第13話夢への惑い

 5月 1日




「いい陽気ね」

「・・・・・そうだな」


 今日もまいちゃんと散歩をしていた。散歩場所は宗堂桜が植えられている小高い山の上。その山の中の中庭のような場所のベンチに俺らは座り、ボアは走り回っていた。


「どうかした?」

 まいちゃんは俺の木のない返事に心配げな表情で見つめてくる。それに俺は。


「実はさ」

「うん」


「昨日のことなんだけどさ」

「うん」


「自分の夢のことを語ったら、なんというか、叱られた?いや、自分の見通しの甘さに気付かされたよ」


「お兄さんはなんて?」


「俺の夢を応援するけど、やる気なら本気でやりなさい、と言われた。俺ってさ、そこそこ努力すれば1年ぐらいで適性がわかるんじゃないかと思ったけどさ、兄貴は小説を書いているんだけど、その自分が納得できる作品ができる歳月は10年かかったと言われた」


「まあ」


「それでも全然デビューできていないわけだからさ、正直言って自分の見通しの甘さに気付かされたよ」


「でも」

「うん」


「今は本気でイラストレーターや声優になりたいわけじゃないんでしょう?挑戦して、無理そうならやめればいいじゃん」

「そうだな・・・・・・」


「私は夢があるんなら、一度は努力した方がいいと思うけど?お兄さんみたいにさ、本気でやったらいいわけじゃん。だからかっこいいと思わない?」


「そうだな・・・・・うん、そうだ」

僕は立ち上がった。


「ありがとう、まいちゃん。何俺は迷っていたんだ?わからないけど、全身をこめて戦う姿勢に俺は心打たれたわけなのに、自分の番になるとそれを不安がるなんて馬鹿げてた。気づかせてくれてありがとう」


 俺は深々(ふかぶか)とまいちゃんに頭を下げた。それにまいちゃんは。


「どういたしまして」

 にこやかに微笑んでいた。

「そういえば」

 おれはリュックサックから数枚の絵をまいちゃんに渡した。


「昨日描いてみたんだけど、どうかな?」

「わぁ」

 まいちゃんは興味深そうに眺めていた。


「これ全部たかくんが書いたの?」

「ああ、拙い絵だけど」


「誰だって最初はそうだよ」

「ワン!」

 走り回っていたボアが突然こちらにやってきた。

 俺はボアを抱きしめて頭を撫で撫で(なでなで)する。


「そうだな、お前寂しかったな一人にしてすまなかったな。よしよし、一緒に遊んでやるからな」


「ワン!」

「あ」

 まいちゃんはハンドバックから一つのボールを渡した。


「これで遊んでやって。私はこれを見るから」

「了解。じゃあ、行くぞー、ボアー」

「ワン!」

 それからしばらくボアと遊んでやった。


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