第4話(2/3)

 耳を凝らすと、『いいんですか藤和さん。センパイはもっと刺激的なものを望んでいるはずです!』とか『え、ちょ、姫宮さん……どうやったらその色になるんですか……』とか不穏なことばかりが聴こえて来た。


「はいセンパイ! お待ちどおさまです♪」

 そうして姫宮が差し出したのは、予想通りなんとも禍々しい色をした液体だった。


「ヒナ特製ミックスサイダーです!」

「……俺ふざけるなって言ったよな?」

「分かってますってー。そういうフリだったんですよね?」

「ちげーよ!!」


 中身を知るのは恐ろしいので後回しにして、先に藤和が用意したのを見る。


「水……?」

 どう見ても無色透明、泡も立っていない水のようだった。


「あ、はい……。姫宮さんの飲んだら絶対にいると思ったので……」

「藤和の圧勝」

「なんでぇ!?」


 冗談でなく本気で疑問に思っている姫宮に特製ミックスサイダーは押し付ける。


「むぅ……」

「ちゃんと責任持って飲みなさい」

「……はーい」


 しぶしぶながらも、姫宮は捨てようとはせずちゃんと手元に寄せると、恐る恐るストローに口を付けた。


「……あれ? これ意外とイケますよ。え、奇跡……」

「マジ?」

「はい……。自分でもビックリなんですけど……」

「いやいや、あの材料からどうやって」

 藤和は製造工程を知るから俺以上に驚いているようだ。


「センパイも飲んでみてくださいよ」

 姫宮はゲテモノジュースを差し出してくる。


 近くで見るとより一層混沌とした水面が覗き、異臭が鼻腔を刺激した。本当にこれが美味しいのか、一抹どころか五、六抹の不安は残るが、それ以上に好奇心も沸いてくるので、俺はまだ袋から出してなかったストローを差した。


「ほら、一気にずずっと」

 そう促されるがまま、俺は勢いよくジュースを啜った。




「おぇぇぇぇぇぇっぇえええ!!!!」




「いやっっふぅぅぅぅ!! 引っ掛かった引っ掛かったー!」


 何これ!? 辛い!? 苦い!? 甘い!? え、もう分かんない!! とにかく口の中が得も言われぬ気持ち悪さに包まれる。

 吐き出すわけにもいかず気合で飲み込み、口内を洗浄すべく藤和から貰った水を飲…………めなかった。


「ぷはぁぁぁ。……あー、まだ気持ち悪いですね」


「俺の水ぅぅぅ!!」

 コップはいつの間にか姫宮の手にあり、既に飲み干されてしまっていた。


 俺は慌ててドリンクサーバーに走り、どうにかこうにか平静を取り戻す。

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