経営者の悲劇part4

田辺は榊からの経営権を奪われる出資話を丁重に拒否した。

これにより、田辺の会社は倒産する事が確実になったため、社員を守るために競合他社に身売りをする事を検討し、数ヶ月後、吸収合併され田辺自身は経営層の椅子を辞退した。


十何年掛けて築き上げた会社を手放す事は本当に断腸の思いだったが、それ以上に悔しかったのは、少年法に守られ、社会的な制裁を受けるどころかセンセーショナルな事件を起こせば起こすほど、社会から注目を浴び、一夜にして大金持ちになれてしまうような風潮を作っていた自分自身の行動だった。



どんな理由であれ、殺人を犯した人間は年齢を問わず実名報道を行い、殺人者の思想や考えを知ることで同じような悲惨な事件を防ぐという建前で出版されるような『表現の自由』のあり方を考え直す必要があると田辺は考えるようになった。


そして、『犯罪者は更生する。犯罪者の人権を尊重すべきだ。』と言っていた主張を覆し、『殺人や強盗といった重犯罪者は更生しない可能性もある。そもそも一度、人の道を外れた行動を如何なる理由であれ取った人間は更生する可能性を期待しない方が良い。こういった人間たちは社会で真面目に頑張っている人たちの幸せを脅かす可能性が高いから即刻、死刑もしくは犯罪者だけを集めた島に閉じ込めるような終身刑にすべきだ。』と真逆の主張をする形になった。

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