6ー3

 「大丈夫です。私には渉がいますから皆さんは早めに休んで下さい」

 「ありがとう、綾ちゃん、渉君」

 綾と渉以外の生徒は両親の元へ行き、自宅へ帰って行った。

 羽間という刑事から話を聞かれる事になった綾と渉は一度、深呼吸して刑事さんの質問にのぞんだ。

 「詳しい事は明日、皆さんそれぞれに聞いていくんだけど、先に少しだけお話を聞かせてほしいから聞くね」

 「「はい」」

 「綾、渉。迎えに来たぞ」

 「滝森先輩!」

 「ん? あっ、羽間かぁ。久しぶりだな。元気にやっているか?」

 「はい。おかげさまで」

 刑事さんこら質問される前に2人の父、連の姿が見えた。どうやら知り合いみたいだ。

 「お父さんの知り合いなの?」

 「高校の後輩だ。部活が一緒でな」

 「そうなんだ」

 「滝森先輩のお子さんですか?」

 「そうだ。2人共、挨拶をしておきなさい。これから何かあった時に頼りになるからなぁ」 

 「「はい」」

 蓮に言われて綾と渉は軽めの自己紹介を始めた。2人の自己紹介のあとに羽間刑事も紹介が終わった頃に校長が蓮に声をかけてきた。

 「こんばんは、滝森さん」

 「こんばんは、校長先生」

 「綾さんと渉君がまだ帰れずにいたっては申し訳ありません」

 「いいえ、大丈夫ですよ。校長先生には、こっちの無理なお願いを聞いていただきありがたいですよ」

 「そうですか」

 「校長先生。私と子供達と刑事さんで話せる場所をお願いしたいんですが?」

 「分かりました。近くの教室をお使い下さい」

 「ありがとうございます。綾、渉、案内を」

 「「はい」」

 職員室こら一番、近い教室に刑事さんと蓮を案内した2人。教室のドアに近いところに座って刑事さんの質問から話が始まった。

 「時間が遅いしまた明日に違う刑事さんから聞かれると思うから、こっちの質問された事だけ答えてもらってもいいかな?」

 「「分かりました」」

 「ありがとう。じゃあまずはなんで夜の学校に居たのかな?」

 「部活活動で屋上にいました」

 「部活?」

 「はい。今日は天文部の夜の活動日だったので」

 「それであそこに居たんだね」

 「はい」

 「2人共、えーと綾さんと渉君も天文部なんだね」

 「違います」

 「違うの!」

 「はい。私は今、部活の見学者で渉は一緒に来てくれたんです」

 「そうなんだ」

 メモをとりながら羽間の質問がとんでくる。夜の学校で何をやっていたのか、和志が屋上から落ちてしまった要因は何なのかといろいろ。ある程度、質問してから時間が遅いので今日はここまでとなり、その場で解散になり、詳しい事は明日に捜査する事になった。




 和志がなくなってしまった次の日は急遽きゅうきょ、学校は休みとなった。

 昨日の夜、学校にいた生徒の家に刑事が聞き込みに訪れては、事情を聞きに回っていた。綾と渉のところは夕方で一番、最後にやって来たのだ。

 来たのは2人の刑事だった。一人は父の親友の簾堂刑事と簾堂刑事の部下の箕上みうえという刑事だった。真面目にスーツを着こなし、見た目は優しそうに見える。背は簾堂より少し低い。

 「よう! 蓮、来たぜ。ここで最後だ」

 「来るなとは言わないが、そちらは?」

 「俺の部下の箕上 あきらだ」

 「初めまして」

 「初めまして。ここの探偵事務所の所長の滝森蓮です。今日は2人なんだなぁ、簾堂。いつもは一人で来るのに」

 「あぁ、これからはずっと2人で捜査だ。新人が入ったからなぁ。これからは俺の相棒さ」

 「そうか、優しく教えろよ」

 「おい、蓮。それじゃあ、俺が鬼みたいな印象を与えるなよ。あっ、こいつとは昔からの親友」

 「そうなんですか。道理で親友同士の会話だなと思いました」

 「鋭いだろう」

 「教えがいがあるんじゃあないのか」

 「そうだろな。それで綾さんと渉君と話をしても大丈夫か?」

 「大丈夫だ。俺の子供達だぞ」

 「はいはい」

 「綾、渉、こっちに来なさい」

 「「はい」」

 綾と渉は蓮に呼ばれて2人の刑事の前に現れた。蓮は簡単に箕上刑事に2人の事を教えた。

 「私の子供達です。姉の綾と弟の渉です。見てお分かりと思いますが双子です。2人とも挨拶しなさい。簾堂はいいがこちらは新人の箕上刑事だ」

 「初めまして姉の綾と言います。高1です」

 「初めまして弟の渉です。同じく高1です」

 「初めまして新人で簾堂刑事とこれから共に行動することになっています、箕上晟と言います」

 簡単な挨拶をしてから簾堂が2人に手をあげて、挨拶感覚で話をして来た。

 「やぁ、2人とも。辛いと思うが話を聞かせてくれないか? 昨日は、羽間が話を聞かれたと思うが1日たって思い出したこと何でもいいから」

 「はい、けど……」

 「俺と綾の答えは昨日と同じ。他の人と会話をしていると、突然に叫び声が聞こえた時には、もう先輩はフェンスと一緒に落ちたあとでした」

 「やはりそうか。同じ証言か。アズサという子だけが違うが」

 「アズサ先輩が和志先輩の近くにいましたから……」

 「そういうことか。しかし、なぜ少年が屋上から落ちたんだ、秋於?」

 「アズサという子の証言だと和志という少年がフェンスに背中を預けた瞬間にフェンスと一緒に落ちたらしい。落ちた原因は、フェンス乗ろうかと考えている。屋上に行くことが禁止されているみたいだし、取れたネジも見つかっている。学校側の点検ミスと考えるのが妥当だとうと思う」

 「あ、あの……簾堂刑事」

 「なんだ?」

 

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