第10話【悲しみの意味を教えてくれないか?】

朝方、ヨルナミは奇妙な夢をみた

とても不思議な空気で、空は少し透き通ってが、その分どんよりとくらい空間が広がっている

そこには鳥も飛んでいて、綺麗な花が大量に咲いている

そして、花びらが空に沢山舞っていた

周りを見ていると一人の女性が自分の事を見つめていた

自分によく似ていて昔、どこかで見たような優しい表情をしている

「ヨルナミ……あなたはこれから大変な事に巻き込まれる……逃げるなら今よ……」

逃げる?しかし、安心感のある声にヨルナミは頷き、心が動きそうになる。でもどこかに邪悪な何かを感じた

「君は……誰なの?」とヨルナミは質問をする

女性は少し微笑み、「あなたの母親よ」と答える

孤児院のことがとにかく気になるから取り敢えず、聞いてみよう

「僕のお母さん……なら、なんで僕を孤児院に入れたの?」とヨルナミが聞くとヨルナミの母は何故か大笑いをしながら「あなたが要らなかったの。だから棄てたのよ」

ヨルナミは悲しみを突きつけられ、悔しさの余り膝を地面につける

「なら……なんで僕を逃がそうとしたの?」

「それは……」

ヨルナミの母が言いかけようとすることにヨルナミの言った言葉が少し噛み合わないような変な感じが気がした

そして母は何かを思い出したかのように「そうよ、私はあなたのお母さん。あなたの人生には必要ない者を排除するの。」

と言う。確かに喧嘩をしたが排除するのは違うと思ってしまう

「なんで……排除するの? 」

「貴方の教育に悪いから。子供の教育に悪い奴を排除するのは親としての当たり前の行動よね? 」

なら、どうして棄てたんだろう。それだけがとても不思議に思う

矛盾点が沢山ある

「どうして……なら棄てたの? 」

「それも貴方の為よ」

「貴方の為ってなんなの?僕はお母さんに棄てられたから凄く苦労をしたんだよ? それも分からないの? 」

「そんな事はどうでもいいから。さ、一緒に行きましょう」といい、ヨルナミの手を握る

ヨルナミは危険を察知したのか手をはじく

そして母を殴る

「嫌だ。僕を棄てた人間なんかにはついて行かない。人との関わりは……大切だから……それが今の僕を作ってる。絆が出来ているから!」

「絆なんて無駄よ! そんなのを作るだけなんてただの時間の無駄よ! そんなの要らない! 築いた所でどうせ砕かれるのだから! 」

母はヨルナミのまた、手を強く握り自分が出した暗闇に連れていこうとくる

母の話に対し、遂には違和感を持ち始める

「離せ!僕はお前の言いなりになんかにならない!」

「はははっ! バカに流されているのか! 無駄な事を」

その言葉に対しヨルナミは少しの苛立ちを覚える

「絆は無駄じゃない。僕はそう思う。それがあったから僕は成長出来た! それを引き裂こうとするなんて! お前は親じゃない! 」

すると母はまたいきなり笑い始め、更には凄くニヤつき始めた

「ふふっふははは! !そうだよ! 私はお前の母じゃない! 」

そう知るとヨルナミは怒りが込み上げてくる

「なら、なんでこんな事をしたの?」

すると母はこう言った

「貴方を廃人にしようと思ってな! はっはっは!!」

なんてゲス野郎なんだ……

そう思うと光が現れ、包み込まれる

気が付くと何故か自分がいつも持っているギターと剣を持っていた

そうか、これであいつを倒せばいいんだな

そう思いギターを取り出した


お前は俺の親じゃない

何が母だクソッタレ

僕らの絆を棄てろだと?

そんないいつけ誰守る?

貴様は俺を棄てたから

もう親なんかなのるんじゃねぇ

お前なんかここで死ね


ヨルナミは怒り、思いっきり言葉にして飛ばした

母の頭はクラっとし始め、少し苦しんでいる様子であった

空を見てみると今までは静かだった空間は一変し、嵐が強く吹く暗い空間に変わっていた

そして、母は膝を着いていた

「ぐっ……てめぇ……我に抗う気か」

そういうと母だった者は姿を変えはじめた。姿は闇に包まれ出てきかと思えば、漆黒に近いような翼が生え、羊よりも尖ったおぞましい角が頭には生える

口はとても尖った歯並びの悪が悪く体にはとても邪悪な鱗のような模様があり、何より恐ろしいと思った目は血が走っておりとても見えるものではなかった

そしてこう言った

「我は……あの方の使者なり……貴様を殺す」

ものすごい速さで向かって来るように見えた

けど、気が付けばこの世界はヨルナミが中心となってとり、ヨルナミにはもの凄くゆっくりに見えた


見える……凄くゆっくりだ……そうか、ここは僕の世界なんだ

なら……


ヨルナミは今、自分が居る世界の事を確信した

ここは自分自身が創り出した世界

そこに何故か何かの使者が現れたんだ

僕の関係を裂くために……

許せない……僕を馬鹿にするのはいいけど、ワタやキロル、母さんをバカにした! 絶対に許せない!

ヨルナミは追求よりも怒りが走り、腸が煮えくり返るようなことに覚える

「どこの誰だか知らないけど、僕は貴様をぶっ殺す!相棒や僕の母を侮辱した!僕は決して許さない!」

ヨルナミの体にとても不思議な力が入る

体がとても紅色に染まっていく

凄い光が現れ、とても輝いている

そして限りなくでかい情報爆発が引き起こり、辺りを焼き尽くす

「これは……やばい……」

使者は自分が死ぬと確信したのか、逃げようとする


なんだろう……とても体が燃える感じがする。今の僕はあいつを倒せる気がする

よく見ると……あいつ……逃げようとしてる……逃がさない!


