第38話

いつもの朝。


でもちょっと違って。


家の庭を見ると。


孔雀の小さい版。


インコのような孔雀が止まっていた。


すみれ。

「霊鳥?」


母親。

「なにかあった?」


すみれ。

「いいえ。」

「かわいい鳥がいたもんです。」


父親。

「鳥?お父さんは謎のキジバトをよく見るぞ。」


すみれ。

「八幡神の使いでは?」

「キジバトの仕草がメッセージなんです。」


父親。

「世の中不思議な事もあるもんだな。」


母親。

「ええ。」

「でも彼らは。」

「彼らが理解できないものを非難するでしょう。」


父親。

「人間の知恵を超越したものなんて普通にあるだろう。」

「ピアノがあるからピアニストになれないように。」

「子供がいるから親になれるわけではない。」


すみれ。

「支度完了。」

「行ってきます。」


母親。

「楽しんでおいでー。」


いつものように登校しようと歩き出す。


次に巨大なカラスを目撃。


電柱に止まっていて。


付近に誰もいない。


明らかに通常の二倍ある。


しばらくお見合い。


飛び去って行った。


道の途中で。


あかねちゃんとクラスメイトと合流。


賑やかな雑談が飛び交う。


学校へは余裕を持って到着。


朝はウォーミングアップが設けられている。


余裕のある学習内容なんですよ。


あかね。

「見ることにより、行うことにより、よく相談することによって。」

「これらのものは全ての成功したものをもたらす。」


すみれ。

「あかねちゃん今日冴えてるわ。」


クラスメイト。

「おお?中々の名言が普通に出た。」


あかね。

「左は卑下。」

「右はうぬぼれ。」

「真ん中は矜持。」


クラスメイト。

「哲学は神学の女召使いってほんと?」


すみれ。

「神学者にとってはそうなんじゃない?」


あかね。

「カロリーメイト食べる?」


すみれ。

「朝ごはん軽かった。」


JK。

「わたしにもちょうだい。」


委員長。

「朝ごはん飛ばしてしまいました。」


あかね。

「予備があるから食べなよ。」


朝からあかねちゃんが目立つ。


授業が開始される。


総合学習の時間。


教師。

「人はできないと思うことをしなくてはいけない。」


JK。

「できなかったんだ!では済まされない事はけっこうあります。」


教師。

「いい突き具合ですね。」


JK。

「できないから!これは弁解になりません。」


教師。

「実質はそういうものです。」

「ですが。」

「考え方が間違っていれば、結論はさらに間違うことになる。」

「人々の様子を見てどう思いますか?」


すみれ。

「世人の半分はもう半分の人々の生活ぶりを知らない。」


教師。

「いい感じです。」

「自分の中に既に答えがあって。」

「それに従って動くようなロボットは避けるべき。」

「他人の失敗は良いデバックです。」

「今日は自由七科を重視しましょう。」


JK。

「書き物ってどうすればいいんですか?」


教師。

「良い書き物の秘訣は新しい方法で、古いことを言うか、古い方法で新しいことを言うこと。」

「文法は語り、弁証法は真なることどもを教え、修辞学は言葉を治め、音楽は歌い、算術は数え、幾何学は量り、天文学は星を見守る。」


授業は生徒中心に移行していきました。


お昼休み。


委員長。

「あなたけっこう人気なのね。」


すみれ。

「まあ火を潜ったから。」


あかね。

「いちばん前に出てたからね。」


JK。

「もっとも勇敢。」


すみれ。

「照れるわ。」


すみれちゃんの人気は水面下で拡大。


アイドルとしての好みはトップ6が独占しているものの。


もっとも戦闘力があり。


勇敢であるとされ。


定評があるみたい。


日曜日。


月に数回。


師匠に会います。


パィスベル。

「料理しよう。」

「むかしから料理は煮るか焼くか。」

「シンプルでいいでしょ?」


すみれ。

「アメリカのプレート料理にも通じているところがあります。」


今回は料理について教えられました。


パィスベル。

「日本庭園行かない?」

「ちょうどおやつを作ったし。」


すみれ。

「そうしたいです。」


近くの日本庭園。


半分公園になっている。


紗耶ちゃんと小乃実ちゃんと麗海ちゃん。


小乃実。

「風流な事で戯れますか?」


紗耶。

「池の傍で女性が座る。」

「まるで添えられるように。」


麗海。

「鯉は女性に引き寄せられ。」

「水辺に美しさが映り込む。」


小乃実。

「これは真実を見たのだと。」

「自分の美しさと同化する庭が趣味になった。」


パィスベル。

「うわー。」

「すっごい風流な言葉。」


小乃実。

「今時修辞学は必須科目ですから。」


紗耶。

「修辞学ってこんなこともできる。」


麗海。

「いくらでも出るよ。」

「主題があれば。」


パィスベル。

「教養が物をいう世界だねぇ。」


すみれ。

「女性だけの庭園になるとは。」

「誰もが庭の中の女性たちに感動するでしょう。」

「庭と同化したもんですから。」

「ここまで華やかな庭園はありません。」

「この庭も宇宙を形成したのです。」


パィスベル。

「現在の所。」

「これを見れば女の園であると。」

「誰もが贅沢な景色であると詩にする筈。」

「むしろそうしなければもったいない。」


麗海。

「日傘もあるよ。」

「ゴスロリ系だけれど。」


小乃実。

「和傘です。」


パィスベル。

「ここまで庭園にぴったりな。」

「日本庭園はこのような女性たちによって。」

「やっと完成するのだと知りました。」


紗耶。

「女性が入って極みに至る。」

「それが庭園の醍醐味。」


すみれ。

「誰かに撮影して貰いましょう。」

「現在男子禁制。」

「庭園に居る私達を見ましたら。」

「女性の世界が広がって。」

「いつまでも見惚れて。」

「言葉も出ないでしょう。」

「そこまでの光景なのです。」

「かつてあって中々なかったそれが。」


鯉が泳いでいる。


鯉に餌をあげたよ。


鯉は必死。


すみれ。

「魚は見ているとけっこう面白い。」


パィスベル。

「生き物観察っていいことだよ。」


紗耶。

「野鳥にたまにだけれど。」

「特に冬に食べ物を撒いておくと。」

「けっこう面白かったわ。」


小乃実。

「野鳥もサービスには大喜び。」


麗海。

「野生動物って食べ物の在り処は知っているけれど。」

「冬は少ないからねー。」

「夏とかはほとんど遊んで暮らしているけれど。」


パィスベル。

「猛禽類くらいしか脅威にならない。」

「猛禽類でも小回りが利くスズメはけっこう無茶。」


すみれ。

「スズメとハトとカラスが同じ電線で休んでた。」

「弱肉強食ってアフリカくらいなもんなのね。」


庭園は女の園になってしまい。


男子が入ってきたので。


退場。


パィスベル。

「またおいでよ。」


すみれ。

「またお願いします。」


解散。


変わった物事から教えてくる師匠。


教えを受けなければ人は自立できない。


みんな20を過ぎればみな大人というわけでもなく。


30でも幼稚な者は多い。


常識人だから正しいとか。


きちんとしているから立派だとか。


衆愚の言い訳だったり。


精神年齢の事ですね。


人として独立するには。


通らないといけない道。


めっきり平和になった俗世間。


原因が取り除かれたので。


急速に回復している現在です。


Disce gaudere.(楽しむことを学べ)

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