第8話【回想〜親父とクソ親父〜】

あれは今から17年前

キロルか12歳の時の話だ


チロル・ノルト

髭が生えているが茶髪がキロルよりも綺麗で、とても雰囲気が良く人を引き寄せる何かを持っていた。目はキロル以上に輝いているいい男だった

ノルト教の26代目教祖、そしてキロルの実の親父だ

タトイヒ国でも有名な予言者で、国王とも仲が良かったそうだ

ある日の事、いきなりチロルは自分の教会を後に来て城に向かった


ここはお城の一室には国王と兵士が3人、ひとつの小さいベットを囲んでいた

「よぉ、さぐ。久々に来てみたぞ」

何も言わずに入ってきたチロルに対し、周りは驚愕をするが国王は何故か肝が座っていた

「貴様! 国王陛下に対して呼び捨てとは何事だ!

兵士たちは槍を向ける

国王は兵士に向かって「よいよい、そやつはわしの友人じゃからな。お前らは出ていって良い」

そしたら兵士たちは1人を残し、「失礼しました」といい兵士たちは去っていった

「これでいつもの3人になれるの。久々だな。チロル、伊吹」

「ああ、そうだな。」

3人は顔を合わせた

「そういや、さぐ。お前男の子が生まれたって本当か?」

チロルはさりげなく言うと国王は驚きながらもニコニコとしながら「流石予言者」と国王は言ったがチロルは「いや、たまたまお前の顔が見たくなってきただけだ」

「そうか、ならいいんだか」

そう言うと国王は男の子を小さいベットからこっそり持ち上げ、チロルに顔を見せた

「目はさぐに似てるの、髪はふわふわだ。王妃様にそっくりだ」

チロルが言うと伊吹も頷き、国王は顔を赤らめている

「で、名はなんて言うんだ?」

チロルが聞くと「まだ決まってない」と国王は答える

国王は少し名前を悩んでいたが、少し思いついたのかチロルに向かってこう言った

「なら、チロルが名前を決めてよ」

そう言うとチロルは少し戸惑ったが少し考える

チロルは悩んだ末、ひとつ思いついた

「ワタワタ。こいつはワタワタでどうだ?髪の毛がふわふわだからな。ふわふわだと変だからワタワタにしよう」

「変な感じというか、ピッとしないがチロルに頼んだんだ。お前の名前は今日からワタワタだ。よろしくな」

伊吹さんは名前を呼びにくいと思ったのか、ひとつ提案をした

「ワタって呼べばどうだ?名前はワタワタで決まってるからな。愛称みたいな感じで」

「それいいな」

国王とチロルは声を合わせて言う

3人は顔を合わせて、ワタの手を握ったのだった

その後ワタを寝かした3人はお酒を飲み合った


それから3年が過ぎ去った頃、チロルと国王と伊吹の関わりが無くなっていき、3人とも別々の道を歩み始めた時期だった

ある日、まるで獣の暴れ狂い、天変地異が起こるのではないかと言わんばかりの雨が降った夜中の事だった

ドアを叩く音が教会の中に鳴り響いている

キロルはなんだろうと思い、ドアを開けるとボロボロの女性が生後まもない赤子を抱えて教会の中に飛び込んできたではありませんか

キロルは何事かと思い、医療具を取りに行こうと医務室に行きそのすれ違いにチロルが出てきた

この事を予言していたらしく、医療具を取り出し、手当を始めた

「はぁ……はぁ……何故……この事を……まさかあなたは……」

この女性はチロルの噂を聞いて隣の国から命さながらで逃げてきたそうだ

「わ…私は……ユナミ……ユナミ・アクア・リーフ…はぁ……はぁ……」

とりあえず落ち着きがなくどこか慌てている様子だった

チロルもここまでとは想定して居らず、戸惑ったがとりあえず落ち着かせようとした

「とりあえず、水を飲んで」とチロルが水を出すと「私はいい……か……ら……この子を……」

自分の命はいいからとりあえず子供の命を助けたいという気持ちがチロルに伝わったのか

「とりあえず、あなたも助からないと意味が無いです。とりあえず今夜はここで休みましょう。ここは安全ですので」

そういい、チロルはユナミを家に泊めた

次の日の朝

「落ち着きましたか?」

チロルはユナミの部屋に入る

「とりあえずは……」

何とか肝が座った様子だったので話を聞く事にしよう

「この子は……アクアヒルズ国の国王の……ゲホッゲホッ……グホォ……」

ユナミはいきなり吐血をし始めた

そして、掠れた声で

「私には……時間が無いの……あの人の呪いで……」と訴える

「なら、ヨルナミは孤児院に預けましょう。それでいいですか?」

とりあえず近くに孤児院があるを思い出したチロルは提案をした

「はい……そうします」

何も考えずにその選択を取った。ユナミには考える時間がなかったからだ

もうすぐしたら自分は呪いで死ぬからだ

「なら……キロル!」とキロルを呼び出し、ヨルナミを預ける事を頼む事にした

「なんだ?親父」

「こいつは俺の息子だから大丈夫だ」

少しほっとしたのか、キロルに幼いヨルナミを渡す

「あとは名前だな、ヨルナミは変わらないとして、ユナミを、あなたの名前を姓にしてみませんか?」

ユナミは納得し、頷く

「あとは……これは私のネックレス……これは形見に……力になりますから…首に掛けさせてください……」

そういうとユナミはネックレスをヨルナミに託す

そして、ヨルナミは孤児院に預けられた

キロルが孤児院に行っている間にチロルとユナミが姿を消していた

何も言わず、何もしないで消えているのだ

最初は分からず、戸惑ったがすぐ帰ってくると思っていた。しかし1年……2年……3年……と帰ることはなかった


「教祖様……本日はどうされますか?」

と信者が来るが「俺はまだ、教祖じゃない。あのクソ親父が女連れて出ていったからな。まだ死んだか生きてるか分からないし……もうノルト教は終わりだ」

何もないことに対しキロルは怒っていた

信者との関わりも断ち、引きこもる日々だった

それでも信者は毎日通っていた

そして声を掛け続ける

キロルはそれが宗教の教えだからなのか、キロルを慰めようとしているのかは分からなかった

そんなある日父を名乗る男性が教会に現れてキロルを呼び止めた

その時キロルの記憶は曖昧で何を言っているかは分からなかったが何故か納得出来た

その出来事の後から何故かは分からないが父を許すことができるようになった

その次の日

父の文字で遺書が届いたのだった

そして、自分が新教祖という事を認め信者達に謝り、今に至るという


「つまり……あのクソ親父は乗っ取られている……?」

ワタはひとつの疑問が頭に浮かんだ

「ああ、そうなる可能性が高い。でも、わいらには知らない謎が多い」

「ヨルナミの親やお前の親父の行先だな」

最初は2人は悩んだが悩んでいても意味が無いと思ったのか、2人はある決断をした

例えどんな真実だろうが国を乗っ取って政治状況を変えようと

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