スマホ

授業中、スマホのバイブレーションが鳴った。


…なんだろ。

授業中ってことは学校の友達じゃない、とすると母さんから連絡とか?


少し気になったがそのままスルーした。


そもそも授業中だしな。


そう思ってあまり気にしてはいなかった。


でもこの時の俺は馬鹿だった。


母さんが連絡することなんてないし、

他にも連絡先を知っている人は少ないということに気づくべきだったんだ。


ブブッ


またバイブレーションが鳴る。


ブブッ、ブブッ


なんだよ、うるさいな。


そう思ってカバンから手探りでスマホを見つけ、

そのまま電源を切った。







授業が終わると佐倉が真っ先に話しかけてきた。


「ねぇ!」


「お、おう?さっ…果歩ちゃんどした?」


「彼女のメッセージを無視するってどういうことよ!」


「えっ…?あっ、あれ果歩ちゃんだったの?

でも、授業ちゅ…」


「うちらは1番後ろの席だからバレないわよ!

てか授業と私どっちが大切だって言うのよ!!」


「そりゃもちろん果歩ちゃ…」


(って言わないと殺されるだろうし。)


「そんなのわかってるわよ!もう…スマホ出して。」


「あっ、はい…。」


俺はカバンから取り出して果歩ちゃんに渡した。


すると電源を入れ、


「パスワードは?」


と聞いてきた。俺がスマホを取ろうとすると


「教えて。」


と言われた。

まぁ、別に見られて困るものもないし…いいか…。


「えっと、040617…。」


「ありがと。」


スマホはなにやら勝手にいじられてから俺の元に返ってきた。


「何したの?」


「連絡先私以外の全部消した。」


「…あーーーー、はぁ!!!?」


「彼女のメッセージを無視した優斗くんが悪いのよ?これでメッセージきたら全部私ってわかるじゃない。」


「いやいや、それはちょっと…」


「何よ!連絡先だって少ししか入ってなかったくせに!!」


「まぁ、そうだけど…うん…。」


「あと、私のメッセージに30分以内に返事なかったら次はスマホ壊すから。」


「えっ!?壊す!!?」


「だってそんなのスマホ持ってる意味無いもの。」




キーンコーンカーンコーン




「じゃ、約束守ってね!絶対よ。」


「えっ、ちょっ…。」


「授業始めるぞー着席しろー」


そんなぁぁぁぁ。無理があるよ…。





メッセージがきたらバイブレーションが鳴るはずだが俺は気づかないのを恐れて5分起きくらいにスマホを見ていた。


でも先生に気づかれたらまずいしなぁ…。


ブブッ


「…!!」


俺は机の下にスマホを持って画面を見てみるとやはり佐倉だった。


『優斗くーん』


ブブッ


『あっ、既読ついた♪』


ブブッ


『ふふっ。ドキドキするね。』


俺は先生の様子を見ながら返事を打つ。


『おい、俺先生に気づかれそうで怖い。』


ブブッ


『優斗くんは臆病だなぁ‪w』


ブブッ


『それがいいんじゃない。』


完全に楽しんでやがる…。


『ねぇ、もういいかな?授業も聞きたいし。』


ブブッ


『えー。』


ブブッ


『好きって言ってくれたらいいよ。』


…!!?

俺はついびっくりして顔をばっとあげてしまった。


加藤がこっちを見た気がした。


えっ、えーーっと。


『好きです。』


よし、送信っと…。


ブブッ


『私もだよ。』


つい隣にいる佐倉の方を見ると佐倉も

こっちを見て笑っていた。


「おい佐藤!どこ向いてんだ!」


やべっ、先生に…てかこっち来てる…!?


「さっきから動きがおかしいんだよお前は…

おい!手に何持ってる!」


「いや、なんでもありませ…」


「いいから見せてみろ!!!」


あぁ、終わった…。


俺は素直に手に持っていたスマホを机の上に置いた。


「おまえ…!俺の授業でスマホをいじるとはいい度胸だな。放課後職員室に来るように。」


そう言って先生は俺のスマホを奪って教卓に戻った。


なんてこった…。てか佐倉!お前のせいなんだからな、!


そう思って佐倉の方を見ると声を必死で抑えているように笑っていた。


あいつ…っ!絶対に許さん!!


俺の心の中で怒りが込み上げてきた。

女に怒ることさえ出来ないやつだと思っていたら大間違いだ。


俺だって…!


そう思いながら俺は黒板に書いてある写せていなかった文を殴り書きで書く。


佐倉…あいつに一言言ってやらねば…!


俺は隣の佐倉を睨んだ。


佐倉はそんな俺に気づきもしなかった様だけど。

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