世界征服


『世界征服 方法』

 そんな馬鹿げた検索ワードを検索エンジンに打ち込む。

 別に期待していたわけじゃないけど、ジョークサイトばかりがヒットして小さくため息をつく。


 世界征服、世界征服。


 頭の中でいくら反芻しようと世界は私のものになる気配もない。

 どうすれば学校で私をいじめるあいつらの寝首をかいてやれるんだろう。

 どうすれば、私は強くなれるんだろう。

 ああ、憂鬱。

 毎日が憂鬱よ。

 きっと私は無力で、今の私は憂鬱を嘆くだけで何も成すことのできない臆病者だ。


 畳に転がって、今度は大きなため息。


 でも、今私にできることをやらなきゃな。

 将来すごい人になって、あいつらを見返してやるんだ。

 そう思うと不思議とむくむく力が湧いてくるような気がした。


 なんだっけ、テレビですごい芸能人が言ってたこと。

 とにかく悩むより、手を動かすんだ。

 よし、やってやろう。私にはできるんだ。

 私はあいつらが遊んでいる間に黙々と手を動かして、すごいことを成して見せるんだ。


 ところで。


 すごいことって、何すればいいんだろう……。

 結局、悩むばかりで日が暮れる。

 これじゃ世界征服を目標にした方がマシなくらいだ。


 世界征服。

 本当にしちゃおうかな……。


『世界征服 方法』

 改めて打ち込む。


 以下、無限ループ……。


(2020年5月21日 超短編小説会投稿 再録)


―――――

登場人物紹介

 私(13歳)

  中学校でいじられキャラなのに耐えられない。

  実は結構かわいいから嫉妬されていることに本人が気付いていない。

  この後普通に学校に行くことができる強い子。

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