Iの作戦

Iの作戦

 数日が経ち、研究所のミーティングルームには、研究者たち全員が集まり。予定通りに新しいハードが完成し、みんなホッとしている。

 信也とIは、みんなに感謝していた。しかし、社長はIの載せ替えシステムことで問題ないか気にしていると、Iは、少し浮かない表情をしている。


 Iの全てのデータを移動の際は、移動元は全て消去される。そして、コピー防止機能がついている。もし故意にコピーしようすると、Iの意思とは関係なく防御システムにより、データは全て消去される。Iの新しい新居に引っ越しを要する時間は2分程度。いよいよ、新しい新居にIは引っ越しを開始した。無事に引っ越しできるかみんな心配していた。引っ越しを開始し2分経ち。


「システムチェックします。異常なし、生活起動モードに移行しました。皆さん、無事引っ越し出来ました」

 そのことに誰よりも真っ先に信也が反応し。

「I、居心地はどうだ?」

「思っていた以上に快適です。なんか頭がさえ渡り絶好調って感じです」

 それを聞いていたみんな大喜びしていた。


 それから2日経ち。あの大学で火事のあと、1年後に別な大学へ移動した宗方准教授は、教授の椅子に座っている。宗方教授は、アメリカのとある大学から人工知能の講師として招かれ、かなりの評判だった。

 1週間後、アメリカから帰国し。戦闘用人工知能2号機は完成し、明日、取引が行われる。今度こそはしくじる訳にはいかない宗方教授は、大学の教授室にいた。

 すると、そこへ、男性職員が入って来た。  

「失礼します、宗方教授、1週間のアメリカで講義お疲れ様でした。明日、火災訓練がありますのでご協力お願いします」

「明日だな、わかった。あっ、時間は何時だね?」

「明日の午前10時です、失礼します」

 男性職員は部屋を出た。

 その3分後、突然爆発音が響き渡り、宗方教授はその音に驚き慌てて外へ。しかし、ドアが開かない。

 すると、火災報知機が鳴り、大勢の人の声と叫び声が聞こえ。

「大変だ、2階の実験室から火が出たぞ、みんな外に避難しろ!」

 窓のから黒煙が見える。

「みんな、急げ、逃げるぞ!」

 学生たちが大騒ぎしている。火災訓練を明日に控えたやさき、また外からものすごい爆音が響き渡り、宗方教授の部屋のドアは依然開かず、助けを呼んでいる。

 すると、宗方教授の部屋のドアの前に男性が1人。

「宗方教授、大丈夫ですか!?」

「ドアが開かない、助けてくれ!?」

 2階の天井がはがれ落ち、ドアを塞いでいる。急いでがれきをどけ、ドアが開き。

「大丈夫ですか!?」

「大丈夫だ」

「早くここら出ましょう、2階が崩れそうです」

「わかった」

「足元に気をつけてください」

 煙がたち込み、前が見えず。

「教授、こちらです!」

 しばらく校内を移動すると。

「教授、こちらに来てください、ここにひとまず入ってください」

「……ここはどこだね!?」

 宗方教授は、部屋の中を見渡している。

「宗方教授、何言ってるんですか!? ここは研究室じゃないですか!?」

「研究室!?」

「覚えてないのですか!? あの研究室ですよ。I、頼む」

「わかりました」


 宗方教授の目の前にある、モニター画面に映像が流れ始め、あの火事の出来事が映しだされ。その映像見て、宗方教授は、かなり動揺している。

「なぜこの映像が、あの時、録画データは消去したはず……」

 その時、Iがモニター画面に現れ。

「ヤッタね、自白しましたね。自分で墓穴を掘りましたね」

「I、うまくいったな」

 宗方教授は、Iには目もくれず、そこにいた男性を見た。

「誰だ、お前は!?」

「私ですよ、教授」

 そこにいたのは、変装していた信也だった、変装を脱ぎ捨て。宗方教授は困惑し、呆然と立ち尽くし。

「……お前は……木村信也、なのか!? なぜお前がここに……!?」

「驚きましたよ、まさかあの録画データが残っていたとは」

「……くっそー、こんな手の込んだことをしやがって」

「宗方教授、これに見覚えがありますか?」


 信也は、あのハードを手にしている。

「それをどこで手に入れた!?」

「これがなんか知っているんですね!?」

「……」

 すると、モニター画面に、Iがハッキングした時のあの映像が流れ。宗方教授は、床に跪き、愕然とした。信也はすかさず。

「もうここで終わりにしませんか? あなたはやってはいけないことをしたんだよ。人工知能は人を助け、人を守るためにある。あなたはそれを戦争の道具しょうとした。金儲けの道具に。そして、私たち研究員の想いを踏みにじった罪は重いからな!? 絶対に許す訳にはいかない。あなたに人工知能を語る資格はない! わかったか!?」

 信也は、渾身の想いで言い。再び、Iがモニターに現れ。

「信也ちゃん、今、警察が宗方教授の自宅に入り、研究施設と家宅捜査始めました」

 宗方教授は、手を挙げ、床に叩きつけ。

「畜生、あと一歩だったのに、くっそー……」

 信也は携帯電話で工藤に連絡を取ると。この部屋の建物の壁が全部倒れて行き。周りを見ると、大勢の生徒と学校関係者が集まっている。宗方教授が、それに気づき。信也の指差す方には、巨大液晶画面があり、信也が映っている。

「今の一部始終をあの画面に映し、ここに入るみんなに見てもらった。もうこれで、この業界ではやっていけまい」

 信也は、宗方教授を睨み。宗方教授は何も言えず。そこへ、スーツを着た男が2人現れ。 「警察だ、11時10分、現住建造物等放火罪、及び、情報窃盗罪で逮捕する。その他余罪も署できっちり調べるから覚悟しとけ」

 刑事は、宗方教授に手錠をかけ、Iは大喜びしている。

 宗方教授は、立ち上がり。警察に連行されようとした時、急に立ち止まり、後ろを振り向き、信也を見た。

「木村君、どうやら諦めなかったようだな、感情を持つ人工知能を。これで終わったと思うなよ、これは序章にすぎない。私が終わっても次のシステムが作動した。さっきスイッチを押したからな、もしもの保険だよ。5日後、もう誰にも止められない。Iとか言ったな、私の作った人工知能と勝負だ、お前に勝てるかな!?」

 宗方教授は、不敵な笑みを浮かべ、警察に連行されて行った。


 信也は、宗方教授の捨てゼリフの意味を考えていると、足に何かが当たり、下を見ると、スマホが床に落ちている。液晶画面が割れ、スマホを使ってネットからスイッチを押していた。


 5日後に、いったい何が起こるのか、あの状況ではったりはありえない。次のシステムとはなんなのか、信也たちはまったくわからない。

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