ストーカー犯と美人弁護士part3

翌日、事務所に出所するなり秘書を呼び、写真の男が誰なのか調べるよう指示した。

すると1時間後には、過去に3回ストーカーで捕まっている『粘りサイコ』と呼ばれている人物だということが判明した。


秘書が

「先生、この男にストーカーされているんですか?手が空いているアソシエイトに対応させましょうか?」

と心配してくれたが、田端はその提案をやんわり断った。なぜなら今の状態では、ストーカー被害で訴えることが難しいことが分かっていたため、もっと証拠を集め警察が動かざるを得ない状態に持って行く必要があると判断した。


そこからの日々は、自分が付き纏われている証拠を集めようと必死に周囲を警戒するようになった。すれ違う男性であったり、ジムで隣の機械で走っている男性、レストランでの男性など、ありとあらゆる男性を記憶の中の粘りサイコと照合し続けた。


そんな生活が一週間も続くと、田端は夢の中にも粘りサイコが出てくるようになり、睡眠不足に陥り、仕事でのミスも続くなど日常生活にも支障が出始めた。

そんな状態だった事もあり、パートナー弁護士から一週間程度の休養を取るように命じられ、入院する事になった。



病室で寝ている時、ふと横に誰かが立っている気配を感じた。恐る恐る目を開けると、枕元にうっすら見えてきた顔は、何度も何度も忘れまいと頭に刻み込んだ粘りサイコの顔だった。その男が何かを私に囁いてきた。

「入院してくれてありがとう。これで君を愛の巣に連れて行くことが楽になったよ。」


田端はその囁きに恐怖を感じると同時に気を失った。

目を覚ました時、目に飛び込んできたのは病院の天井だった。その天井を見た瞬間、田端の目から大粒の涙が溢れた。




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