第5話_強敵登場_

「ところでごんちゃん、ご両親を探す手段はなにか考えてるの? 」


「……どうしよう、何も考えて無かった 」


 ごん正一しょういちが、里を出立してから数日。

 正一しょういちは、気になっていたことを質問した。

 ごんは頭を抱え悩んでいる。


「そうだろうなと思ってたよ。

 だから屯田とんださんに頼んで、雷人らいじん絡みの団体を、リストアップしてもらった 」


 正一は、大きめの紙を広げて権に見せる。

 そこには、雷人らいじんが関わってる団体の名前や、どこにあるのかといった情報が書かれている。


「それがなんで、俺の両親に繋がる情報になるんだ? 」


「まず一つに、ごんちゃんの両親は“縛られた人生”、望んでいないことを強要された状態ってこと。

 これは、手紙に書いてあった内容だね。 

 雷人らいじんに何かを強要できるのは雷人らいじんだけ、なら雷人らいじん絡みの団体が関わっている可能性は、大いにある 」


「なるほどな! 

 しょうちゃんが来てくれてよかったぜ 」


 ごんは、正一しょういちの肩を叩いてめる。


「あくまで推測だけどね、これが外れても今度は、別のアプローチを考えればいいし。

 それにごんちゃんとしても、こういうのは放っておけないでしょ? 」


「確かにな、悪い事してるやつがいるなら、止めねえと 」


 ごんは、自分の拳同士をぶつけて、闘志とうしを燃やす。

 その様子を見ながら、正一は微笑む。


「まずは、一番近いここに行ってみようか。 

 ほとん虱潰しらみつぶしだけど、とにかく行動してみるのも大事だしね 」


「キビキビと働け、下僕種げぼくしゅども! 」


 発電所に偽装ぎそうされた、宗教団体施設。

 そこでは人間が、雷人らいじんによって奴隷どれいのように扱われていた。


 雷人らいじんの周囲では、強力な磁場により機械は使用できない。

 その為身の回りの世話を、人間を力でおどして強制しているのだ。


「もう動けません。

 お願いです、休ませてください! 」


 風呂ふろかす為に、まきを運んでいた女性が、足をくじき転倒する。

 すぐに土下座して、主に許しを請う。


こわれた下僕げぼくらぬ、ね 」


 玉座に座っていた雷人らいじんが、てのひら帯電たいでんさせて女性に向ける。

 女性が顔を背け、目をつむった時だった。


 壁がぶちやぶられて、ごん正一しょういちの二人が姿を現す。


「宗教団体“天真教てんしんきょう”の支部施設、ここで間違いないみたいだ 」


「そうみてーだな、正ちゃん。

 あんたらもう大丈夫だ、俺たちが助けに来た!

