3話 見知らぬ世界 過去の思い


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ーー##村 午後××時××分××秒ーーーーー



村が燃えている。


火の手があちこちの民家から上がり真っ暗な夜道を煌々と照らしている。


ここは何処だ?


少し歩いて見たが今一つわからない。


仕方がないので歩き続けていると、何か硬い物を踏んだ気がした。何だろうと思い目線を下へと落とすと…………。



『焼け焦げたニンゲンの死体があった』



なっ何だこれは!?

よろめき更に足元の他の何かに躓き尻餅をつく。



ふと周囲を見回せばそこに広がるのは死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体。


累々と道を埋め尽くす死体の数々。


焼け焦げた死体。

刺し殺された死体。

切り捨てられた死体。

衣類を引きちぎられ侵された女性の死体。

五体不満足の死体。

顎から上を喪失した死体。

壁に磔にされ遊ばれた死体。



数え挙げればキリがない死体の数々を、俺はそれ以上直視出来なかった。


逃げ場を求め死体を踏みつけながら走った先にあったのは石造りの、炎が燃え上がる教会。


そしてそこの天辺に打ち立てられた物を見て遅まきに全てを理解する。


金色の闘牛が刺繍された赤い旗。見覚えはないが明らかにあれは国家の旗だ。

略奪と暴虐…襲撃の痕跡。


そうか、この異世界とやらでも戦争が起こっているのか。何と凄惨な光景だろう。


俺も昔はこんな状態の祖国の街並みに絶望したのだ。


それと同時に心の内から沸き上がる激情を思い出す。


今では冷めきってしまい何処を探しても見つからない物。


それは怒りだ。


過去、己をどんな逆境で有ろうと突き動かし続けた心の蔵から沸き上がる圧倒的な熱量。


赦せない。


これを引き起こした元凶も、それを許した国の無能も。

そして又こうも思う。



己なら助けられたのではないかと。



何とも自己中心的かつナルシストな考え方だろう。


だがこの男、九条好古は本気でそう考えているし、幸か不幸かそれをやってのけてしまう程の才能を持ち合わせてもいる。

そして好古は本当に頑固だ。


そうと決めてしまえばどんな苦境にもめげない上に自分と祖国を信じて諦めない。


それこそ好古の生きる原動力だったのだ。

人はそれをナショナリズムと呼ぶ。


この名前も知らぬ地と人々を助けよ好古の魂が叫んでいる。


彼は久方ぶりにエンジンに炎が灯った事を感じる。ならば自殺などやめだ。


好古は衝動に突き動かされる様に気がつけば夢から覚めていた。



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