本当の急展開

side凛斗


「ただいま〜」

玄関のドアを開けると

「兄貴。」

とても深刻そうな顔をして蓮斗が来た。


「夕飯の後、俺の部屋来てくんね?」


「あぁ。いいけど」


その時までには

今日出された課題も終わってるだろ。


この時は俺も蓮斗が

勉強を教えて欲しいのかなと思っていた。


夕飯が終わって課題も終わり

蓮斗の部屋に入ると、開口一番、


「兄貴、みっちゃんってモテるの?」


それ、この前も聞かれたぞ。


「さぁ、Eの女子なんて

密かに想っても口には出さないだろ。」

スクールカーストの最底辺クラスだし。


「キスしたって…」


蓮斗から爆弾発言を聞いてしまった。


「誰だ?」


「みっちゃんは大地って呼んでた。」


大地、神田大地か、


福原が怪我した時に保健室から

お姫様抱っこをしていて、

俺を睨みつけてきた、男バスのエース 。


E組だったはず。


福原と一緒か…

蓮斗がよっぽどイライラしたのか

近くにあったゴミ箱を蹴飛ばした。


「みっちゃんは兄貴が

好きなんじゃないの?」


知るかよ。

蓮斗を放っといて部屋に戻ろう。


廊下に出ると、

この前と同じ曲を

歌いながら歩いてきた福原。


お風呂上がりなのか

上気したほっぺを真っ赤にして

濡れた髪を拭きながら歩いてくる。


相変わらず歌上手いな。

「桜沢くん。」

目が合うと赤くなってうつむく福原。


そのまま何も言わずに通りすぎようと

思ったけど、


ついすれ違う時に


「神田と付き合ってるのか?」


「えっ?」驚いて目を見開く福原に


「告白されてキスされたんだろ?

蓮斗から聞いた。」




side美葉菜


「もう蓮斗くんのおしゃべり💢」


聞こえないように呟く。


私は大地のことを友達としか思えないのに…


まるで恋人になったみたいな感じじゃん…


ちょっとムカっとしたのもあって

「別に桜沢くんには関係ないでしょ。」

素っ気なく返す。


だって私のこと

絶対女子として見てないでしょ。


「…」私の言葉に無言の桜沢くん。

やばい…怒らせた。


「これでも関係ないか。」


桜沢くんの顔が私の顔に近づいて

唇にほんのりと甘い感触。


でも、ほんの一瞬で次の瞬間、


桜沢くんは、はっとしたように


「悪い」


と言いながら唇を離して行ってしまった。


キス…


私はしばらく熱くなった頬を

押さえながら床に座り込んでいた。





side凛斗


マジ最悪…


お風呂に入る前だから

もう1時間以上たっているのに、


思い出すだけで顔が熱くなる。


あの時、


「桜沢くんには関係ないじゃん。」


神田のことが出た瞬間に顔を反らした、

福原にイラッときて思わず唇を奪っていた。


一瞬だけどふわっと香った

シャンプーとリンスの香り、


火照った肌、


そして体からから香る女子特有の甘い香り、


めっちゃ甘い唇。


やばいかも…


同じ家に同い年ぐらいの女子。

しかも普通に可愛い。

がいることの意味が分かった。


明日、顔合わせたくないな。


たぶんすごい気まずい。


「どうしたんだろう俺…」

独り言を言ってみても気持ちが収まらない。


何だろうこの気持ち、この高揚感。


今日の俺やっぱり変。


布団を顔まで押し上げる。


寝れない。


もういいや。


開き直ってテレビをつけると

深夜ドラマなのかキスシーンだった。

慌てて消す。


今夜眠れそうにないかも…


久しぶりに動揺していることに

気づいて体が熱くなるのを感じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る