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 捜査3日目。朝、学校で若菜と部活の話をしている時、夜の活動する時の部活は休みだと聞いた。休みの間、先輩が夜の活動を準備するみたいだ。

 綾は今、天文部で見学者として部活に参加している。もちろん今日の活動の準備を先輩達がやっているなんて知らない。

 綾は放課後、若菜と一緒に帰ろうと誘ったら一緒に帰れないと断れて、理由を聞いた時に始めて夜活動の準備について知った。

 若菜は先輩達がそれぞれ用事ができてしまい、夜活動の準備が出来ないから若菜が変わりに夜の準備をする事になったみたいだ。他の1年生はまだ準備の仕方が分からない。

 けど、若菜と雫は知っていたみたいで、今では雫が亡くなってしまい、1年生では若菜しか知らないので、若菜一人でやることになったみたいだ。

 綾は、じゃあ自分も手伝うよと若菜に伝え、一緒にやることになった。そして今、第二理科室にいた。

 「若菜。私、何やったらいい?」

 「そこにある段ボールを1個持って行ってくれる」

 「これね」

 「そう。あと綾、これ屋上の鍵。これを持って先に行って。うち、ちょっとトイレに行ってから屋上に行くから」

 「はーい」

 綾は屋上の鍵を若菜から預かって屋上に向かう。

 ここの学校は屋上があるが一般的に立ち入り禁止になっているので、ドアには鍵がかかっている。しかし、今回のように部活で使うとなるとまずは、学校の許可を得てから部活の顧問である先生あるいは、他の先生から鍵を預かって、部活での使用する事が出来るようになる。

 2つの条件がクリアになれば屋上は使っても大丈夫な事になっている。

 「綾?」

 「渉!」

 綾が屋上に向かっている最中に丁度、渉に会った。

 渉は委員会で帰りが遅くなるって言っていたっけと綾は思い出していた。

 「委員会が終わったのね?」

 「あぁ」

 「じゃあ今から帰るの?」

 「そうだけど。……綾、その荷物ってもしかして……今日の夜、使うやつか?」

 「うん、そうだよ。若菜と帰ろうと思っていたら若菜が今日の準備を1人でやらないといけないみたいで、1人じゃあ大変そうだから私も手伝っているのよ」

 「ふーん、それ持つよ。これと交換」

 「ありがとう、渉」

 渉は今日の夜、綾と一緒に学校に来る事になっているので、綾が持っていた荷物が今日の夜に使うものだとすぐに分かった。渉は自然と綾が持っている荷物を自分が持っていた鞄と交換してあげた。

 2人は屋上へ向かう。屋上へ行ける階段を上って屋上についた。

 綾は若菜から預かった鍵で屋上の鍵を開けて外に出てみた。

 「「わぁーー」」

 「おっ、さすが双子。行き、ピッタリね!」

 「若菜」

 「お待たせ! 渉君も手伝ってくれるの?」

 「まぁ、どうせ今は暇だし」

 「ありがとう、助かるわ~。じゃあ、やりますか!」

 「若菜。これ、どうしたらいいの?」

 「それはねぇーー」

 2人で持ってきた段ボール箱を開いて中に入っている道具を出していき、若菜の指示で綾と渉の2人は夜の活動の準備をしていく。

 「あっ、道具が足りない!」

 準備をしていく途中で道具が足りない事に若菜は気がついた。

 「じゃあ、私が取りに行くよ。第二理科室にあるのよね?」

 「うん。えーと、この黄色のテープとランプもあと5個くらいあった方がいいかも」

 「じゃあ、俺も行くよ。綾だけじゃあ、なんか無理ぽいし」

 「ありがとう、渉」

 「仲が良いことで。じゃあ、お願い」

 綾と渉は一度、第二理科室に向かい若菜に頼まれたものを探した。けど、ランプはすぐに見つかったが黄色のテープがなかなか見つからず、2人は天文部の顧問である竹村先生のところに行き、テープを貰い屋上へ向かった。

 「遅かったね?」

 「うん。テープが見つからなくって先生のところに行って貰ってきたの。だから遅くなっちゃったよ」

 綾と渉は持ってきた荷物をおいた。

 「そうなの。あとで部長にいっておくよ。あとは……ランプをそこに置いて、テープも少し足りないところに貼って……おしまい! じゃあ、帰ろうか、2人共」

 「「はやっ!」」

 最後に若菜が1人で軽く補充していき作業が終わった。若菜は屋上のドアに鍵をかけて3人は階段を降りていく。

 「綾に渉君、ありがとう。おかげで早く終わったよ~」

 「いいえ~」

 「最後のほとんどは若菜さんがやっていたけど」

 「いいのよ、早く終わったから。……今、何時だろう?」

 「えーとね、4時45分だね」

 綾は自分の腕時計を見た。

 準備を始めては、4時10分。終わったのが45分で、35分かけて夜の準備が終わった事になる。

 「ヤバイ、塾に遅れる! ゴメンね、綾に渉君。これ竹村先生に返しておいてくれない?」

 「いいよ」

 綾は若菜から屋上の鍵を預かった。

 「じゃあゴメンね」

 若菜は急いで階段を下りていった。

 「じゃあ、鍵を返して家に帰ろうか、渉」

 「そうだな」

 職員室に向かって歩いていると丁度、和志と出会った。

 「おや、綾ちやんにそっちは、もしかして弟君かい?」

 「そうです」

 「どうも初めまして、弟の渉です。和志先輩」

 「俺の事、綾ちゃんに聞いたの?」

 「はい。綾から天文部の人達の事を聞いているので」

 「そうか、綾ちゃんから。じゃあ、よろしくな渉君!」

 「はい」

 「和志先輩は今から帰るのですか?」

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