反攻のレジェンドキラー

友理 潤

プロローグ

第1話 伝説のはじまり


『世界を我がものにせんとした強欲の者が、召喚の儀によって、魔王の力を得た。


天より授かりし秘めたる力を、水の国より出づる聖女によって解き放たれし者を勇者と言う。


解き放たれし者と解き放つ者、二つの命を天に捧ぐことで、この世に勇者はあらわれる。


天より力を授かりし勇者は、聖なる剣で魔王を討ち果たし、


賢者の魔法をもってこれを封ず』



 この世界ではかつて勇者と魔王が激しく戦っていた。

 その様子をあらわした童話の一節だ。


 

◇◇


 ――人生とは魂の自由を勝ち取るための戦いである。


  

 とある英雄は、戦場を後にする間際にそうつぶやいたという。


 人の歴史もまた同じだった。

 すなわち魔王から自由を獲得するために、彼らは勇者を立てて、激しく戦った。

 何度倒されても別の魔王が現れ、その都度新たな勇者も生まれる――。そんなことを何千回と繰り返してきた。


 数千年の時をへて、ついに人類は魔王の支配に打ち勝った。

 そして歴史とは勝者の都合のいいように書き換わる。

 それを証明するように、最後の魔王が倒されてから残っているのは勇者たちの輝かしい功績だけだった。


 だが歴史に残らずとも、人々の記憶に深く刻み込まれた魔王がいた。


 彼は勇者の襲撃をことごとく返り討ちにし、1000年もの間、栄華を極めた。

 当代無双のその強さに、当時の人々は恐怖よりも畏敬の念を抱き、彼をこう称した。



 『伝説を殺す者レジェンド・キラー』と。


 

 それからおよそ1300年の時を経た今。



 ――レナード・フットに眠りし伝説を殺す者レジェンド・キラーの力を解き放て。さすればお主は世界の王となるであろう。



 そう書かれた紙きれが、とある人物たちの手に渡ったところから、新たな伝説は幕を開ける。



 果たしてその先に待ち受けるのは、希望か、はたまた絶望か――。


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