第6話実はモテていた?

 千種通学路を歩いていく。そのたびに俺はあることに気づいた。

「なあ」

「うん?」

「あそこの空き地、今は雑草が生えてるな」

「そうね」


 その空き地は昔、俺たち子供たちが遊んでいた場所で、雑草なんか生えてなかったんだが………。

「今の子供達は外で遊ばないのかな?」

「そうかもしれないし、ほら、今はボランティアの人が子供たちを見守っているわけでしょう?わたしたちの時は集団下校時に遊んでたけど、今はボランティアの人たちが遊ばせないんじゃないの?」


「ふーん。なんか、もったいないな」

 変わらないと思っていたんだけど、やはりこの町も変わっていっているんだな。

「そうねえ、昔はあそこでみんなでかけっこしてたっけ?」


「まいちゃんは足早かったな」

 クスリとまいちゃんは笑う。

「そう言うたかくんは鈍臭かったよねぇ。いつも私に鬼ごっこで捕まえた記憶があるわ」


「ああ、そうだなぁ。それで周りの男子から馬鹿にされていたな」

「あ、ごめん。気にしてた?」


「当時はな。運動全般、体育とか苦痛でしょうがなかった。まあ、でも、振り返ると良い思い出だよ」

「そっか、私悪いことしたね」


「まあ、昔の思い出はいいことばかりじゃないから、そういえばよく女子に、女子と近寄りにいくと藤原菌が移ると言われたっけ?」

 そう言うとまいちゃんは暗澹(あんたん)な表情をした。


「あれねえ、今から考えるとモロにいじめだったよね」

「いつから言われたっけ?あれを言われ出して行こう、俺はまいちゃんを避けるようにしてたんだ。いろいろ友達の面倒をかけたくなかったから」


 まいちゃんは神妙な顔をして頷いた。

「そっか、私に迷惑かけたくなかったんだね?」

「ああ」

 それにまいちゃんはコクリと頷く。


「ありがとう」

 それに俺はニカっと笑う。

「そう言ってくれて嬉しいよ」

 まいちゃんもニコニコしていた。そして、ぼそりと言う。


「いいなぁ」

「何が?」

「たかくん、変わってなくてよかったなぁ、と思って」

 それに俺も頷く。


「俺も久しぶりに再開した友人が変な方向に変わらないか、最初それを心配する」

「うん、そうだね。それに・・・・・・・・・」

「それに?」


「変わっていない幼馴染みと、ううん、成長した幼馴染みとこうして昔話ができるって言うことはさ、なんか昔を取り戻せた気がする」

「そう言うもんか?」

 俺にはちょっとよくわからなかった。

「俺は小学生の頃は、なんか、こうイジメられていたからさ、あんまり思い出したくないと言うか、そんなに昔話をしたいって言うことじゃないんだが・・・・・・」


 それにまいちゃんは慌てた。

「あ、ごめん!そうだったんだ」

「いや、昔のことだからそこまで過剰に反応はしないし、謝らなくてもいいんだが、なんかまいちゃんが言うことが分からなくて」


「あ、うん」

 まいちゃんはこくりコクリと頷くと言った。

「私はさ、小学生の頃、なんかたかくんに避けられているからさ、嫌われたんじゃないかって、ひどく落ち込んでいたの。それが今になってこうして会話して嫌われていなかったと言うことが判ったからさ、なんか嬉しくって」


「そうか。そう言うことか」

「うん、そう言うこと」

 俺の初恋はよく覚えていない。小学生の頃だったと思うが、まいちゃんではなく別の女の子だったが、正直言ってあんまり印象に残っていない。


 それ以降も中学、高校、大学に行ったがついぞ恋人はできなかった。何が原因かはわかる。俺は女の子に興味を示さなかったのだ。中学、高校の時は兄貴の小説が俺を虜(とりこ)にして、ずっと兄貴の本や、兄貴が紹介してくれた本ばかり読んでいた。


 大学生の頃は合コンとかしていたが、正直言ってのらなかった。

 合コン特有のチャラい雰囲気が俺には馴染めず、しかし、顔ばかり合わせるメンツのため俺が駆り出されて、そのままほとんど料理を食ってばかりだった。


 中には置いてけぼりの女子もいたが、ちょっとダサい感じの女子がほとんど、俺が一生懸命話しかけても、向こうは俺のことは無視した。

 それ以降大学生活は小説とバイトに集中して、俺の大学生活は終わった。


「しかし、意外だな」

 まいちゃんが怪訝な表情をする。

「俺が中高時代モテていたなんて、大学生時代恋人ができずじまいだったから、俺はずっと女の子にモテないんだな、と思っていたよ」


「たかくんが好きな女子は特徴があるから」

「どんな?」

「うーん、簡単に言うなら学園のアイドル系な、レベルの高い女子、むしろ、地味な女子の中ではモテなかったよ」


「ああ」

 それでなんとなく分かってしまった。

「俺が行っていたところはレベルが低かったから、正直言って学生の質も低かったな」

「それで恋人ができなかったんだよ、きっと」

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