼと溢れだし、出し切った陛下が掴んでいた髪の毛を離しました。

 喉に挿さっていた陛下のモノを吐きだし、お姉様が床に倒れます。


 陛下は果てたにも関わらず熱いままです。


「ごぼっ!かはっ!」


 お姉様の口から白く濁った液体が出てきて、痙攣し窒息しながらも喉元を押さえて、喉の奥にあるモノを必死に吐き出そうとします。


 そんな危険な状態のお姉様を無視して、陛下は無理矢理お姉様の下着を脱がし始めました。


「げぼっ!ごほっ!」


 お姉様が苦しそうに吐き出してるのに、陛下の熱くなっているモノを無理やりお姉様の中に挿れました。


「んあっ!!」


 激しく咳き込んでいたお姉様が思わず喘ぎます。呼吸困難になっているのにも関わらず腰を動かす陛下。


「だ、ダメ!」


 気づいたお姉様も抵抗を始めますが、抵抗を不快に感じた陛下がお姉様の頭を掴んで無理やり抑え込みます。


「だめ、やめ!」

「憎いんだろ、殺してみろ!」


 足をバタつかせるお姉様を無視して、陛下が怒鳴りながら強く腰を動かします。


 これはさすがに同意の趣味とは思えませんわ!

 お願い、わたくしの足動いて!!!


 パン!!


 お姉様が陛下の頬を強く叩き乾いた音が鳴りました。

 陛下が正気に戻り、腰の動きを止めます。


 その音にわたくしも止まります。


「げほっ!!ごほっ!!」


 正気に戻った陛下が抑えつけていた手を離すと、お姉様は繋がったまま上体を起こしてまた咳き込みます。


 口からまた白く濁った液を吐き出します。


「抜いて…早く抜きなさい!」


 お姉様の怒鳴り声で陛下が慌ててお姉様から抜くと、月の物で粘着質な血が中から溢れました。


 お姉様は上半身を起こして、自分の血にまみれたまだ熱い陛下のモノを、口で咥えて奉仕し始めました。


 しばらく奉仕する卑猥な音だけが響きます。


 陛下が興奮してまた頭を掴みますが、お姉様は今度は抵抗しませんでした。


 乱暴ではないけど、先程のように喉の奥まで突いて、お姉様の身体を考えずに快楽を求め、陛下は腰を動かして果てました。


 リディアお姉様はまたしばらく咳き込んで、喉の奥に出されたモノを吐き出しました。


「落ち着きましたか…?共に出かけた日とはいえ、自分を見失うとは貴方らしくありませんね」


 お姉様は自分の喉に手を当てて傷を癒しながら陛下に問う。


「すまない…」


「私を二度と抱かないとクレアを娶る時に決めたはずです。私を快楽と苛立ちのまま犯して、もし子供が出来てしまったらどうなさるおつもりですか?」


 子供…?どういう事かしら?

 お姉様は子供が出来ない体では無いの?


「くだらない欲求で、国が乱れる危険性が増えたらたまりません。ただお断りした事は謝罪致します。クレアに相手させる訳にはいきませんし、共に出かけた日ぐらいなら私の口をいつでも使って頂いて構いませんので」

「…いや、すまない…」


 愛が全く感じませんわ。

 わたくしは今、何を見たの?


 そこに見えるのは、奇跡の夫婦とはかけ離れた二人。


「この状態の部屋で眠る事は出来ません。掃除の依頼と湯浴みを行なってから、私は陛下の寝室で眠らせて頂きます」

「分かった、準備しておこう」


 陛下が部屋から出ようとするので慌てて物陰に隠れる。


 リディアお姉様が、もう一度陛下に声をお掛けになられる。


「陛下はご納得されていないようですが、私の愛する方を処刑した貴方もこの国も許す事は一生ありません。憎くて憎くて、今すぐにでも殺したくてたまりませんから」

「…あぁそうだな…」


 陛下が自室へ戻られました。


 陛下が自室へ戻られる音が聞こえてから、リディアお姉様の泣き声が聞こえてきました。


 声をかける?

 いや…何も知らないわたくしがなんて声をかけたら良いのか分かりませんわ。


 かける言葉も見つけられず自室に戻りました。


 しばらくして体調か安定したわたくしは、吐き気も治まっていた為、陛下にせめて口で奉仕する事を提案しましたわ。


 お姉様に負担をかけない様に、わたくしが出来る限り相手をするように。


 あの夜のように、毎回お姉様が泣いていたとしたら、わたくしは我慢出来ませんでした。


 お姉様との行為を見てしまった為、陛下には少し恐怖を覚えましたが、陛下はお姉様と同じ事を、わたくしには絶対にしませんでした。



◆◆◆



 元気な男の子が生まれましたわ!!


