第2話

 その日の昼休み。


 私は友達二人と、家庭科室の中で昼食を摂っていた。


「…それでそれで?」


 花梨かりんは箸を仕舞ながら、ワクワクした様子で私に聞いてきた。


「…それだけ。先生が教室に入って来て、ホームルームが始まっちゃったの」


 私は食べ終わったお弁当の箱を片付けながら、あっさりと答えた。


「柏葉君の返事は?…チョコは受け取ってくれたんでしょう?」


 あんずは口に黄色のタオルハンカチをくわえながら、私たちが座っていたテーブルのすぐ横にある水道で手を洗った。洗いたい時にすぐに手を洗えるので、家庭科室の中というのは、とても便利である。


「まだ」


 二人は同時に私をキッと見つめた。


「あ~もう!!」

 花梨は声を上げた。


「まどろっこしい!3年間同じクラスだったのに苺は、華の高校生活を何だと思ってるの?!」


 杏も頷いた。


「私達もうすぐ高校卒業だよ?…卒業したらジ・ENDなのよ?」


 青春ってのは、ホントに短くて儚いの!と、花梨は私に向かって、やれやれとため息をついた。


「…そうは言っても」


 今すぐ返事を聞かせて下さい。


 とは、とても言えないし…。


 花梨と杏には、他校にとびっきり素敵な彼氏がいる。幸せのおすそ分けをしてくれるため、今回の私の告白にはシナリオ含め、全面的に協力をしてくれていた。


「朝っぱらから教室の中で派手に告白した勇気だけでも、褒めて欲しいな…」


 考えてみたら、すごく迷惑で恥ずかしかったろうな、柏葉君。


 みんなの前で大々的に、あんな風に告白なんかされてしまって…。


 うんうん、なかなか偉かった、よしよし、あんたにしてはよくやった、と二人は私の頭を撫でてくれているが。


「やって良かったでしょ?朝の公開告白!」


 花梨はカールがかった紅茶色の髪を揺らしながら、にやにやと笑った。


「…わかんないよ、返事待ちだし…。クラスの女子達からは、恐ろしく白い目で見られちゃって…。生きた心地しなかった」


「それでいいの、何事も先制攻撃よ。敵よりも早く考えて動く、これ戦いの鉄則!」


 歴史好きの黒髪美少女・杏が、ギラついた声色で締めくくる。

 

 戦国武将じゃ無いんだから。



 その時。



 家庭科室のドアが、ガラッと空いた。



 中へ入って来たのは、

 私の想い人。



 氷の王子、柏葉樹君だった。




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