第4話 作品ディテールの構築~その2 苦労がきらり☆

 ひとまずここまでに決めたことを作品内の時系列に沿って列挙してみましょう。※はレギュレーション指定の内容です。


  葉太と楓子は同じ一族の忍びの姉弟。

  楓子はある理由で葉太をかばい、それが原因で一族と袂を別かった。

  数年後葉太のもとに桜子が弟子入りする。(※)

  葉太、桜子が楓子の実の娘だと知る。

  桜子は、楓子が葉太をかばったことを知らない。

  クライマックスは葉太と桜子の一対一の対決。

  最後大技が決まって桜子が葉太を倒す。

  葉太、真相とともに桜子に言葉を贈って(※)死ぬ。  

  最後、桜子は葉太の言葉で決意を新たにして忍びを率いることになる。


 おお、冷静に並べてみるとお話しになってるじゃないですか!ここでレギュレーションに戻って照らし合わせてみると、足りないのは「公園で桜子に偶然会う」「桜子が悩みを葉太に言う」この二点だけですね。最後の「葉桜に向かって思いを馳せる」のはここでは後回しにしていいでしょう。桜子が決意を新たにするところまで書いてから流れで考えましょう。付け加えるのを忘れないようにしなければいけませんが。


 このあらすじを物語にするために残る重要なポイントは「楓子が葉太をかばって一族を離れた理由」と「葉太と桜子が対決する理由」です。ここがないとお話としては不完全です。

 しかし、この二点、細かく書こうと思うといくらでも細かくできます。これは全部作り込んで話中に書くと長くなってしまいます 。何万字も書く気はありません。筆致企画ですので、だいたい一万字目途で作りたいところです。時間もあるようであまりありませんからね。


 そこで私は「一族の中には一子相伝の妖刀を使う特別な存在の忍者がいた」「楓子と葉太は妖刀使いだった」「楓子は葉太に妖刀を譲った」「桜子も妖刀使いだった」「妖刀を継ぐためには先の妖刀使いを倒さなければならなかった」というストーリーを仮に組んでみました。


 …… お、これ、行けるかも?


 私は手書きのメモに妖刀がからむ仮組の構想をざらざらと書きなぐってみました。その内容は以下のとおりです。


 ===第四案===


 葉太と楓子は同じ一族の忍びの姉弟。忍びの一族のトップは一子相伝の妖刀を使える者だけがなれる。しかし、普段は数十年に一人しか現れない妖刀を使える忍びが同時に二人現れた。葉太と楓子。二人は妖刀使いの座を争って葉太が勝ち、楓子は一族と袂を別かった。


 楓子は一族以外の男と結婚して子をもうける。それが桜子。


 時は流れて葉太に弟子入りする桜子。桜子は楓子から受け継いだ才能で頭角を現していく。桜子は楓子が妖刀が使える技量を持っていたことを知らない。やがて葉太は桜子に告げる。「楓子を追い出したのは俺だ。憎ければ俺を倒せ」葉太は桜子に妖刀を継がせる、すなわち桜子に殺されることを決意していた。


 そして一騎打ち。一騎打ちの中で桜子は葉太の真意に気づく。妖刀で葉太を倒した桜子。死に際の葉太が言葉を贈る。「お前の母は素晴らしい忍者だった。これからはお前が忍びの頂きに立ち、皆を統率していくんだ」「師匠、私がしかと妖刀を受け継ぎます」


 そのまま息を引き取る葉太。桜子は、決意を新たに里の忍びを率いていくのであった……。


 ====


 うむむむ、だいぶできてきました。でもまだところどころおかしい。

 実の姉弟ということは両親も同じ。当たり前ですね。親が妖刀使いだから子がその才能を受け継いだ。これも分かります。しかしそうだとすると、葉太と楓子の親も妖刀使いの忍者だったことになってしまいます。それじゃだめです。同時に妖刀が使える忍者が普段からたくさん当たり前に存在する状況になってしまいます。この作品の中では、妖刀が使える忍者は特別な存在なんです。だから一子相伝。

 あくまで妖刀使いになれる忍者は偶然、一時代に一人現れることにしたい。

 となると実の姉弟ではなくて、単に年が近いだけの男女ということにした方がよさそうです。しかしこの二人同士で色恋沙汰を起こされると話がややこしくなってしまいます。年が近いが、色恋沙汰にはならない。うーん、姉弟がホントは一番いいんですが、血縁はない方が都合がいい。となると …… 。

 検討の結果は皆さまご存じのとおりです。多少無理やり感ありますし、突っ込もうと思えばいくらでも突っ込めるのですが …… 。


 葉太と楓子が妖刀使いの座を争ったのもおかしい。妖刀使い、つまり一族のトップになれなかったから一族を追放される、という掟にしようかと思いましたが、それも説得力に欠けますよね。


 うんうん唸りながら考えたり、ツイッターに愚痴を流したりしているうちに困ったことになりました。


 私と同じぐらいハゲ悩みしていたえーきちさんと蜜柑桜さんが相次いで作品を公開されたのです。しかも愚痴っていたとは思えない別次元の作品完成度!


 これはヤバいです。取り残されてしまいます。本当は全話書ききってから読み直して修正いれた上で公開したかったのですが、もう待てません。私はとりあえず、できたところまで随時公開していくことにして、大急ぎで冒頭の、葉太と楓子が袂を別つまでと、桜子が弟子入りするところまでの二話分を見切り発車で書き始めました。


 本来私は書き始めたら筆は早い方です。正直一万字なら二日あれば書けるものと思っていました。しかも今は在宅勤務中で執筆できる時間はたっぷりあります。


 ところが、そうは行かなかったんですね。


 次回は書き始めてさらに苦しくなる忍者の世界の話です。果たして書ききれるのか?







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る