 陛下だけでは無く、お姉様も自分の事のように泣いて喜んでくださいました。


 わたくしは本当にお二人から愛されて、本当に幸せですわ。


 お姉様はわたくしの身体を気づかい、定期的に癒しの魔法をかけて、世話もしてくださいました。


 お姉様は毎日、屋敷の裏にある塚へ行き祈りを捧げます。


 ようやく動けるようになったので歩く練習を兼ねて、お姉様と一緒に行き祈りを捧げました。


「この塚に眠っている方はどのような方ですの?」

「そうね…私の大切な愛する人かしら?」


 お姉様が悲しい顔をしながら答えてくださった。


 それは陛下に対して言っていた愛する人の事でしょうか?

 陛下がお姉様の愛する人を処刑したとはどのような意味なのでしょうか?


 そう思い、時々わたくしも塚へ祈りを捧げていると、気がつけば子供が生まれてから半年も経ち、また陛下のお相手が出来るようになりました。


 お姉様のお力で、産後の傷は早くから治りましたが、やはり精神的な部分や体調が整うには、しばらく時間がかかりましたわ。


 本日よりお姉様に負担かけぬように、陛下が立てなくなるまで頑張りますわ!


 前王妃様が残された秘蔵の資料をもとに、陛下が喜ぶように様々な研究と練習しました。

 ただ前王妃様はこのような研究を何故行なっていたのかしら?


 まぁ良いですわ!


 そう張り切り過ぎてやり過ぎましたわ。

 頑張りすぎて、頑張りすぎて、わずか数ヶ月でまた妊娠だなんて…。


 陛下とお姉様は泣いて喜ぶ。

 だけどわたくしは素直に喜べませんわ。


 お姉様は子供のお世話とわたくしのお世話を、メイドの方々と一緒に手伝ってくださいます。


 そしてまた陛下のお世話も。


 どうしても安定するまでは吐き気が酷い為、お相手するのも難しい。


 お姉様の負担を減らしたくて口で無理やり試してみましたが、吐き出してしまいました。


 だから危惧通りお姉様に無理をさせてしまう。


 今も隣の部屋でえずく音や足がバタつく音が鳴っております。

 最近は二人とも荒れており、毎回奉仕の度にこのような乱暴な音が鳴っています。


 事情は分かりませんが間違ってお姉様が犯されたり最悪殺されないように見張ります。

 いざと言う時は聞き耳を立てていた事を咎められる覚悟ですわ。


 でも手遅れになった日が訪れてしまいました。


 あの日もお姉様が喉奥を付かれ過ぎて、窒息して失神されたとき、おさまりきらない陛下は、失神しているお姉様をベッドに寝かせてモノのように下を使い果てました。


 ふと気づけばいつもと違い、ベッドが軋む音。


 おかしいですわ!!


 慌てて見に行くと、まさに陛下が達しようとしてる所でした。


 お姉様が無造作に放り投げられベッドに横たわって、手足は投げ出され、ただ使い捨ての人形のように欲求の吐口にされる。


 頭がベッドの端から落ちて、伸びきった首を陛下が掴み指が首筋に食い込んでいました。


 お姉様の顔は赤黒くなり目は虚で、口からは涎と泡と白く濁った液が混ざりあって溢れています。


「殺してみろよ!」


 叫びながら強く腰を打ち付けます。


 このままではお姉様が死んでしまう!!


「陛下!駄目です!」


 わたくしはなり振り構わずに止めましたが、陛下が邪魔するなと叫び、片手で突き飛ばされます。


 この!!


 陛下が声を上げて達します。


 本当にいけませんわ!!


 興奮し手に力を込める為、お姉様の細い首がさらに絞まり、お姉様が何度も痙攣しました。


「おぉぉおお!」


 痙攣の締まりで刺激された中に快楽が生まれて、腰を押し込んで陛下も震えながら果てます。


 しばらくして満足した陛下がお姉様の首から手を離して中から抜きます。


 お姉様の中からは、大量の白く濁った液がごぼっと溢れました。


 首にはドス黒い痕。


 この男!!