 守ってやるから、早く逃げろ! 」


 ごんが、下僕げぼくとしてこき使われていた人間たちに、声をかける。

 彼らは逃げながら、恐怖きょうふ畏怖いふがない交ぜになったような視線を、ごん正一しょういちに向ける。

 二人はその視線に、少なからぬ精神的衝撃せいしんてきしょうげきを覚える。


「いかんなあ、彼らは神のゆるしを得るため、ここでとうと役目やくめになっておる下僕種げぼくしゅども。

 同じく神の寵愛ちょうあいを受けた雷人らいじんと言えども、我ら天真てんしん使徒しとで無い者に、それを邪魔する権利は無い 」


 玉座に座っていた雷人らいじんが、指を鳴らして他の雷人らいじんを呼んだ。

 扉から、幾人もの雷人らいじんが出てくる。


天真てんしん使徒兵団しとへいだん、神を守る為の精兵せいへいだ。

 彼らの力を知り、我らの教えに恭順きょうじゅんしたまえ 」


 使徒達しとたち陣形じんけいを組んで、てのひらの先から放電攻撃ほうでんこうげきを行う。

 閃光せんこうと、雷鳴らいめいのような爆音ばくおんが、二人を包む。


 光が収まった時、ごん正一しょういちも無傷で立っていた。


放電ほうでん収束しゅうそくが甘いよ、ただでさえ雷人らいじん相手の放電は、効果が薄くなるのに 」


「命中率も低いな、コイツら本当に精兵せいへいか? 」


 使徒達しとたちの間に動揺が走る。


「取り乱すな、ただのせ我慢に違いない。

 しびれて動けない今のうちに、接近戦を仕掛けて捉えろ 」


 使徒二人が、玉座の男の命令に従い、近付いて拘束しようとする。

 正面から近づいて来た使徒を、権は拳で迎撃げいげきし、正一は足を払って転ばせる。


「誰がしびれて動けないって? 」


「せめて全員でかかってきなよ、戦力の逐次投入ちくじとうにゅう下策げさくだよ 」


「ぐう、我ら天真てんしん使徒しと愚弄ぐろうしたつみ後悔こうかいするがいい。

 奴らの望み通り、総員でかかれ! 」


 使徒達しとたちが自身の体に電流を流し、かなりのスピードで攻撃を行う。

 人間ならば、反応できないであろうスピードだが……


「遅いな、鍛え方が足りてないぞ 」


「技もつたない、せめてポジショニングくらい考えたらどう? 」


 誰一人として亜音速あおんそくには届いておらず、ごん正一しょういちには見切みきられる。

 二人の連携れんけいの前に、使徒しとたちは数をかすことができず、瞬く間に倒される。


「見事な立ち回りだ、囲まれぬよう常に集団の外側から攻め。

 かつ倒した敵を、盾や障害物しょうがいぶつとして利用し、不利なポジションを取られないようにしている。

 だがそのような小細工、上位使徒じょういしとたる私には通じぬと知れ 」


 玉座の男は、ようやく腰を上げる。

 そして、全身に帯電たいでんした電気を、てのひらから二人に向けて放電する。


「この程度で終わるようなタマではないだろう? 

 少しは反撃はんげきしてみたまえ 」


「じゃあお言葉に甘えて」


 正一しょういち亜音速あおんそくの踏み込みで接近し、男の鳩尾みぞおちを叩く。

 男は肺から、全ての空気を絞り出される。


「行くよ、ごんちゃん! 」


 正一しょういちは男の腕を掴み、ごんに向けて力任せにブン投げる。

 ごんは、既に球電砲きゅうでんほうの構えで迎撃げいげきの準備を終えている。

 男は、口をパクパクと動かしているが、肺に空気が残っておらず声にはならない。


球電砲きゅうでんほう! 」


 プラズマのかたまりが、男を襲う。

 激しい痙攣けいれんの後、男は顔面から地に落ちた。


「おーい、目え覚ませよ

 加減したから、生きてるのは知ってるぞ 」


 ごんが、風呂場からくみ上げた水を、男にかける。

 男は、既に関節を紐で縛られて、動けないようにされている。


「ふん、この私を負かしたか。

 だが残念だったな、もうじき三大使徒様さんだいしとさまの一人が、この支部を訪れる予定だ。

 私はすぐに助け出され、貴様らもより一層キツイ天罰てんばつを受けることになる 」


「強がり言ってないで、ごんちゃんの両親に心当たりが無いかだけ、言ってくれない? 」


 ごんの顔が見やすいように、正一しょういちは力尽くで男の頭の角度を固定する。


「ふん、私が天真てんしん使徒しとでも無いものの事など

 ……待て、いや待ってください、貴方様はもしや? 」


 男が、何かを口にしようとした時だった。

 ごんたちが開けた穴が、より一層大きく破られ、その穴から縛られた人が放り投げられる。


三大使徒さんだいしと、ポセイドーン様!?

 どうなされたのですか、その姿は! 」


 権の事について質問されていた男が、穴から投げられてきた人物に向かって叫ぶ。

 ポセイドーンと呼ばれた雷人らいじんは、うめき声を上げるばかりで意識があるかも怪しい。


「なんだ、先客がいたのか 」


 開けた大きな穴から、少年が入ってくる。

 少年は、ごんと同じくらいの年齢に見える


「まあいい、どのみち全ての雷人らいじんは殺す。

 俺が手を下す前に同士討ちしてくれたのなら、都合がいい 」


 少年は、全身を帯電たいでんさせた戦闘態勢せんとうたいせいのまま、口の端を上げる。(5話 終)



 次回予告

 大胆だいたんな登場をかまして現れた謎の少年

 否応いやおうなく、権たちは彼と戦うことになります。

 少年の目的はなんなのか?

 そして、権たちは無事に情報を手に入れることができるのか?


 6話目、いよいよ物語が大きく動きます。

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