13

 

 銀時計の輪郭は、ポケットの中で何度も擦れて消えていった。盗みだした万年筆のペン先と、何ヶ月か前の空き瓶のフタが、時間のの針をごちゃごちゃとかき混ぜている。お腹の中は、かき混ぜられてできた液体を吸おうとして、小さな胃を硬直させる。

 夜に時間を計るため、空から落ちてきた時計のひとつ。暗い海へと投げ込むと、何かが割れる音がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る