雨が降る夜に

黒糖

クロ(1)


あたしはクロ


名前の通り 体は真っ黒で

すらっとした長い4本の足に ながーい尻尾

…そう

ネコです。


そんなあたしは今、エアコン?っていう箱の上から タツヤを眺めています

あ、タツヤはあたしのご主人様ね


ずっと眺めていると 椅子に座ってたタツヤが背伸びをする

やっと起きたのね

あたしは直ぐに飛び降りて、また登る。

膝の上で毛繕いを始めると、タツヤはやれやれみたいな感じで あたしの頭を撫でてくれる

今も。


いつ見られてもいいように 毎日欠かさず身だしなみには気をつけてるの

だから、あたしは綺麗って

近所でも評判。    …本当よ?


だけど、どんなにあたしが綺麗でも

タツヤには見てもらえない

だって目が見えないから…



少し話が暗くなったわね

気分転換に、あたしとタツヤの出会いを教えてあげる





雨が降る夜に

あたしは1人でいたらしい

箱の中に。

あたしを捨てた奴が、手切れ金がごとく

安い傘を箱にさしてたみたい

ふざけた話よね

普通そんな状況なら 気付かれないし

気付いても素通りするよね


でもタツヤのお母様は違った

あたしを拾って、タツヤに会わせてくれた。

そう思うと、捨てられていたのは幸運ね

おかげで今とても幸せです


今はともかく 捨てられてた時を

らしい?みたい?って、何を他人事のように…と思うよね。

でもね、覚えてる訳ないじゃない

その時、あたしまだ赤ちゃんよ?

話はお母様から聞いたの。


あなたたちは、母親のおっぱい飲んでました〜って覚えてる?

そうね。ないでしょ

馬鹿じゃない?



少しムカついてきたわ

それからの話をしましょう


あたしは2人に育ててもらって 大人になった

とても幸せで楽しかったわー

3人でごはんを食べて。

3人で公園を散歩して

3人でごはんを食べに行って。

3人で一緒に寝て(リの字)

起きたら3人で朝ごはんを食べる。


え?ごはんが多いって?

1日3食たべたらそうなるわね

あたりまえじゃない?

と、半分冗談だけど

楽しかったの  幸せだった。


お母様が亡くなるまでは



あの時はタツヤ大泣きで

あたしもニャーニャー泣いたわね。

え?ニャーニャーって、本当に悲しんでるの?だって?


…呪うわよ?


まぁ、でもね。あたしは誓ったの

お母様が居なくなってしまった分、もっとしっかりしなきゃ!って思ったし

それに、なりより大切なバトンを引き継いだわ


季節がかわるごろから徐々にタツヤは明るくなって

あれから3年。 今ではすっかり元気に

…とても嬉しい


楽しかったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと。と、

いろんなことが いっぱいあったわ


タツヤとは6年一緒に 重い時間をーって

ん?重い? 痺れた?

あっ! ごめんなさい。

すぐ退きます…




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