第20話 ■面接練習2 西村あさみ

■面接練習2 西村あさみ


壇上に呼ばれた三年生の「西村あさみ」といえば男尊女卑法が施行されてからも、男に対して強気な姿勢が目立ち、素行も態度も悪く、全校集会では唯一先生たちの指示に従わず強制的に退場させられていた。

そんな彼女の名前が呼ばれたことに誰もが驚きを隠せずにいたし、西村自身がどんな反応を示すのか皆が気になったはずだろう。これまで通り強気な態度をとり、また体育館を出されるかとも思ったが、以外にも名前を呼ばれると、大きな声で返事をした。

以前では考えられないような彼女の行動を見る限り、彼女が前回の全校集会後に何らかの教育をうけたことは容易に察することができた。

髪の毛の色は派手な金髪から落ちついた茶髪へと変えられてたが、スカートの短さは変わっておらず、むしろ短くなったかのようにも思えたが、以前よりもむしろ大人らしくなった印象が特徴的だった。

彼女はゆっくりと壇上に上がった。それは余裕を演出するためか、緊張感を演出するためかは定かでは無かった。


「コンコン、失礼します」

先ほど黒崎先生が行ったように面接の模範演技を始めた。自らの口から効果音を発せれるようになっていたことも驚きだった。

「どうぞお座りください」面接官役の藤木が淡白に答える。

「はい、失礼します。」

静寂の中、微かに震わせた西村の声が体育館中に伝わり。

西村は膝を曲げて腰を卸し便器にまたがるような体制で座った。

既に短いスカートからは下着の色が遠めからでもはっきりと確認できるほどには露出していたが、面接官役はそれすらも許さなかった。

「ははは、椅子よりも床のほうを好まれる女性は我が社の社風に合います。どうぞ、足を崩してください。…と言われたら更に足を開き感謝の心をお伝えしましょう。」

「ありがとうございますっ」そういって西村は足を広げ、黒の生地にゴールドの刺繍の入った下着の股間部を思い切り晒した。

僕はこれまで西村には何度も授業で腹を立ててきた。

頭は悪いが素行は偉そうで、何か気に食わないことがあると一人前に文句を言い。我々教員の粗を探しては脅しの材料にするか謝罪させる材料にされる。

しかもそれは必ず他の生徒らが大勢いる前でやるものだから僕のメンツは丸つぶれとなるし、彼女は他の生徒の尊敬の的になる。

優越感を出すために行われる威勢だけの行動に付き合わされるのは飽き飽きしていたところだ。

それが今では男尊女卑法という法律のおかげで、教育の仕方が大きく変わった。

「では、自己アピールのほうをですね。まぁ練習ですので簡潔にしていただけますか?」

「はっ、、はいっ。」彼女は何かを覚悟したように唾を飲み小さくうなずいて続けた。「西村あさみです…。趣味は音楽鑑賞です。学生時代は生意気な性格でしたが、私の特技は男性様へのご奉仕しか出来ないことに気づきました。貴社に入社出来た際には、お茶くみやマッサージやトイレ掃除でも何でも致します。胸はこう見えてDカップあります。。よろしくお願いいたします。」

体育館に小さなざわめきが起った。

僕は今更驚かなかったが、西村のセリフは確実に誰かに教え込まれたものだった。

学園の僕以外の者が彼女をここまで躾けれたことだけが恐ろしかった。

「はぁ、少し長い気もしますが、まぁ練習なので、こんなものでいいでしょう。」面接官役の藤木は、どこか優越感に満ちた表情をしていた。

この様子を見ている女子生徒の中には、涙を浮かべ小刻みに震える者も数名いるようだった。その一方で覚悟を決めた生徒の中には獣をにらみつけるような目つきでステージを見るものも僅かではあったが確認できた。

「では、西村もどっていいぞ」

「はい、ありがとうございました。」

彼女は先生へと全校生徒へと二回お辞儀をして壇上をあとにした。

「はーい、藤木先生、西村さん、ありがとうございました。皆さんも二人に大きな拍手を~」明るく黒崎先生が促すとようやく拍手が体育館中に鳴り響いた。

「今見てもらったように、皆にも面接練習をこれからしてもらおうと思うんだけど、実際一人一人やってもらうと時間がかかるので、今日は皆さんにこれをプレゼントしまーす」遠藤先生が手に持っていたのはノートパソコンだった。

「ICT教育化にも伴って、今はオンラインでの面接なども増えています。そしてこのパソコンにはAIの面接官との面接練習できる機能などがあります。練習の様子などは勿論画面で録画しています。あ、それと、このパソコンは常時カメラが起動していますが、カメラを何かで隠したりすると起動できない仕組みとなっていますので、くれぐれも気を付けてくださいね。詳しい説明は担任の先生からもあると思いますが、これからはこのパソコンを使った授業なども取り入れていくつもりですので、どうぞよろしくお願いします。」黒崎先生の説明が終わると体育館は一瞬ざわついたが、男性教員の一人の咳払い一つで皆が静まり返った。


これからの教育改革には期待していこうと思った。

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