戦場のヤハウェイ~底辺冒険職からの下剋上ファンタジーライフ

三ノ宮 くろすけ

序 第0章

零話 プロローグ

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人の歴史とは実に憎しみの争いであると、先人は言った。






肉体を切り裂き、魂を穿つ。

そんな痛みと哀しみこそ人を容易く操る。

力強き者は弱者を虐ぎ、また弱者によって力強き者は滅ぼされるる。



それでこそ。



たれもが憎しみの渦に囚われ呑まれ、"カオス"に至る、と、男は謂った。

不毛こそ人類史、憎悪こそ望むべくして得る最良の結果。



しからば。



国家とてそうであるのか。

否、問い方を正そう。

国家であってもそう有るべきなのか、と、男は問うた。



なればそこ。



歴史は応える。

「そうであって然るべきなのである。違うかね?国は利潤を求め突き動き、よって、他方は萎れ、憎しむ者も生まれるのだ。」

正しく正しい、然るべき必然、と、男は嗤った。



しかし。



男は言った。

「俺は認めぬ。人の歴史が哀しみに溢れているのなら、俺が変えて見せる。一時の平和であっても良い。人民の、権力と自由と平和を勝ち取る為の近代国家をこの地に築いて見せよう。」



ある本の序章に以下の言葉がある。


まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている。


この男の。

騎馬に乗り戦場を駆けるその姿は実に美しく、英雄として誰もの目に写った。

又、中世以前の時代で、政治においても資本主義と民主主義を確立し、歴史にその名を残した。


なればこそ、開化期を迎えるのはこの国でありこの男がそれを成す主人公なのである。

男の名をクジョウ・ヨシフルと言う。又の名をヨシフ=フォン=ロンドベルとも言った。


そして人は男をこう呼んだ。







ヤハウェイ、と





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フランゼ王国 マールフェイユ地方

午後5時 19分 32秒

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火炎魔法が飛び交う戦場はいつだって地獄絵図だ。

灰色の空に翼を広げたドラゴンの軍が一方的に残党軍を焼き払っているのだから。


「敵、オークの主力隊が瓦解しています!」


好機…か。


統率は揺らぎ、オークの軍団に保護される形で囲まれていた敵の10万の歩兵隊が露になる。



今こそ、最強の剣を刺し貫く時。



俺は騎馬隊全員にパーソナルスキル"死神の加護"と"疾風の加護"を付与し準備を整える。



これで一時的な超再生能力と移動速度上昇が入ったはずだ。


「すぅ………はあ…。」


覚悟を決めろ、クジョウ・ヨシフル。


今こそ、この不毛な戦いを終わらせる最後の総仕上げだ。



深呼吸をして自分の覚悟が定まった事を確かめる。


そして、俺は叫んだ。



「総員!武器を構え!」



凡そ1000人以上の兵士達が手に手に武器を構える音が聞こえる。



後ろを振り向くと皆、今か今かと俺の指示をじっと待ち構えている。



中にはニヤリと笑みすら浮かべている物も居るほど。これから崖を馬で下ると言うのに良い度胸だ。


よろしい。


眼下の敵の軍団を見下ろせば防護フィールドを展開しているじゃないか。あんな物ではドラゴンの火炎魔法は防げても俺達の一撃は防げない。全て作戦通り。



「縦陣形成!突撃する!俺に続けぇっ!」


[うぉおおおおおおおおおおお!!]



風になったと錯覚する程の勢いで一斉に崖を下り降りる勇姿は一種伝説的にすら写るだろう。



狙うは一点、敵の総大将首それのみ。


駆ける、駆ける、駆ける!


予想外の方向からの俺達の出現に敵は全く以て対応出来ていない。


ただ突破のみを目的とした1000の騎士団による必殺の一撃が敵に致命的な突破を以て突き刺さった。


4メートルもの巨大なオークの隙間をすり抜けそのままの勢いで立ち塞がる歩兵を引き殺す。


ほとんどの者は俺に続くが、ある者は運悪く生き残りのオークの棍棒よって粉砕され、またある者は突撃の勢いで敵の槍に突き刺さり目的半ばでその一生を絶たれる。



だが目的は果たされつつある。



短槍を振り回し勢いのままに斬り臥せ、まだ突撃する。



この先、ただこの先にある敵の総大将たる召喚者"アドルフ=ヒトラー"目掛けて。



今、この一撃を以てこの国、フランゼ王国は再統一される。





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