第44話 対面

「皆さん、雄一郎さんから連絡です、計画変更です、皆さん一緒に来てください、との事です」

リサが雄一郎からの伝言をケン、ジェニー、ヘンリー、佐紀に伝えた。

「それは僕たちも聞いていたが何故計画を変更したんだろう」

「相手を信用したんじゃ無いの」

「僕も信用して良いと思うけど」

「良し、じゃ~皆で行こう、さぁ~準備だ」

ケンの号令で皆が準備を始めた。

4人は宇宙服に着替え気密室に入りリサが内部ドアを閉め気圧を外部と合わせるとリサが外部ドアを開けた。

ドアの内側に着けられたタラップを降りるとやって来た車に乗った。

皆は緊張や不安よりも珍しい車に興味をそそられ車内のあちらこちらを見回した。

窓の外には両側に長い長い壁が続き所々に脇道があった。

窓の外の壁が凄い速さで映り変わり車が凄い速さで進んでいると思われた、だが中に乗る人たちには何の加速度も感じられなかった。

「やはり、この異星人は慣性制御が出来る様ですね」

「その様だね、佐紀ちゃん」

「その仕組みが解ると良いのだがな」

車は円形の広場に着き中央に立つ雄一郎とルイの近くに止まった。

4人が車を降り周りを見渡すととても大勢の異星人が着席し周りを囲み闘技場か会議場の様だった。

正面に7人の異星人が座っていて明らかに周りの者たちよりも重要な人たちに見えた。

一番左の他の人たちよりは少し大きな異星人が立ち上がり皆の処へ歩いて来た。

身体はがっちりしていて服装はダイビング・スーツの様に身体にぴったりとしていた。

その異星人が歩いて来るとどんどん大きく見えて来て眼の前に立った時にとても大きな事を理解した。

何とその異星人は彼らの中で185センチと一番背が高いヘンリーよりも1メートル程も高いのだった。

「うぉ~、デカいなぁ~」

「貴方がたの尺度で言うと私は3メートルあります」

何と異星人が日本語で話をしたので皆が驚いた。

宇宙船で聞いていたのはリサが翻訳したものとばかり思っていたからである。

「何故、日本語が話せるのですか」

「貴方がたは電波を放出し過ぎです、電気が作られてから宇宙に電波が放出され無線が出来る様になってからはその電波に意味を持つ様になり言葉も放出しています、既に100光年以上先の異星人が地球の存在を知っていて言語の解読をしている事でしょう、我々はその一つに過ぎません」

「異星人はそんなに沢山いるのですか」

「我々も全てを知る事は不可能です、ですが我々は我々以外に二つの種族を知っています」

「この広い宇宙にたったの4種類ですか」

「我々の知る限りの事です」

「失礼しました、私達は貴方がたが初めてですから凄い事てす」

ケンが勢いでいろいろと質問を続けた。

「この宇宙船は慣性制御、急に動いたり急に止まったり出来ますね」

「慣性制御の意味は解ります、そうです出来ます」

「その理論と技術を私達に教えて頂けますか」

「基本的には他の文明への介入は禁止されています」

「誰に寄って禁止されているのですか」

「我々の文明の創意に寄ってです」

「お気持ちは解ります、遠い遠い未来に私達も同じ規則を作ると思います」

「只、我々は現在、協議中です、技術と理論を一方的に伝える事は禁止されていますが、交換については決められていないのです、我々の慣性制御と貴方たちの燃焼効率の交換です、まだ、暫くは協議が続く事でしょう」

「燃焼効率は現在も研究中で更に良いものになるはずです」

「それは良い知らせです」

「技術と理論の提供の一番の懸念事項はその文明が悪か善かでは無いでしょうか、私達もこちらの船に乗船する時に最初から全員で来ませんでした、貴方たちが善である確認が出来なかったからです、正直に申せば今も解りません、欺かれているかも知れないからです、失礼ですが、お許し下さい」

「解ります、我々も同じ考えですから、只、貴方たちが善であるとの声が多い事し確かです、この星系の生物に接触しなかったからと言う意見です、反対派は我々の存在に気付いていて接触を断念又は中断したのだろうと言う意見です」

「それについては半々です、接触するつもりはありません、が、観察はするつもりでした、何と言っても初めての異星人ですから」

「本当に観察だけですか、文明への介入はしませんか」

「それ程、確かめると言う事は介入する可能性の高い状況にあると言う事ですか」

今度は雄一郎が尋ねた。

「そうです、部族、国家の間で戦いが行われています、毎日何人もの人々が亡くなっている状況です」

「お父さん、私には解らないわ、自分たちは干渉しないと言いながら監視している、何故かしら」

「お父さん? この人は貴方の子供ですか、頭の良い人です」

「私の娘です、この子の言う様に貴方がたには監視する理由があるのですね」

異星人は後ろへ向き中央の異星人が手を上げて下ろすのを見た。

「あります、この惑星の人たちと我々は先祖が同じなのです、この星系の人たちは移住の人数が少なくて文明を維持出来なかったのです」

「貴方たちもこの星系の人たちも地球から移住して来たのですか」

佐紀が今度は直接尋ねた。

「頭の良い方です、この星系には船団から逸れた一万人程が移住しました、我々は探していましたが長い年月長い世紀見つかりませんでした、そしてとうとう見つけた時には文明が衰退し原始時代になって居ました、我々は協議を重ねました、我々の文明に取り込むか、援助するか、放置するか、そして数世紀前に監視する事に決定したのです、監視のみです、何が起きようと監視するだけです」

