第3話 転校生の秘密

「きりーつ、礼、着席」


 や、やっとだ。今日1日ずっと気になっていた謎が解ける。普段なら苦痛でしかなかった学校も今日だけは、そわそわうきうきしながら過ごすことが出来た。最初こそ、怪しんでいたが、突然来た可愛い転校生、転校生の謎の発言なんて空想、もしくは小説の世界みたいだと私はずっと期待していたのだ。


「来週、大会だよー。先生ピリピリしてるし最悪」


「あはは、どんまい。うち今日休み」


「「じゃあね! 」」


 どんどんと皆が帰っていく。石蕗つわぶきさんは、みんなに手を振り微笑んでいる。正直いうと、ああいうタイプは苦手だ。皆に愛想良くしている人って掴みどころがなくて少し怖いから。


湊月みつきちゃん、みんな帰ったから、説明していい?」


 私は、待ってましたとばかりに頷く。


「湊月ちゃんは、神様って信じてる?」


 ん?な、なんか怪しい匂いがする。これは、いわゆる宗教勧誘とかいうやつですか? こういうのってどう断ればいいんだろ。と、とりあえず逃げる?


「あ、ごめん勘違いさせてる。絶対。宗教勧誘じゃないよ」


 いやいや、勧誘の人は皆そういうんだよ。怖い怖い。私はすぐに逃げられるように揃えていた足を前後にずらす。


「ごめん。どうしても聞いてほしい話だから湊月ちゃんの困惑無視して話すね。端的に言えば、私たちは天界に呼ばれていてもうすぐ天に行く橋が架かるの」


 石蕗さんは、小声で信じてくれないと思うけどと自信なさげにつけ加えた。うん。普通の高校生ならまず信じないだろう。石蕗さんを変な人認定するかもしれない。でも、私は似たような話をおばあちゃんから、聞いていたからもしかしたらと思ったのだ。


「石蕗さん、その天界っていうのは、雲の上で。橋っていうのはもしかして虹のこと?」


 そう尋ねると、石蕗さんの顔がぱぁっと明るくなった。普通にしてても可愛いのにまるで花のような美しさだ。


 私は、おばあちゃんの話と一致しているとわかっただけで、その話をすっかり信じこんでいた。昔っから、日中両親がいなかった私は、私を甘やかしてくれるおばあちゃんが大好きなのだ。そして、同じくらいおばあちゃんが話してくれる不思議な話が大好きだった。


「そう! そうだよ。そして、その虹が架かる予定日が7月16日。716《なないろ》で虹の日だよ。」


 ふむ。虹が架かる日に予定日があるなんて、そしてなんてロマンチックな。でも、それなら7月に転校でも良かったのでは?もしかして私と仲良くなりたかったとか?


「実はね、早く来たのは少し問題があるからなんだけど……」

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