新たな問題(2)

 翌日、予定通りに信也は警察に行き、特別な計らいで宗方教授に会うことができた。取調室では宗方教授は無表情で椅子に座っている。

「何しに来た!?」

「あと4日ですよね!?」

「それがどうした!?」

「Iって、凄いでしょう!? ああ言うのを人工知能って言うんですよ、違いますか!?」

「自慢しに来たのか!?」

「そうですよ、自慢しに来ました」

「勝手にほざいてろ」

「あなたの作った人工知能には、Iは負けませんよ」

「くだらないことを言いに来たのか!? 帰れ!」

「くだらない!? くだらないと言いましたよね!? 私利私欲の為に作った人工知能にIは絶対に負けませんから」

「そこまで言うなら、いいだろう、ヒントをやろう。お前が作った人工知能がどれほど物か試してやる。私の家から半径10キロ圏内に私の作った人工知能を隠してある。そこら、海外のある銀行にアクセスするようになっている。お手並み拝見と行きましょうか……」

 宗方教授は不敵に笑い、海外の銀行をねらっている。


 村岡刑事は、スマホを見て、取り調べの時間が終わり。信也は取調べ室を出ると、村岡刑事が信也に見せたいものがあると言う。

 2人は保管庫に行き、そこには押収してきた戦闘用の人工知能2号機とノートパソコン3台、デスクトップ2台、USBメモリが5個あり。ここにある物の全ては、データ消去され、復旧を試みたがダメだった。そこで、信也になんとか復旧できないか頼んだ。


 宗方教授が捕まる前、あの時、スマホで指示を出し、データ消去を。信也は工藤に、自分のノートパソコンとIを連れて来るように連絡をし。20分くらい経ち、工藤が警察署に来ると、工藤は用事があり、すぐに帰って行き。信也たちは、作業に取りかかり、10分経ち。

「I、そっちはどうだ?」

「ダメですね」

「ダメかー、用心にここまで消去されては」

「信ちゃん、USBがまだ1つ、残ってるけど!?」

「最後1つか!?」

「I、頼む」

「わかった、あれ? 何この暗号?」

「暗号!?」

「解析して見るね……。設計図って書いてある。あとは、ダメね」


 プリントアウトして見ると。CPUシーピーユーの設計図が。CPUシーピーユーの設計図は、信也の物だった。結局、何も手がかりがつかめず。動き出した、新しい人工知能。宗方教授でさえ、止められないと言っていた。信也は、そのことについて本当ことだと思っている。  

 海外のどこの銀行を狙っているのか、見当もつかない。ことが起きらないと警察も手出しができない状態だった。ことが起こる前に未然に防ぐには、宗方教授の家から半径10キロ圏内を探すしかない。信也は念のために、来週の火曜日からの出勤を欠勤扱いにし、4日間休むことに。

 信也は、研究所に戻り、社長に警察でのことを話した。人工知能を隠すとしたら、当然電源を確保するはず。マンション等を借りている可能性もあるし、あとは使ってない倉庫とか。2人は、なんとか範囲を絞り込もうといろいろと考えていた。


 Iは、半径10キロと言う言葉に、ヒントが隠されていると、地図を広げて見ている。  信也は、社長の知り合いの不動産会社を紹介してもらい、めぼしい場所を上げて、消去法で当たることに。夕方になり、手がかりすら見つからず、今日はここで切り上げることに。信也は、一旦、研究所に戻り、社長に報告をした。

「社長、これと言った手がかりはありませでした」

「そうか、手かがりなしか……」

「研究社員の方にも手伝ってもらって、すみません」

「気にするな、みんな、信也君と同じ想いだから、人工知能を犯罪に使われる訳にはいかないからな」

「そうです、絶対にあってはなりません」

「前回は未然に防げたが」

「あと、2日あります、必ず探し出します。社長、Iと希さんは?」

「それが、研究社員何人かで、何か作らないといけないとかで、詳しくは聞かなかったが」


 その頃、部品加工室では、Iと工藤が作業を終え。

「できましたね、理論上は可能だけど、正直、これを使う日がこないことを祈るわ」

「私だって、こんなの使いたくわないわよ、もしも対策ね」

「そうだけど、Iにもしものことがあったら」

「希、心配してくれるのは嬉しいけど、信ちゃんを渡す訳にはいかないからね、心配ご無用、と言いたいけど、ありがとう、やっぱり私が見込んだ人だけのことはあるね。希、これは、希の部屋に置いといて」

「わかった、あと片付けするから、ちょっと待っててね」

「希、ありがとね」

 その時、ドアをノックする音が聞こえ、ドアが開き。

「お疲れ様です」

 信也がここに来るのは想定外で、工藤はちょっと動揺し。

「木村さん……お疲れ様です、今日はお手伝いできなくてすみませんでした」

「大丈夫だけど、何か急ぎの用事だったの?」

 Iが申し訳なさそうにしている。

「信ちゃん、ごめんなさい、私の体の調子が」

「病気か? 医者に見せないと」

「医者って、病気じゃありません。メンテナンスをしてもらっていただけです。自己診断能力ができているかチェックしとかないと、ダメだと思って」

「そうなんだ、でも、社長から聞いたんだけど、何かはわからないが、何か作らないといけないとか」

 信也が食い下がり、工藤は思わず割り込み。

「あっ、それは、私も早くいろんなことを覚えないと思って、秘密の特訓みたいなことをしていただけで」

「秘密の特訓!? 社長をビックリさせようと思ったとか!?」

「そんなとこかな」

「内緒にしとくから、大丈夫」

「ありがとう」

「作業は、終わり?」

「今、終わって、片付けるところ」

「わかった」

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