「それは、原爆が開発され文明と人類が全滅するとしてもですか」

「はい、検討した時にいろいろな状況を想定し、その場合も監視するだけと決定しています」

「徹底していますね、私には同族人種がボタンの一押しで滅びる場面で止めずに見ているだけで済ませる自信は有りません」

「貴方はてとも正直な方ですね、我々も正直に言えばその状況で傍観するだけで済むのかは問われています」

「現在の状況を我々も観察する事を許しては頂けませんか」

「予想通りの依頼です、我々はその依頼を予想して居ました」

「それで返答はどうですか」

「我々のこの船からなら良いとの決定がなされました」

「ありがとう御座います、駄目かと心配しました」

「この回答については全員一致で貴方がたが善と判断された時は了承と決定していました」

地球人たちと六人の間の床がせり上がり大画面のテレビが現れた。

それは4面に画像が表示されるものだった。

その画面に惑星の画像が表示され、その画像が少しづつ地表を大きく表示して行った。

大陸に幾つかの村や町が見え、その中の一つに焦点が合い、どんどん大きく表示されて行った。

道が見えて多くの人が歩いていた。

「貴方は自分たちと祖先は一緒と言いませんでしたか」

「はい、言いました」

「でも、映っている人達の後頭部が長いですよと貴方がたと同一祖先とは思えません」

「我々は第二世代です、彼らは第三世代です、そして貴方がたは第四世代です」

「第一世代はどうなったのですか、第二と第三に何故これ程の違いがあるのでしょうか」

「貴方がたに考古学がある様に我々もあります、その過程で我々よりも古い文明の遺跡を見つけたからです」

「それは貴方がたが第一世代では無い事の証で有って、第二なのか第三なのか第四なのかは解らないのでは無いのですか」

「その通りです、只、発見した全ての遺跡の年代が同じだったので一世代だけと結論付けられました」

「その時代は解ったのですか」

「はい、我々の時代よりも10億年前の物だした」

「10億年~、凄い・・・凄く古い時代ですね・・・現代からだと何時になりますか」

「28億年前です」

「28億年前に文明があり、貴方がたの文明は18億年前に存在したのですか」

「そうです」

「我々はその時代の遺跡、遺物を何一つ発見していません、本当に貴方がたと我々は同じ惑星を起源としているのでしょうか」

「これが我々が住んでいた時代の惑星の姿です」

画面が地表の様子から惑星に変わった。

「おぉ~、大きな大陸が一つですね、あぁ、もう二つあったのですね」

画面は惑星の自転に合わせて変わって行った。

「兄さん、パンゲア大陸ですか」

「名前は何とでも付ければ良い事だ、常に陸地は移動しているからな、火の玉が徐々に冷えて表面が黒くなって行く、それが陸地だ、火の玉の漂う薄い表面でしか無い」

「その通りです、我々はその大移動が始まった頃に惑星を後にしたのです、ですが全員ではありませんてした、二万人を残し皆が旅立ち、最終的に冬眠に入って残った者は千人でした」

「何故、何人が何処へ旅立ったのですか」

「約150億人が三つの星系の惑星に移りました、移住の理由は極地反転です」

「極地反転・・・地軸が反転・・・150億人・・・一体何隻の船が・・・」

「地軸が反転する過程で太陽からの放射線を防ぐ力が無くなる期間が何百年も続いたはずなのです」

「やはり、地軸反転はあったのですか」

佐紀は考古学文献で見た説が正しい、のかと思った。

「科学技術は発展していましたが、極地反転を防ぐ事は出来ませんでした、反転が終わるまで地下にいる事も考えられましたが放射線を完全に防ぐ事も重力異常に対応する対応策も有りませんでした、惑星から脱出するしか道はありませんでした、現在では完全に放射線を防ぐ事、重力異常に対応する事は出来ます」

「素晴らしい、我々は出来ません、出来る事は大惨事が起きない事を祈るだけです」

雄一郎が相手を賞賛した。

「お父さん、空気の残量は大丈夫???」

佐紀が先に来ていた父・雄一郎とルイの空気残量を気にした。

「おぉ~、そろそろ危ないなぁ~、残念だがそろそろ一度船に戻る時間だ」

「貴方がたの空気は我々の空気より酸素濃度が低い様です、話は通信でも可能です、此れからは通信で行いましょう」

「お気遣いありがとう御座います、そうしましょう、では、船に戻ります」

「では、後程、通信でお会いしましょう」

雄一郎を先頭に送迎用のバスに全員が乗り込み船へと戻った。

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