第3話 これは誰ですか?

※まだ前回からの回想は続きます。






「デートっデートっお兄ちゃんとデート♪」


いつになくご機嫌な桜。

どうやら俺とのお出かけがとても楽しいらしい。


「で、桜。今日どこに行こうとしてるんだ?」


「ららぽっ!!」


即答されてしまった。まぁ妥当なところだろうな。『ららぽ』こと『らうらポイントマーケット』は近いし、結構広い。

でも、ららぽに美容院はなかったはずだが…


「そうそう、美容院も近くに新しく出来たらしいよ?だから今日のデートはそこで決まったのです!!」


「なるほどな」


なんというご都合主義………

まさか、桜が裏で手を回している……?


いや、ないな。


第一、ウチは平凡な家庭だし。

まぁでも少しは裕福な部類に入るだろう。


「今日はお兄ちゃんに私の人形さんになってもらいます!!」


「へーへー」


どうやら俺は着せ替え人形にされるらしい。

兄としては妹とデートできて嬉しいけどな。ははっ。


はぁ……正直、面倒臭い。


「そんな嫌な顔しないでよ〜

ふふふ、実はこんな事もあろかと、お父さんから5人の諭吉さんを貰ってます!!」


自信満々のドヤ顔。

そして、少し膨らみのある胸を張り、褒めて欲しそうにしてる。


おい、親父。桜が可愛いのはわかるが、5人はやりすぎだろ…………そういえば親父は親バカだったわ。


しばらくはお小遣いなしにされるな。親父が。


それに俺もバイト代持ってきたから結構遊べるな。

遊ばせてもらえないだろうけど……


「スゲーナ、サクラハヤッパリテンサイダー」


「ふふんっ!!」


棒読みだったのは気にしてないのか、こいつ。


俺がいつものように俺の神の手で頭を撫でる。

お、嬉しそう。


「では行こー」


俺たちは最初に美容院へと足を赴けた。



───────



現在、美容院なう。桜は服を見に行っている。

桜に『美容院ぐらい1人で行ってよ』と言われたのは結構来たなぁ。


にしてもここが美容院か……

やべぇめっちゃ場違い感半端ない。


「いらっしゃいませ〜

今日はどのようなどのようなご要件で?」


「え、えと、髪を切りたいのですが……」


知っているか、陽キャ共。

コミュ障って言うのはこんなものだ。

なにかを発する度に『あ』とか『えと』とかを言ってしまうのだ。


「わかりました。ではここにお名前を書いて、あちらの席でお待ち下さい。」


よかった。なんとか乗り切った……

俺はやりきったという達成感からもう帰ろうかと思った。


ダメだ。これから髪を切るんだった。



そして、数分待ったあと、美容師さんに呼ばれ、席に案内される。


「今日はどんな風にします?」


俺はさっき、何とかカットして貰えるように話は出来たが、美容院最大の難所はココだ。


『どんな風に切りますか質問』


俺はこれのせいで美容院は苦手なのだ。

しかし、この質問のベストアンサーは妹から聞いている。


「とりあえず、さっぱりさせて下さい。」


ふふ、こういえば大体は乗り越えられる。

そう、妹から伝授してもらった。

今の俺には死角はないっ!!


「わかりました。他に御要望はありますか?」


「あ、だ、大丈夫です。おまかせ、します。」


「わかりました。」


勝った……計画通り。


「じゃあ切り始めますね。」


その言葉に俺は安心感からか、つい眠くなってきてしまった。


まぁ少しぐらい寝てても許される……よな……


--------------------------------



「………くさん。お客さん。」


「はえ?」


しまった。つい寝てしまったようだった。

しかも間抜けな声を出してしまった。


「ふふ、どうですか?」


笑われた。もう、この美容院に行きずらくなった……美少年もどうやら恥ずかしそうなことがあったらしい。


…………え?目の前の美少年?

大体の、ていうか全ての美容院には席の前に鏡があるだろう。

俺も寝る前には目の前に鏡があった事は覚えている。俺が寝てる間に壁をぶち抜けたのか?

いや、それはないな。


だったら答えはひとつ。



「これ、俺ですか?」






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