 陛下が改めてわたくしを見ますが、無視をしてすぐにお姉様に駆け寄ります。


「頭は冷えましたか?」


 陛下に話しかけながらお姉様の心音を確認して、弱々しいながらも生きている事を確認します。


「冷えたなら邪魔なので出てって下さい」


 さすがに冷たい声が出る。

 陛下が唖然として出る事無く見ているが、わたくしは無視します。


 喉に無理やり指を突っ込み、喉に詰まった中身を吐き出させます。

 白く濁った液が喉の奥から沢山出てきます。


 呼吸を安定させる為に、陛下のモノでドロドロになった口に口をあわせ人工呼吸をし、ようやく呼吸が安定します。


 医療についても学んでおいて良かったですわ。


「湯と拭くものを持って来て頂けますか?」


 ずっと後ろに立たれて邪魔なので、陛下の事を見ずに言うとわかったと言って取りに行かれました。


「お姉様…ごめんなさい」


 わたくしはお姉様の中から子種をかき出します。


 もし子供が出来てしまうと、お姉様が貫いた何かが台無しになってしまう。


 失礼を承知で棒を挿しこみ出来る限りかき出します。

 こんな事して意味があるとも思えませんけど。


 意識は無くても快楽か身体を無理させているのかビクビクと痙攣するので、中を傷つけないように、慎重に、取り漏らさないように。


 もしお姉様に子供が出来てしまったら、わたくしは喜んで身を引きますわ。


 国に騒乱を持ち込むわけにはいきませんから。


 陛下が湯を持って来たので、お姉様の中と身体を丁寧に洗い拭いて綺麗にして新しい服を着せます。


 これでよしと…。

 落ちついたので陛下に尋ねます。


「陛下…貴方はお姉様を憎んでるのですか?殺すつもりですか?」

「違う」


「趣味や性癖では無いのでしょう?ならばもっとわたくしの時のようにお姉様にも優しくして下さい!壊れてしまいます!」


 思わず声を上げて、その声にようやく気がついたリディアお姉様。


「あれ…クレ…ア?」

「お姉様…床の最中に立ち入ってしまい申し訳ございませんでした」


 犯されてましたよとはさすがに言えないので、喉に入ったモノはかき出した事と、陛下が興奮して首を絞めてたので、首の痕を早急に治すよう伝えました。


「ちょっと今日は激しかったみたいで…ごめんなさい。そうよね…陛下」

「あ…あぁ…」


 わたくしは今の家族関係を壊したくなかった。

 とても身勝手な理由で事実を隠しました。


 お姉様はたまたま妊娠しませんでした。

 でもたまたまです。


「わたくしは…本当に最悪ですわね」


 身勝手な理由で嘘をついた事に。

 妊娠しなかった事で嘘を嘘のまま通せた事に。

 家族が壊れなかったから喜んでいる事に。


 お姉様は陛下を憎み、陛下はお姉様に憎まれる事を何故か嫌がる。


 この関係は長い間お二人に確執を生みました。


 お二人は良く国の為という言葉を使いますが、夫婦では無く同士が近いのかしら?

 お二人関係を表す言葉を、わたくしには分かりませんわ。


 あれからは、陛下が怒りを抑えられなくなる前に、止めるようにしています。


 陛下には必ずわたくしの隣の部屋で、お姉様と会うように依頼しました。


 ただお姉様には気づかれないように…。


 まぁあれ以降お姉様は犯される事はありません。


 二人目も無事に生まれ、産後の運動を兼ねて散歩がてら塚まで歩いて行きます。


 お姉様の祈りの時間を外して行ってみれば、陛下が塚に向かって話しかけていた。


「今日は少し寒いな。相変わらずリディアとは全くうまく行ってない。あの時から嫌われたままだ。嫌われて当たり前なんだが俺も我慢出来なくなってしまうんだよ」


 そう塚に向かって言う陛下の顔が忘れられない。


 愛おしい人へ向ける顔。

 お姉様と同じ憂いを帯びた顔。


「あぁそうだ。クレアが産んだ二人目の可愛い子供をお前に見せてないな。今度連れて来るから是非見てくれよ」


 塚に眠る名前の分からない人に向かって陛下が話し続ける。


 塚の人物はやはりお二人にとって1番大切な方なのかしら?


 わたくしはお二人の過去をあまりにも知らない。



◆◆◆



 陛下に許可を頂きお父様と会う事になった。


 二人目の子供が生まれたとき以来なので、ほぼ3年ぶりだった。

 あ、四人目も無事に生まれていますわ!

 子宝ですの!