ヨルナミは自分の持っている剣を引き抜く

その剣はヨルナミの怒りの力と仲間たちと過ごした日々が力となり、紅焔に染まっている。ヨルナミが力を入れる度、紅焔は激しく紅蓮の炎のように燃え上がっていった

ヨルナミは使者に向かって刃を向け斬りにかかる

斬り掛かってみたが、鋼のように堅い鱗が斬撃を防ぎ、全く刃が通る気配もなかった

「お前……殺る気か」使者は自分の鋭く長い爪を立て、ヨルナミに斬り掛かる

しかし、それはヨルナミからしたら動きがゆっくり動いているように見える


遅い……攻撃が全て見える……なら……相手の武器を切り落とせばいい……


襲いかかってくる使者の攻撃をを予測していたかのように跳ね返す

爪を斬り落とし、攻撃を出来ないようにする

使者はこのまま行くのは無駄だと思ったのか自分の髪の毛を糸にし伸ばし、張り巡らせ始めた

糸はとても細く鋭い

その細さから体の各所を傷付け、腕や顔、足も、とても耐え切れないほどの痛さが走る

血も少しばかりだがではじめた

剣を持つ力が抜けてきた感覚がしてきた

けど、あの1年と半年が無かったら……きっと耐え切れなかった。でもあの伊吹さんの扱きやワタとキロルと創った絆が僕の背中を押した

ヨルナミの速度はどんどん速くなっていく

それは光速をも凌駕する

とても速くなるヨルナミに対し、使者は身の危険を感じたのか

「くっそ! こうなったら」と使者がにげようとする。一瞬の油断が命取りになった

ヨルナミに背中を見せた瞬間、ヨルナミが紅焔に染まった剣を構え、突き刺してきた

「僕らの絆は絶対に引き下げない!お前は絶対に逃がさない! 」

「うおおおおおおおおおおおおっっ!!」

使者の胸を思いっ切り突き刺す

刃は心臓を貫き、胸には大きな穴が空いた

心臓を貫き、もう長くはない。

剣を引き抜くと使者の体は燃え上がり、もがき苦しみだす

「ぐっ……」と使者は血を吐き出す

「教えろ。何故、僕の母さんを名乗った」

使者は奇妙に笑う

「ふはっははは」

「何がおかしい! 」

「あの方の命令なのさ」

「あの方って誰だ! 」

「そのうち分かる」

「教えろ」

「さらばだ」使者は灰となり暗闇の空の中へ消えていった

すると、空はかつて無かったほどにように蒼く、輝かしく、美しい空になって行った

綺麗だ……この世界は……こんなに綺麗だったんだ……

そして、光がヨルナミを包む

「ヨルナミ……よくやりましたね……」

どこかで昔聞いた事のあるようなとても、綺麗な声だった

「君は誰?」

「かつて、夢の中で話した者です」

そういや、昔話をしたような気がする

あの時から人生は動き出していたのかな

「そうか、どうしたんですか?」

「あなたは成長しました。これなら、あの人にも……」

「あの人って誰……?」

ヨルナミが聞こうとすると光は止み始めた

「あなたは強い子……夜の波みたいに誰にも気付かれないけど、一緒にいる仲間が居ますように……そう名付けた……」

「母さん……?」

「それじゃあまた会おう……ヨルナミ」

「待って!」

ヨルナミは気を失い、気付いたら深い眠りに着いていたのだった


起きると昨日寝ていただろう場所にいた

なんだったんだろう……

ワタの所に……謝りに行かないと……

そう思いながら立ち上がろうとすると少しふらっとした

立てなくてボーッとしていると

「ヨルナミー! 」と誰かの呼ぶ声が聞こえてきた

「ここに居たか! ヨルナミー! 」

顔を上げるとワタが居た

「1週間もどこに居たんだ? 俺……とても心配したんだからな……」

少し怒り気味だったが、安心したのか少し微笑んでいた

「えーと……」とヨルナミが言おうとしたらワタが「ごめん、1週間前は言い過ぎた。」

「僕も……ごめん」

2人は手を取り合う

「ヨルナミ、ボロボロじゃないか……」

ヨルナミは気づいていなかったが、とても体に傷が付いていた

ワタはヨルナミの目元を見ると涙を流していることに気づく

「ヨルナミ、なんで泣いてるんだ? 悲しみの意味を教えてくれないか? 」

「それは……」と夢で見た事を話す

「そうか、まだ分からないがそのうち分かるかもな」

ワタは手を差し出しヨルナミはそれを握る

「帰ろう。」とヨルナミはいい、2人は帰っていったのだった


教会に着くとキロルがご飯の準備をしていた

「キロル……こんなに沢山1人で作ったのか?」とワタは聞く

「ああ、昨日考えたんだよ。やっぱりわいらは切っても切れない関係なんだなって。その仲直りとして、いつも大切にしていた食事をしようって思ってな。」

「美味しそう……」

3人は食事をした。あの時の続きを楽しむように

「ワタはヨルナミが出ていってから3日ぐらい経った日にいきなり朝から教会を飛び出して探しに行ってたんだぞ」と笑いながらキロルはいう

ワタは少し照れて「うるさい」と流す

この日々がずっと続いたらいいな。世界を平和にしようと更に思う。みんなが笑っていられる世界になったらいいな

「頑張ろう! 僕らが世界を変えよう! 」

ヨルナミが手を出すとワタが手を置く

「元々、俺の目的なのに乗せられちゃったな」ワタが言うとキロルも手を乗せる

「わいも、お前らに行くことにするわ。よろしくな」

3人は顔を合わせて微笑む

新しい<チーム>として第一歩を踏み出したのだった

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