箸休め マーベラスなクモ! ①猛毒を持つクモはウルトラレア!?

※文末に今回の「まとめ」を掲載しています。

 お時間のない方は、一番下まで画面をスクロールさせて下さい。


 ◇前説(飛ばしていただいても大丈夫です)


「JCファーブルの空想特撮昆虫記」には、「クビキリバエ、時々セアカゴケグモ」と言うサブタイトルが付いています。


 そこからも分かる通り、今回のテーマはハエとクモです。


 ハエは誰もが認める嫌われ者で、好きな方はほとんどいません。


 一方、クモは不思議な虫です。


 よく見掛けるハエトリグモを、「かわいい」と言う人は少なくありません。

 洋服の柄やアクセサリーのモチーフとしても、定番の生き物です。

 世界中で愛されているスパイダーマンも、クモをモチーフにしています。


 ◇弥生やよい時代じだいから人気だった?


 ハエやカを食べてくれるクモは、代表的な益虫えきちゅうです。

 農薬のない時代には、田畑の害虫を食べてくれるありがたい存在でした。


 事実、弥生やよい時代じだい銅鐸どうたくには、クモと思われる生物が描かれています。

 この頃には既に、水田でお米が育てられていました。

 銅鐸どうたくに描かれた絵には、当時の人々の感謝が込められているのかも知れません。


 その証拠に、クモの描かれた銅鐸どうたくには、カエルやカマキリ、トンボも描かれています。

 どれも田畑に棲息し、害虫を食べてくれる生き物です。

 現在でも黒いアイツが嫌いな方は、アシダカグモを英雄視しています。


 反面、クモが苦手な方が多いのも事実です。


 アシダカグモは益虫ですが、ビジュアルがキツいことは否定出来ません。

 薬局やホームセンターには、クモを対象にした殺虫剤も置かれています。

 他の虫を食べることから、悪役のモチーフとしてもよく使われます。


 仮面ライダー1号が最初に戦ったのも、蜘蛛男くもおとこです。

 以降もドクバリグモ、クモ獣人じゅうじんと言った怪人が登場し、歴代ライダーと死闘を演じました。


 ◇クモ恐怖症きょうふしょう――アラクノフォビア――


 閉所へいしょ恐怖症きょうふしょう高所こうしょ恐怖症きょうふしょうの仲間に、「クモ恐怖症きょうふしょう」と言うものがあります。

 極端にクモを恐れる症状のことで、英語では「Arachnophobiaアラクノフォビア」と呼ばれます。


Phobiaフォビア」とは、「恐怖症きょうふしょう」を意味する英単語です。


 閉所へいしょ恐怖症きょうふしょうも、英語では「 Claustrophobiaクラウストロフォビア」と呼ばれます。

 ちなみに、高所こうしょ恐怖症きょうふしょうは「Acrophobiaアクロフォビア」です。

 聞き覚えのある方は、あの世でわび続けて下さい。


 一方、「アラクノ」は、クモこうの学名「Arachnida」に由来する言葉です。


 クモこう節足せっそく動物どうぶつのグループの一つで、「クモガタこう」とも呼ばれます。

 もちろん、クモはクモこうの生物です。

 また他にも、サソリやダニがクモこうに分類されています。


 ◇女神アテナはロクでもない! かわいそう? なアラクネー


「Arachnida」と言う言葉は、ギリシア神話に登場する「アラクネー」に由来します。


 アラクネーは布を染める店の娘で、現在のトルコに住んでいました。


 彼女は織機しょっき(糸を組み合わせる道具)を使い、布を作る達人だったと言います。

 名声は国中に轟くほどで、本人も自分の腕に誇りを持っていました。

 かなりうぬぼれの強い性格で、「自分の技術は神をしのぐ」と公言していたそうです。


 この発言を聞いたアテナは、アラクネーをギャフン(死語)と言わせるために勝負を挑みます。


 アテナは主神しゅしんゼウスの娘で、戦争をつかさどる女神です。

 ゲームに登場することも多く、日本でも高い知名度を誇ります。


 アテナは工芸や芸術の神でもあり、布をることも彼女の管轄でした。

 当然、布をる腕も高く、人間に敗れるはずがないと自負していました。


 ところが、アラクネーの技術はアテナの想像以上でした。

 見事な作品を突き付けられたアテナは、負けを認めざるを得なくなってしまいます。


 普通なら健闘をたたえ合うところですが、アテナは非常に大人げない女神でした。


 彼女は神を超えたことに怒り狂い、アラクネーの作品と道具を破壊してしまいます。

 しかもそれだけやっても怒りが収まらず、最後にはアラクネーをクモに変えてしまいました。

 やってることは完全に、将棋盤しょうぎばんをひっくり返す子供です。


 かたきのアテナと同じく、アラクネーも多くのゲームに登場します。

 大抵の場合は敵キャラで、上半身が女性、下半身がクモの姿で描かれます。

 多くのプレイヤーが不気味と思う一方で、魅力を感じる紳士(笑)もいるようです。


 ◇猛毒のクモは激レア!


 ゲームに登場するアラクネーは、よく毒を使います。


 現実にも毒を持ったクモが存在しますが、人間に影響を与えるものはわずかです。


 2019年の時点で、クモは4万8000種ほど確認されています。

 ハエトリグモ「」、コガネグモ「」と言ったグループの数は、119種類(諸説あり)にも達します。


 しかし人間をおびやかすほどの毒を持つクモは、0.2㌫程度です。

 日本にも1700種程度のクモが棲んでいますが、猛毒を持つクモは限られています。


 実のところ、大半のクモは牙から毒を分泌します。

 とは言っても、多くの場合、毒の強さは昆虫を殺す程度です。


 また小さなクモは力が弱く、毒牙どくがのサイズも大きくありません。

 そのため、人間に毒牙どくがを突き立てても、皮膚を貫くことが出来ません。


 ただし、日本にも猛毒を持つクモは存在します。

 何回か後に紹介しますので、どうぞご期待下さい。


 長くなったので、今回はここまで。


 次回はクモと昆虫の違いについて解説します。


 ◇今回のまとめ


 ☆弥生やよい時代の銅鐸どうたくには、クモと思われる絵が描かれている。


 ☆極端にクモを恐れることを、「アラクノフォビア」と呼ぶ。


 ☆「フォビア」とは、英語で恐怖症きょうふしょうのこと。


 ☆「アラクノ」は、クモこうの学名「Arachnida」に由来する言葉。


 ☆クモこうにはクモの他に、サソリやダニが属している。


 ☆「Arachnida」の語源は、ギリシア神話に登場するアラクネー。


 ☆アラクネーは道具を使い、布をる達人だった。しかし腕がよすぎたために神の怒りを買い、クモの姿に変えられてしまった。


 ☆2019年の時点で、クモは4万8000種ほど確認されている。日本に棲むのは1700種程度。


 ☆ハエトリグモ「」、コガネグモ「」と言ったグループの数は、119種類(諸説あり)もある。


 ☆ほとんどのクモは、牙から毒を出すことが出来る。ただし、人間を殺すほどの毒を持つのは、0.2㌫程度。


 ◇参考資料


 クモ学 摩訶不思議な八本足の世界

 小野展嗣著 東海大学出版会著


 西洋神名事典

 山北篤監修 (株)新紀元社刊


 クモの奇妙な世界 その姿・行動・能力のすべて

 馬場友希著 一般社団法人 家の光協会刊

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