「お父様にお願いした件はお分かりになりましたでしょうか?」

「とりあえず分かる限りだが、何故今更こんな事を調べさせたんだい?」

「家族の繋がりを戻す為でしょうか?」


 あまり納得がいかない顔をしているが、まぁ大切な娘の願いだと言って教えて下さった。


 調べて頂いた内容は、わたくしが中等部時代に学園で、…正確には高等部で何が行われていたのか?


「当時聖女であるリディア王妃陛下は酷い虐めに遭っていた。主犯は稀代の悪女である魔女ラケル。アーデン国王陛下の学園時代の婚約者である事は知っているね?」


 お二人が親密になり恋仲となり、特に陛下の人としての芯が変わったのは学園時代。


 そう思い依頼しましたが、まぁその話がメインになりますわ。


「数多くの令嬢が彼女に従い、大小問わず様々な虐めを指示していたようだ」

「…それはわたくしも知っている目新しい事のない情報ですわね」


 そう呟くとお父様がジト目で見てきました。

 思わず本音が…おほほほほ。


「彼女が狡猾なのは本人の味方の振りをする事だ。王妃陛下の味方の振りして近づいて、わざと令嬢から庇うらしい」


 …ん?庇う?


「王妃陛下の代わりに令嬢から叩かれたりもする事もあるらしいからタチが悪いかな?当時王妃陛下は魔女ラケルを無実と思い込んでいたという噂もあるからね」


 お父様の話から聞く魔女とお姉様から時々聞く塚に眠る想い人が重なってくる。

 何だかかなりの共通点があるような…?


 私は陛下とお姉様の二人を思い出す。

 共に憂いを帯びた顔で塚を見つめている。


 塚に眠る人物を想像する。


「魔女ラケルの他の噂としては、学園時代にいた多数の貴族の令息をその身体を使ってダメにしたという噂があるね」

「どういう事ですの?」

「若い貴族が女性に対して起こす、暴行、暴力事件を知ってるだろう?領民を拐っては犯して殺す。場合によっては自分の妻を欲望のままに犯して殺す」


 あぁ、あの最低な事件ですね。

 処刑された元婚約者を思い出しましたわ。


「ラケルが数多くの男をたぶらかし、心を操った為彼らは病んだらしい。未だに魔法で操り続けているという噂もある」


 さすがにその噂は無いのでは…?


「まぁ、あり得ない話だからそう思うのは無理ないよ。ただ…少し気になる事があるんだ。虐めを行なっていた令嬢達は、ことごとく魔女に誑かされた令息と結婚した事だ」


 たまたまでは無くて?

 …でもお父様はことごとくと言いましたわ。


「暴行や暴力、あるいは特殊な性癖の犠牲となった何名かの令嬢は亡くなったらしい。結婚前に何名かの令嬢達は、殺されるから取りやめて欲しいと直訴もあったとか」

「直訴したのに…ですか?」


 それでことごとくはおかしいですわ

 調査ぐらい入りそうですが。


「クレアのもともとの婚約者…レグルス殿も、虐めを行なっていた令嬢と婚約を変更する事になっていたんだよ」

「どなたですか!?」

「魔女ラケルの取り巻きであり手下のリアナ・フルブレト侯爵令嬢。結局レグルス殿は侯爵領で起こった惨殺事件の犯人として、兄で現シュバルツ侯爵によって処刑されたから婚約も無くなったけどね」


 …何て事…。婚約を免れたリアナ嬢は、数年前に夫であるリグル伯爵の令息に…殺された筈ですわ。


 本当に…関係者がことごとく死んでるわ。

 婚約段階から操っていたのかしら?


「本当に誰の指示か分かりませんが、ことごとく婚約の変更をさせるなんて中々強行ですわね」

「何他人事のように言ってるんだい?この命令は全て今の陛下が行った事だよ」


 えっ…、余計に分からなくなりましたわ。


 王家は魔女ラケルの事件を彼女と一族を処刑する事で終えたはずでは?


 一体これはどういう事なのかしら?


 …もしも仮に魔女ラケルがお姉様が話される塚の人物だとして、話の通り本当は良い人だったとしたら…どうなるのかしら?


