9.セーリアとエーシア


「お待ちしてすみませんセーリア」

「アレス様...それとあなたはアレス様が連れてきたお方ですの?」


セーリアは私が来ると笑顔でお出迎えしてくださり、私の横で隠れながらも顔を出しているエーシアを指摘してくださった。


「えぇ。ご紹介致します。こちらはエーシアです。少し気が強くて素敵なお方です」

「アレス様がそう仰るならそうなのですね。よろしくお願いしますエーシアさん」

「よろしく...。それであんたは誰なのよ」

「あっ。私としたことがお名前を先に聞いてしまいまして自己紹介がまだでしたわね。これは失礼致しました。私はセーリア・フォール。好きなものはアレッ...いえ。りんごで趣味は読書でございます」

「フォール!?あなた貴族?」

「えぇそうですわ。男爵の身ではございますがちゃんとした貴族でございます。あなたは家名がないのでしょうか?」

「くっっ、、、アレス。私あっち行く。じゃ」

「エーシア!待ってください」

「アレス様。エーシアはどうなされたんでしょうか?」

「い、いえ。何も問題ありません。気分でも悪くなったのでしょう」


私はエーシアを甘く見ていたようです。先程の件を目の当たりにしながらこの失態は執事として失格でございます。エーシアはやはり貴族がお嫌いなのでしょう。セーリアが貴族とお分かりになられたら逃げてしまうほど弱っておられる。

私はそれを知らずに2人を会わせるなんて、酷いことをしてしまいました。

エーシアのお心がとても心配でございます。

ですが、セーリアとの約束もありながらどちらを優先して良いのか分かりません。


「だったらいけませんわ。アレス様がお行きにならなければあの方はもっと苦しくなるのではありませんか?」

「セーリア良いのですか?私と約束しておいででしたのに」

「アレス様は何を仰っているのですか?エーシアさんが苦しいのならそちらを優先するのは当然でございます」

「セーリア...。ありがとうございます」

「早くお行きになって」


セーリアは何にも他意などはなくただ貴族とは関係なくエーシアに聞いたのでしょう。

セーリアはお優しく、他の方と違ってらっしゃる。とても魅力的な人でございます。

私はその優しさに甘えてエーシアを追いかけることにしました。

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