第10話 デビューは派手に!-その2

ジュンヌ隊は街を見下ろせる、丘にいた。望遠鏡片手にモモが街の中を覗く。

「5000人くらいいそう。ジョニー9のライブの時と同じくらいだから。」

老兵は後ろめたそうに下を向いた。

「おいおい、将軍大丈夫かなぁ。」

「将軍ならきっと大丈夫だよ!」

モモは強くアヤカの手を握った。


-表門

「手応えのない奴らよ。足を止めることもない。」

ホーセンは迎撃に来た騎兵たちを、屠りながら表門へ近づく。門の上からは弓兵が矢を放つも薙刀で颯爽と払っていく。そして、門も

「アカウサギよ。気張れよ。“海閃”‼️」

門は紙切れように呆気なく破れ去った。門の中からはクモの子を散らすように兵たちが溢れ出てくる。

「来い!雑兵ども!この首には城一つ以上の価値があると思え!!」


-ジュンヌ隊

丘の上の老兵から伝達を受けて、隊は進む。ジュンヌは旗を掲げて先陣をきる。そんな姿に見とれるアヤカとモモはケロルの用意した戦闘用馬車に乗っている。

「行け行け!」

「やっほー!ジェットコースターより楽しい😃」

身体を通り抜ける疾走感はとても心地よく感じる。約2000人の軍は鳥の群れのように、そして、疾風の如く裏門へ向かう。



ケロルは老兵と街中の状況を見張る。

「なぜ、こんなに士気が上がったんでしょうか?」

「やはり、一国を代表する将軍が独りで大軍と戦っているのです。軍人として思うところがあるんでしょう。あなたはどうですか?カタクラ将軍。」

「わしはもう老いぼれよ。」

静かな言葉とは裏腹に、手は強く握りしめていた。

「どれこれも小娘たちのおかげなのかもしれないな。どこから彼女たちを連れてきた?」

「それは内緒ですよ。けど、彼女たちがこの国を救う最後の希望だというのは確かです。」


-裏門

「警備が手薄だ!行くぞ!」

裏門は木で出来ており、補強もされていなかったため、木槌でも壊せそうだった。しかし、上から石や水が降ってくる。兵たちはそれにビビって近寄ることが出来ない。

「ありゃ、無理だ。」

「そっちだって、必死なんだ!頑張りましょう!」

「王女様。そう言ったって石当たったら、死んじまいますよ。俺はまだ死にたくない。」

アヤカとモモは少し後ろにいるため、攻撃は受けなかったものの、どうすれば良いかは浮かばない。

「借ります。」

ジュンヌは副将の兜を被り、旗を担ぎながら、木槌で門を叩き始めた。降りかかる石、水を受けながらも必死に叩き続けた。アヤカは思わず顔を覆ったが、モモはジュンヌへ向かって走り出した。

「ジュンヌちゃんを助けなきゃ!」

「モモさん、、、」

駆け寄ったモモに水がかかる。

「キャッ!冷たい。」

続けて石が落とされる。アヤカは咄嗟に馬のお尻を蹴り上げ、馬は驚いて門へ突っ込んだ。

「間に合って🙏」

祈るアヤカを乗せた馬車は、そのままジュンヌとモモをひっかけ、裏門さえも破壊した。地面に転げる3人。アヤカはクラクラする頭を押さえながらも、ジュンヌの旗を掲げ

「気合入れろ!!ジュンヌがこんなに身体張ってんだ!お前らも頑張れよ‼️」

アヤカの叫びは兵士の中にある誇りを呼び覚ました。「おおぉー」という掛け声と共に街中に進む兵士たち。それを見たアヤカは気が抜けたように倒れてしまった。

「大丈夫ですか?」

ケロルが様子を見に後追いで来た。

「おせぇよ、ばか、、」




つづく

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