10.今日の女は現役JK!

『お、ただのんよく来たな!』


 久しぶりに黒くんの配信に遊びに来た。


 あの一件があったから、自分の配信をやる気にはどうしてもなれなかったのだ。


『あれは面白かったわw 最高www』


只野人間

「笑ってないで助けろよw」


ナイト

「FORKも色々あるよな~」


時空

「通報めっちゃしてんのに運営いつになったら対応してくれんの?」


モニカ

「勘違いしてる人とかイタイよね~」


てて

「主も早く垢バンされればいい」


 前回来た時よりも落ち着いた雑談配信になっていたのに驚いた。黒くんは俺が1位を目指すきっかけになった配信者だったから、どうしてもそのイメージが強かったのだ。


 それにしても黒くんをディスるコメントが多いのが気になる。ディスコメを見ているとあの日のことがフラッシュバックする。今日ははただ何も考えず、純粋に楽しみたいだけなのに、どこか殺伐とした空気が漂っていた。


『さーて、今日はこの前遊んできた現役女子高生とのリア凸デートレポート。聞きたいか?』


 黒くんの言葉と一緒に課金アイテムが画面を埋めていく。こういうやり方にシフトしたのかと、ちょっと納得した。


 それにしても、リア凸レポートとは。俺もリア凸デートをした身として、これは、やっぱりそういう話をしようとしているのだろうか。


「いや、JKはマズいだろ……」


 思わず声が出た。


『おうおう、今日もなかなか飛ばすねw えー、今回は女子高生だったんで昼に待ち合わせて、まずカフェで飯食って、適当に会話しながらその辺適当に歩いて、カラオケ行って解散って感じっすわw』


シンジ

「またまた、それだけじゃないっしょw」


ジュリ

「通報しました」


彼方

「今回の女の顔面偏差値どのくらい?」


ブンちゃん

「黒君のことだもん、まだなんかあったでしょ~?」


『欲しがりだなぁw カラオケでちょっとねw』


 またもや課金アイテムが飛び交っていく。


 俺も少額だが黒くんに課金アイテムを投げてみた。黒くんは俺の配信で投げてくれたことはないが、郷に入っては郷に従え、だ。


『まじかよw ただのんまでくれたら、そりゃ言わないとならないなw』


 さも楽しそうにゲラゲラ笑う黒くん。人の下世話な話というのは、いつでも最高の肴だ。それを俺はこのFORKで知った。


 それにしても通報コメントが多い。こんなに通報されていたら垢バンになるのではないかとヒヤヒヤする。黒くんは怖くないのだろうか。


ぽふ

「最低」


美紅

「人として終わってるよね」


ナイト

「今日もたくさんディスコメ湧くねw」


『ま、運営なんてどーせ見てないっしょw それに今まで何人のレポートしたかなんて覚えてないけど、今日まで大丈夫だったんだし、問題ない問題ないw』


『だいたい食われるのが悪いんだってw 少し頭使えば分かるっしょw こんなつもりじゃなかったとか言っちゃって被害者面する女が一番きらーいw こうやってディスコメ言いにわざわざ戻ってくるし、お前もオイシイ思いしただろうに、何言っちゃってんの?って感じだわwww』


「やっば」


 頬が引きつったのが自分で分かった。人として大事な何かが欠けている人だなぁとは思っていたが、ここまでとは思っていなかった。


 コメント欄にはさらに過激に黒くんをディスるコメントと、それを冷やかし面白がり課金アイテムを投げる常連リスナーで埋め尽くされていた。


「同類だと思われたら嫌だなぁ」


 ため息と同時に声が漏れた。それでも眺めていると、唐突に配信が終わった。


―――利用規約に違反したためアカウントを削除しました―――


 配信終了画面にそう赤字で浮かんでいた。

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