第10話 ダンジョンマスターとしての仕事

 翌朝、一頻ひとしきりベッドの上で悶えた俺は再びダンジョンに来ていた。


 昨日、唐突にダンジョンマスターになった俺だが、これからやらなくてはいけない事は山積みだ。


 まず確認すべきはダンジョンが壊滅した原因だ。


 これは昨日のうちに情報の整理を済ませておいていた。


 ダンジョンに攻め込んできたのは恐らくガルプテン王国という国に間違いないだろう。


 このダンジョンからほど近い所に首都を構える人族が主に形成する小国だ。


 間違いなく、この国とは近いうちに正面切って争うことになるだろう。


 今現在はダンジョンの入口に兵士の見張りを付け、新たな魔族がダンジョンに入りダンジョンマスターになるのを防ぐと共に、魔族のいなくなったこのダンジョンがエネルギー不足で消滅するのを待っているといった状況だ。


 ちなみに、ダンジョン内に散乱していた魔物や魔族の死体も彼ら兵士達が処理をしていた。

 病気が広まったり、死体がアンデッド化したりするのはやはり避けたかったのだろう。


 また、一日に二回ほどダンジョン内の様子の見回りに兵士がやってくる。


 彼らもまさかダンジョン内にまだ魔族の生き残りがいたとは思っていまい。

 箱庭様様である。


 つまり、ガルプテン王国は今、ここを無人のダンジョンだと思っているわけだ。


 しかし、何れ違和感に気づき、新たなダンジョンマスターが存在している事がバレるだろう。


 その時までに如何に準備を整えられるかが勝負の鍵となる。


 さて、早速準備に取り掛かろう。



 ◆◇◆◇◆



 まず必要なのは武器と戦闘技術だ。


 国の兵士が相手ということは、練度ではなく数に頼らざるを得ない場面が出てくるだろう。


 心苦しいが、ゴブ助にポチ、ゴンザレス達にも出てもらう事になるだろう。


 最も、彼ら自身はメチャメチャ乗り気だったけどな。「ヒャッフー!暴レルゼェ!」とか言ってたし。

 まあ、元々魔物はダンジョンを防衛するのが仕事みたいなものだし、戦いは決して嫌いなものではないのだろう。


 彼らは現在戦闘訓練の真っ只中だ。


 ちなみに、武器は魔法の袋に入っていたものを利用させてもらうことにした。


 正直、武具の性能があまりにも良すぎるせいで俺達の身の丈には全く合っていないのだが……。


 まあ、兎にも角にも武器の事に関しては心配する必要は無いのだ。



 さて、俺がダンジョンマスターになったことでできるようになったことがあった。


 それは、自分のダンジョン内の魔物の能力を見ることだ。


 ダンジョンマスターには魔物の能力を見る力があるという事は知っていた。


 具体的に言えば、ここで見ることのできる魔物の能力はステータスと呼ばれ、【体力】【攻撃】【防御】【魔力】【魔耐】【敏速】の六つの観点で評価される。そして、それら全ての観点を考慮した【総合】で魔物のランクが決まる。これは全て、A〜Eと評価されるらしい。最高がA、最低がEだ。Aより上のランクがあるという噂を聞いたことはあるが、本当にそんなものが存在するかどうかは分からない。


 ゴブリンやコボルト、スライムがEランクであること。オークやクラウドウルフがDランクであることなどは知識として持っている。


 だが、進化していると思われる今の箱庭内の魔物達の能力は知らなかった。だからこそ、この機会に知っておこうと思ったわけだ。


 その結果がこちらだ。


 まずは一般のゴブリン、コボルト、オークにウルフ達。


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 種族:ホブゴブリン


【体力】:D


【攻撃】:C


【防御】:C


【魔力】:D


【魔耐】:D


【敏速】:C



【総合】:C


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 種族:エルダーコボルト


【体力】:D


【攻撃】:C


【防御】:D


【魔力】:C


【魔耐】:D


【敏速】:B



【総合】:C


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 種族:ハイオーク


【体力】:B


【攻撃】:C


【防御】:C


【魔力】:D


【魔耐】:C


【敏速】:E



【総合】:C


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 種族:グレートウルフ


【体力】:D


【攻撃】:C


【防御】:D


【魔力】:C


【魔耐】:C


【敏速】:B



【総合】:C


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 やはり進化していたようだ。皆、進化前よりランクが上がっていた。コボルトとゴブリンに関しては二段階だ。


 次に、ゴブ助とポチ、ゴンザレスのステータスだ。


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 種族:ゴブリンキング


【体力】:B


【攻撃】:B


【防御】:B


【魔力】:C


【魔耐】:C


【敏速】:B



【総合】:B


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 種族:コボルトキング


【体力】:C


【攻撃】:B


【防御】:C


【魔力】:B


【魔耐】:C


【敏速】:A



【総合】:B


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 種族:オークキング


【体力】:A


【攻撃】:B


【防御】:B


【魔力】:C


【魔耐】:B


【敏速】:D



【総合】:B


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 うん。もう見た瞬間ビックリしたよね。


 お前らそんな強かったのかよってさ。普通にミノタウロスと同格じゃん。


 てっきりヒトの事を物陰から見てニヤニヤしてるだけの奴らだと思ってたぜ。

 まあアイツらがBランクだろうがAランクだろうが、あのにやけヅラは絶対許さねえけどな。


 だが、これから始まる戦いにおいては頼もしい限りだ。思う存分暴れてもらおう。


 最後に、アインス、ツヴァイ、ドライ、フィーア、フュンフのステータスだ。


 実は、ツヴァイ、ドライ、フィーア、フュンフの四匹はグレートウルフからもう一段階進化したのだ。


 グレートウルフになって灰色となった毛色が今回の進化で漆黒に変色した。


 アインスはまだ二度目の進化は来ていないが、毛色が変色せず白のままだったため、まさかと思っていたが、案の定グレートウルフとは別の種族へと進化していたようだ。


 ではまずは、そのアインスのステータスを見てもらおう。


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 種族:プライドウルフ


【体力】:C


【攻撃】:B


【防御】:C


【魔力】:B


【魔耐】:C


【敏速】:A



【総合】:B


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 うん強い。進化した回数が一度の魔物の中じゃ断トツのステータスだ。

 もし、アインスも二回目の進化を控えているのならば、一体どうなってしまうのか。

 怖いような楽しみなような複雑な気持ちである。


 次は、二度の進化を果たしたツヴァイ達のステータスを見ていこう。


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 種族:デモンウルフ


【体力】:B


【攻撃】:A


【防御】:B


【魔力】:A


【魔耐】:A


【敏速】:A



【総合】:A


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 攻撃力、速度、魔法に対する耐性が大幅に上がったステータスとなっている。


 そして、ランクがAだ。もう一度言うぞ?ランクAだ。


 体毛の一部が赤くなっており、見た目の方も闇のような黒に赤のラインという非常にカッコイイものとなっている。

 本当に言うことなしの心強い戦力となったのであった。



 ◆◇◆◇◆



 さて、そんなこんなで戦闘準備を進め、まもなく三ヶ月が経とうとしている。


 そろそろガルプテン王国も、全く衰退しないダンジョンに違和感を感じてくる頃だろう。


 こちらもやりたい事はやり終えた。


 国の一つが何のそのだ。


 俺は今や魔王なのだ。


 ようやく手に入れた幸せを邪魔し、あまつさえ壊そうとする敵は返り討ちにしてやる。


 かかってこいガルプテン王国。


 さあ、開戦だ。

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