第4話


「ただいまぁ」

「お兄おかえりーッ!」



厄介な奴から解放されたと思ったらまた厄介な奴に…… これは2個下の妹の足立 響紀(あだち ひびき)だ。 俺は高2だから来年こいつも高校生になる。



「ふふ、お兄帰ってくるのずっと待ってたよ〜!」

「あー、お前が妹じゃなければ俺もモテてるって優越感少しは味わえてるのにな」

「何? お兄今日帰って来るのも遅かったけど疲れてるね、 大丈夫?」

「だったら休ませてくれよ?」



それよりもうご飯だよと言われリビングへ行くと父さんも帰って来ていた、まぁ夜8時過ぎたし当然か。



「健斗、今日は随分遅いんだな? 彼女でも出来たか?」

「優も私と付き合い始めたの高校2年生からだもんねぇ、懐かしいわ。 でも今でも私優の事とっても愛してるわ」



うわぁ、父さんと母さんの惚気なんて聞きたくないよ、うちの母さんはよく美人だねって言われるけど毎日見ているし何より母さんだし父さんとイチャイチャしてるの見るとなんか息子として見てらんないよ。



「響紀、この2人のノリ疲れないか?」

「え? お父さんとお母さんラブラブで見てて楽しいじゃん?」



あ、そんな風に思ってるの俺だけだったわ。 そして夕飯を食べ部屋に避難する。 やっと1人になれたわ、それにしても変な奴だったなぁ。 美咲えりなか。なんだってあいつ今日…… まぁ変な奴だったからこそだな。



あいつがどんな行動取ってももう不思議に思わないくらいおかしい奴と認識してしまったし。 半年の命とかドラマやアニメじゃあるまいし、精神科にでも1度行って処方箋でも貰ってくればいいんだ。



ベッドに横になりテレビでも付けようかなと思うとドアが開いていた。 そしてそこから覗く視線…… いや、怖えよ。 そんなのは美咲だけにしてくれよ、響紀が俺の様子をドアの隙間からジッと覗いていた。



「あはは、バレちゃった。 お兄を驚かせようと思ったのに」

「もっと強烈なの居たからそんな大して驚かなかったわ」

「へ? もっと強烈なの? まさかお兄本当に彼女出来たんじゃないでしょうね!?」

「え? なんでなんかあるとどいつもこいつも彼女だって言うんだよ? お前ら恋愛脳かよ?」



おめでたい連中ばかりだなって思うがまぁ惚れた腫れたの話題って女は好きそうだもんな。 とりあえず響紀に聞いてみるか。



「響紀、お前って好きな人居てもしその好きな人に告白しようとして先に他の人に告白されて取られたらどうする?」

「うぅん、お兄のくせになかなかディープな質問ね。 そうだなぁ、その子の事八つ裂きかな!」

「八つ裂きって…… 過激なのしか俺の周りに居ないのかよ」

「あはははッ、冗談冗談! まぁ女の子はね、周りとかも気にしたりするしその子と別れたら次は自分がって人もいれば略奪してその子の事どこまでも突き落とす人もいるし、まぁ人によって違うじゃんそんなの」




聞く限り美咲の場合は後者に近いような気がしてきた。 なんか丑の刻参りでもやってそうな気がしないでもない。大分上野にお熱っぽいしな…… まぁ実際そこまでとは行かないだろうけど。



俺が考え事をしていると響紀がベッドに横になっている俺の上にダイブしてきた。



「いってぇ…… お前いきなりなんだよ!? スキンシップ激し過ぎないか? いい加減お前も来年高校生だろ?」

「私お兄に勉強教えてもらおうと思って来たんだった! すっかり忘れてた。 さぁ教えてお兄!」

「はぁ、俺に教わっても俺自身大して頭良くないんだから当てにすんなよ」

「いいからいいから!」




そして響紀の勉強を見てやりその日は終わった。 そして次の日朝になりまた美咲に付きまとわれるのかと思うと憂鬱な気分になってきた。 家を出て学校へ向かう。



昨日で美咲の家もわかったし。 俺の通学路が普通に美咲の家だったのだ。 まぁ朝から俺と一緒なんて変な誤解を招くだろうから居ないとは思うけど足早に通り過ぎる。 よかった、普通に通り過ぎれたと思ったら……



「ちょっと! 足立君」



後ろから声を掛けられ昨日もよく聞いた覚えのある声なので恐る恐る振り向くと腕を組んで不機嫌そうな顔をしている美咲が居た。



「何私の家そんなにせかせかと通り過ぎてるの? まるで私から逃げようとしてるみたいじゃない?」

「あー、居たか…… だって俺と一緒に居たら変な誤解を招くとかお前昨日言ってただろ?」

「そうね、足立君とは変な誤解をされたら困るわ。 だからね、私考えたの」

「何を?」



美咲はそう言ってニヤッと笑うととんでもない事を言ってきた。



「足立君私に付きまとって迷惑を掛けなさい、しかもこれ見よがしに上野君の前で!」

「仰ってる意味がわかりませんが?」

「だってだって! そうすれば優しい上野君の事だもん、嫌がる私を見て足立君に殴り掛かって私を助けてくれるわ、そうして私の事を……」




1人で目をキラキラさせて危ない妄想に浸っている美咲を見てバカなんじゃないかこいつと思う俺に「それがいい、そうしましょう!」と1人でアホな作戦を自画自賛している。



「却下」

「なんで!? どうして? いい作戦じゃない? 私がウルウルさせて上野君に助けてって迫れば花蓮ちゃんなんて目じゃないわ」

「お前の腐った性根のせいで俺にはお前の瞳は物凄く濁って見えるんだけど?」

「あー、やだやだ。 私の瞳の破壊力を知らないからそう言うのよ、ほら!」



美咲はそう言って俺にウルウルとした目を見せ上目遣いで俺に協力してと悲願しているような視線を送ってきた。 確かに可愛い、こいつの見た目だけしか見てなかったら即落ちしてしまいそうになる。 だけどその前に俺を貶めようとする事を言われたので全く俺は込み上げる気持ちが湧かない。



「はいはい、凄いね可愛いね」

「はぁ!? 何その反応! 私がこうすれば大体の男の人は落ちるのよ? なんで足立君みたいなジャリが落ちないの!?」

「いや、胸に手を当てて考えてみろよ」



そう言うと美咲はキョトンとした顔で胸に手を当て何かを考えているようだったが「全然わかんない」と言ってケロっとしていた。 こいつは周りが見えなくなるタイプだな。 その証拠に今のやり取りを何人かの生徒に見られている。



「お前ますます俺と仲良いと思われんじゃないの? 周り見ろよ」

「え?」



ヒソヒソと周りではあれってえりなちゃんの彼氏かしら? とかえりなちゃんのタイプってああいうの? とか聞こえてくる。 なんか俺ディスられてね?



「う、嘘!? さっさと私から離れてよ! 先行きなさいよ!」



バカなのかこいつ? いやバカなんだな……


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