「ラケルが良い人かい?魔女には証拠もあったから考えた事無いけどね」


 でもわたくしの中で塚の人物が魔女ラケルとしか思えてきませんのよ。


「虐めの主犯は他の令嬢か外部の者。数多くの貴族と身体を重ねたのでは無くて、無理やり関係を持たされたか最悪犯された。無実を分かっている国王陛下や王妃陛下が助ける為に翻弄したって事かい?」


 それなら塚の前にいる時の憂いを帯びた二人の理由が分かりますから。


「成程ね。筋は通るけど、だったら彼女を魔女にした動機は何だい?」

「動機ですか…?聖女様と陛下の物語を作る為に、誰かが魔女ラケルを犠牲にしたのでは?」

「やはり我が娘は聡明だね。そうなるとこれは王家が関わった案件だ。ならば、これ以上は関わるべきでは無い事も分かるね?」


 この話はこれでおしまいだ。

 まるでお父様はそう言ったかのようだった。


 わたくしはすぐに学園時代の伝手を使って、あの当時に中等部寮を抜け高等部寮に足を運んでいた貴族の証言を探しました。


 そして貴族の友人の伝であっさりと証言を見つける事が出来ましたわ。


 当時、高等部寮には白銀の髪の美女が監禁されており、沢山の殿方が女性をあらゆる方法で犯し、あらゆる方法で拷問していた事が分かりました。


 当時の王妃様や貴族達の何かしらの利益の為に、魔女は殺されたのかもしれません。


 リディアお姉様は陛下を国を憎んでおりました。


 すぐにでも彼を殺したい程心の底から憎んでいました。


 もしリディアお姉様の愛する塚の人が魔女ラケルで、王家の力で無実の少女が処刑されたとしたら?


 魔女ラケルが処刑される日を、わたくしはこの目で見ましたわ。


 顔も性別すら分からなくなった魔女の姿。


 あれが全て貴族の殿方達の仕業だとしたら、関わった殿方達の心が醜く歪んでしまった理由も分からなくも無いですわ。


 関わった令嬢達があの処刑に必要以上に恐怖した理由も分からなくも無いですわ。


 陛下が当事者達に罰を与える為に、婚約の入れ替えを行った理由も分からなくも無いですわ。


 そして貴族の殿方に当事者の妻を殺させ、法の力で当事者の殿方を処刑させる。遠回しに該当者を全て殺す理由も分からなくも無いですわ。


 もしも魔女が無実であるならば、彼女を本当にお慕いしていたのならば、リディアお姉様は、どれ程の憎しみを秘めているのでしょうか?


 けどわたくしは…大切な家族に直接聞く事は出来ませんわ。


 わたくしには聞くだけの資格も無いもの。

 当時中等部だったわたくしでは関わる事が許されないから。


 何も出来ない歯痒さを感じ、この事は心の中に閉じ込めた。



◆◆◆



 あれから10年。


 陛下とお姉様の関係は時が立つと共に本当に軟化致しました。

 一時のお二人が嘘みたいに。


 お互い気持ちの落としどころを少しは見つけたようですわ。


 それまで陛下は時々発作が出たようにお姉様を求める事がありましたが、わたくしの手練手管で完封ですわ!


 おほほほ!


 今のわたくしならばこの手一つで思いのままですわ!


 大切なお姉様に傷をつけさせる訳にはいきませんから。


 それに少しでもお姉様の心の拠り所になれるように、わたくしも子供達も常に愛している事を伝えました。

 事実世界で2番目に愛しているから毎日告白しているようなものですわね。


 子供との時間は彼女にとっても良い時間であると思いたいですわ。

 あの教育ママっぷりを見てると本当に楽しそうですから。


 長男に王位継承権を授けて、勉強付けでプライドをへし折る様は素晴らしいですわ。

 最近のアルベルトは生意気になったから見ていてたまりませんわ。


 まぁ、あの子にとってお姉様は歳の離れた憧れの女性でもあるのかしら?


 長男がお姉様の顔をチラッと見て顔を赤らめる。


 分かりますわ、その気持ち!

 だいたい30も半ばでその若さは何ですの?


 まだ20代前半じゃない!!


 お姉様最高!!

 あぁ、イチャイチャしたい。


 この年月で1番の変化は陛下とお姉様がケンカをするようになった事かしら?

 侍従関係から兄妹みたいに変化している。


 この前の殴り合いで、陛下を倒したお姉様はカッコ良かったですわ!


 今日も一日の最後に長男と共に塚へ向かう。


 お二人に内緒で手を合わす。


 真実は分からないしこの中の方が結局誰か分からない。

 この先お姉様の憎しみが癒される時が来るのか分からない。

 わたくしに真実を教えてくださる日が来るのか分からない。


 ただわたくしは2人を愛しているので、人生を掛けて支えて行くのみですわ。


 今日も塚の中にいらっしゃる誰か分からない方へ。


「ありがとうと」


 そう呟いてわたくし達は屋敷に戻る。






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