一言一言に照れるんです

学校に着いたは良いものの、忘れ物しちゃったよ。今日国語あるのに教科書が

無い。どこにも無いよ。困ったときは奏太(かなた)に頼ろう。授業あればきっと

貸してくれるはず。奏太の近くの席って彪月(ひゅうが)君いるじゃん。

彪月君と話せるかも。私も三組だったらよかったのにな。仲いい奏太も、

大好きな彪月君もいるし。何で私五組なのかな。地味に遠いし悲しいな。

来年は修学旅行あるし、彪月君と同じクラスになりたいな。奏太と同じになる

のはついでかな?着いた、三組ここだよね。


扉開いてる、中覗いてみよっと。奏太はいるかな?国語の教科書たからないと

だしね。良かった奏太居た。早速国語の教科書たかっちゃおっと。奏太の席は

奥の方だなぁ。

「奏太おはよう。」

奏太は「あぁ、おはよ。」と私に挨拶する。いつも通りの奏太の様子に安心

した。早く国語の教科書貸してってお願いしよっと。

「ねえ奏太。国語の教科書貸して欲しいんやけど…」

奏太は私の下心に直ぐ気付くからね。今回は教科書だけど、前回シャーペン

借りて悪戯しようとした時はバレちゃったからさ。

「嫌だなぁ。俺が貸してたらお前の忘れ癖治らねぇだろ…」

好感度上げる作戦か。面倒見てくれるのは嬉しけど私は今困ってるんだよ。救い

の手を私に差し伸べて…


「あれ、心陽ちゃん、どうしたの?」

彪月君だ、私に話し掛けてくれたの?何て幸せな日なの、今日一日私はずっと

幸せに過ごせる。

「国語の教科書忘れちゃったんだよね‥」

つい照れくさそうに笑ってしまう。恥ずかしいな、忘れ物しちゃった姿を

晒すなんて。私は恐らく顔が真っ赤だったと思う。彼は笑っている。

「忘れ物は恥ずかしい事じゃないよ。僕の教科書貸してあげるね。」

私にわざわざ貸してくれるの。優しくて王子様みたい。じーっと奏太を見て

思う。奏太もお節介ばっか焼いてないで彪月君みたいになってよ。

奏太は呆れたように私を見る。何か悪い事した気分。

「心陽ちゃん、もうすぐテストだよね。大丈夫そう?」

私を気遣ってくれてるのかな。素直に言っちゃおうかな。あ、彪月君は

頭いいから私が馬鹿で頓珍漢なんて知ったら幻滅されるかも。でも、嘘

吐く方がよくないよね。

「私頭良くないから大丈夫じゃないかも。」

私って欠点多いなぁ。しかも彪月君に二つも欠点がバレるなんて、もう嫌に

なってくるよ。彪月君は何か考え込んでるし、やっぱ幻滅されたかな。

「それじゃあさ、テスト前勉強教えてあげようか?」

神様仏様彪月様だよ。テスト勉強教えてくれるのも有難いし彪月君と一緒に

居られるのも嬉しい。


私が返事をしようとした瞬間に無情に鐘は鳴り響く。

「早く戻らないと怒られるよ。」

彪月君に言われて私は急いで教室に戻る。まだ気持ちが高揚したままでいる

自分が恥ずかしい。教室に戻る間も戻った後も恥ずかしさで狂ってしまい

そうで正気を必死に保った。私を揶揄っているのかな。

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