星の光は遠い昔から来ている

一緒に天体観測をする仲の、二人の親友に、一人の後輩という青春ものとして馴染み深いシチュエーションは、口当たりよく読者を誘う。
ありふれてるなと思いつつも、読み進めてほしい。

物語の主観は後輩に置かれ、先輩の一人に懐いているが、親友の二人には後輩にだけわからない空気を出すことがある。
それが後輩にはおもしろくない。自分もきちんと輪の中に入りたい。そして好きな先輩に自分をちゃんと認識してほしい。

ここまで来ても、まだありふれた物語だろう。

そこから、後輩の想いに押されて、先輩が口を開くのも、見慣れた展開だ。

そこから、後輩の知らないもう一人の先輩の存在と二人の語らない過去を知る。

後悔とやるせなさの滲む過去を聞き、後輩も僅かばかりの後輩と、なによりも憤りを感じる。

それは、自分を、自分として認識してもらいたいという根本的な欲求だ。

人は、他人と関係を持つ時に、無意識のうちにその他人をカテゴライズする。
求めているのは、そのカテゴリーに収まる人物で、そこに個性は必要ないんじゃないか、思った通りの反応を返してほしいだねなんじゃないかと相手に思わせてしまう。

誰もが抱く、そのカテゴライズされることへの憤り、怒り、やるせなさ、相手に自分自身を見てほしいのにという消失感。
そんなありふれた、けれどなかなか自覚しない根本的な欲求と不満を浮き彫りにして丁寧に描いていた。