経営者の悲劇part1

美人弁護士の田端と同じ人権団体の主要メンバーで経営者、田辺億都たなべおくとは、若い頃にヤンチャをしていたが、二十歳を過ぎた頃からビジネスに興味を持ち、若くして年商10億円の会社へと育て上げた若手経営者としてテレビや雑誌などで取り上げられていた有名人だった。


しかし、設立当初の勢いが失われつつあり会社経営が傾き始めていた。田辺は何とか会社を建て直そうと資金調達に奔走したが芳しい状態には程遠い状況だった。そんな時、エンジェル投資家の榊健太郎さかきけんたろうが田辺の元に出資しても良いと声を掛けてきた。


田辺は藁にもすがる思いで榊に会った。

「本日は貴重なお時間を頂戴し誠にありがとうございます。」

「堅苦しい挨拶は抜きにしましょう、田辺さん。早速、いくらほど出資して欲しいと思っているんですか?」

「10億円ほど出資頂きたいと考えています。」

「10億を出資した場合、私の株主比率はどれくらいになりますか?」

「10%程度の資本比率になりますが。榊さんは出資の条件として何をお考えですか?」

「あなたの会社の経営権を欲しいと思っています。なので、51%を占める事が出来ないのなら、この話は無かった事にしてください。」

「経営権ですか。流石にそこまでは条件としては飲めません。」

田辺は経営権を奪われる事は拒否した。


「じゃあ、この話は無かったと思って下さい。お引き取りください。」

榊は自分の条件が満たされないと分かるや否や、交渉を打ち切った。田辺は、榊との交渉が決裂すると会社が倒産する可能性が高かったため、何とか榊から出資をしてもらえるように粘り強く交渉する以外に道が無かった。


「榊さん、経営権はお渡し出来ないんですが、何とか出資してもらえる妥協点はありませんか?」

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