帰り道

佐倉さんは足早にその場を去った。


「…じゃあ帰ろう、佐藤。」


俺は無言で加藤について行った。


加藤は俺が話すのを待っていたのか

少しの沈黙が続いた。


ピロンッ


「うわ、びっくりした。なんだスマホか。」


そう言って俺はスマホを開く。

嫌な予感がした。


…やっぱり佐倉だ。


『佐藤くん、佐藤くんは私を選んで

くれるのかなぁ。楽しみにしてるね。』


あいつ、どこで見てるんだろう、全然分からなくて怖い。


「ねぇ、佐藤」


いきなり加藤が話しかけてきたのでビクッと

してしまった。


「あー、えっと、やっぱりなんかあったよね?」


俺は無言でスマホをそのまま見つめながら聞く。


「なんかあったなら私でよければ

話して欲しいんだ。」


加藤はそう言ったがまだ無言でいる

俺を見つめて付け足す。


「ほら、嫌なことなら誰かに言ってスッキリすることだってあるし、相談!とかでもいいから…さ」


俺がずっと無言のせいで気まずい空気になる。


「ねぇ、佐藤…よけいなお世話だったら

いいんだけど何か言ってくれないと…」


俺は我慢できなくなり進むスピードを速くした。


加藤もそれについてくる。


「ねぇ、佐藤…」


俺は気づけば走っていた。


「佐藤ってば!!」


だめだ、俺の足で加藤が追いつけないわけがない。


「ねぇ!!!!!」


加藤が俺を抜かして俺の行く手を阻む。


「何があったのかしらないけどさ!

何か喋ってくれたっていいじゃん!!」


俺は驚いた。俺の目の前の加藤の後ろの方には

佐倉がいたからだ。


佐倉は俺が見ているのに気づいて微笑んだ。

なんてやつだ。


加藤はそんな佐倉には気付かずに続ける。


「それとも私じゃ相談相手にもならないって

こと!?ねぇ!何か言ってよお願いだから!!」


俺は色々とパニックになっていて

何も考えられなかった。

ただ下を向いていた。


「もういいわよ!佐藤なんてしらない!!

私だって好きで話しかけてるわけじゃ

ないんだから!そっちがその気ならもう一生

話しかけないから安心して!!!」


加藤はそう言って走って行ってしまった。


佐倉ももうそこにはいなかった。


俺は呆然と立ちすくしてしばらくそこにいた。


数分後、やっとさっきまで起こっていた事を

理解した。


俺はどうすれば良かったんだ…。

ほんとに俺、勇気とかなんもないんだな…。


その後色々と考えながら帰ったのだが

あまり記憶にない。


家に着いた時、どっと疲れが出てきた。


自分の無力さとかもろもろに押しつぶされているような感覚でその1日を過ごした。


明日は土曜授業もなく、休みだ。


良かった。まだどうやって加藤に謝ればいいのか

分からないから。

あと佐倉のやつもどうにかしなくては。


俺はそんな事を考えて早めに寝ることにした。

こういう時は食って寝るのが1番だ。


今日は布団の中まで全身潜り込んで

ダルマのような体制で寝に入った。

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