第1話 これって異世界転移?



 この世界、地球は科学が物凄い発展していると言えよう。

 その陰ですみに追いやられ絶滅危惧種までに落ちた魔術師たちがいた。

 科学的に証明出来ない事象を起こす魔術師を科学者たちは嫌い廃除しようとした。

 また逆も起きたりしたが、元々の魔術師の数が少ない、という事もあり科学はどんどんと発展していった。


 更には、対魔術師用の兵器まで作り出す始末。



 さて、ここはとある山の中。

 周りには人里なんて無く、あるのは大きな研究所のみ。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ。魔術師は死んでしまえぇ!」

「弱いな。ひれ伏させろ

 “‘獅子の大鎌 《leo almunajil》’”」


 その研究所の中で、雨のように銃弾の嵐が降り注ぐ。

 そんな銃弾の嵐を、目の前の蒼い炎で出来た大きな鎌の一振りで消し去る。

 これも魔術による力で、固有魔術と呼ばれ物だ。


 そうだな、そろそろ自己紹介をさせようか。


「私は【星座喰い 《constellations eater》】 天城あまき星羅せいら。お前を今から殺す者だ」

「天城、だと? もしや――――」

「――――そのもしかしなくてもだから安心しろ。怯えろ、ひれ伏せ

 “‘獅子の心臓 《cor leonis》’”」


 オズの魔法使いに出てくる獅子を模して創った固有魔術で、相手が自分に対して恐怖心、またはマイナス的な思考をしていると、そこに漬け込み心を蝕んでく。

 臆病にならずに勇気があれば効果はない……とまぁ、自信家には絶対使えない魔術だ。

 そして、今回の相手にある恐怖心は星羅の親への畏怖と、その子供だからという理由が大きいだろう。

 星羅の両親は2人とも高名な魔術師だった。

 死んでしまったのが、殺されてしまったのが惜しいくらいに。


「復讐は復讐にとどまらず、か」


 相手の顔は絶望に染まったまま動かない。

 恐怖に体を蝕まれて死んでいる。


 星羅は近くに置いてある写真立てが目に止まった。

 この人の妻子の姿が写っている。


「次は俺が殺される番かな」


 星羅のこの人に対する復讐は終わったけど、この人の子供からしてみれば星羅が復讐対象になった様な物。


 魔力はまだ少しだけ残ってるのを確認してから魔力による索敵をする。


「人や悪意のある者の気配は無し」


 殺し損ねた心配も無くなり、帰路につく。



 ※



「うわっ!」 

「なんだここ!」

「どうなってるんだ?」


 何人かが驚きの声をあげている。

 星羅としては、情けないと言うしかない。

 昨日は準備を怠ったせいで身体中が痛くなったと言うのに、今回は他人の魔法にかかってしまう、という。

 昨日今日と災難が続いている。

 石を積み上げて出来た建物で松明による灯があるくらいか。


 とりあえず、辺りの情報を集めるが、何か不自然な物は見つからない。

 いや、1つだけあった。

 空気中の神力が多いんだ。


「“‘ 虚空の尾の檻 《sargas qafas》’”」


 ――――ガチャッ


「よく来て下さいましたました。異世界の勇者……さま?」


 ギリギリ、人が入ってくる前に防護魔術を使えた。

 が、効力が少し落ちている。

 考えるまでもない。

 ここは地球じゃないという事の裏返しなのだから。

 俗に言う、異世界転移ってヤツだ。


「どういう事だ?」

「おかしいですね。多分ですが、巻き込まれたのではないかと」

「なるほど」


 普通に丸聞こえな会話。

 隠すつもりは一切ないらしい。


「オッホン。私はフェルミニア王国 国王のファイナ・フェルミニアだ」

「私はあなた方を召喚した宮廷魔法師のクジュラ・リーデンスです」


 その後に、転移組も自己紹介をする。

 召喚されたのは星羅を含めて7人。

 で、勇者は分かりやすく、右手に金色の紋様が輝いているから。


東雲しののめ真昼まひるです」

「シノノメ・マヒル殿ですね」


 順々に自己紹介をしていくと、王の側近がメモしていく。

 後は面倒だから追々紹介していくとしよう。


「今、フェルミニア王国は、他の国々も含めて魔族によって危機に瀕している。そこで各国は異世界から力を持った勇者を呼んだという訳だ」

「なら、魔族から守れば良いんですか?」

 

 勇者である真昼が代表して答える。


「お願い出来るかな?」

「もちろん。皆もいいよね?」


 そう言って真昼は皆の顔を見る。

 先に、真昼と星羅の関係から説明しておこう。


 赤の他人、以上。


 そう、星羅と真昼は赤の他人。

 たまたま廊下ですれ違った時に星羅は巻き込まれる形で異世界に召喚されたのだ。


「今日は皆さん、お疲れでしょうからまた明日、実力を見せてもらいましょう」


 そう言うと、1人に1人、世話役がつけられ部屋へと案内された。


「はぁー、情けない」


 そんな独り言を漏らす。

 星羅はまず、持ち物の確認をする。


「武器用の噐晶石きしょうせきが21個、と」


 噐晶石は魔力を流すと形を変化させる特別な石の事で、他にも魔力を流すと燃えたり光ったり色々な物がある。

 それらの総称を噐晶石と呼ぶ。

 その噐晶石はパチンコ玉くらいの小さな形をしている。


「後はいくつかのスクロールか」


 ――――トントン


「は、はい」


 星羅は急いでそれらをポケットにしまう。


「星羅?」

「なんだ、あかりか」


 西條さいじょうあかりは星羅の幼馴染みで、巻き込まれた唯一の知り合いだ。


「どうしたの?」

「いや、知り合いが星羅しかいないから」

「真昼とは?」

「な、何度か喋った事はあるけど」

「とりあえず今日は寝たら? じゃないと明日から辛いかもしれないよ?」

「で、でも」


 ここで星羅は思い出す。

 灯は場所が変わると眠れなくなる事を。

 そして、


「こ、こんな事を言うのはおかしいかもしれないけど、さ」

「嫌だ。高校生だよ? わかってる?」


 灯は星羅に対して何度も恋愛感情を抱いている。

 それを知るたびに、精神系の魔術で他の人を好きにさせ続けているのに、気がつくとまた、灯は星羅に恋愛感情を向けているのだ。


「だめ?」

「はぁー、わかったわかった。寝るまで灯の所にいてやるよ」


 そう言うと星羅は渋々立ち上がる。

 そして、灯の部屋に向かう途中、世話役を捕まえて一緒に来てもらう。

 もし、後々何かあった時に逃げ道を用意するためだ。


「てか、他にも女子が来てたんだからそっちに行けば良かったじゃん」

「でも――――」

「――――でもじゃない」

「だって――――」

「――――だってでもない」

「うぅぅう」

「唸ったって何にもないよ」


 それから灯の部屋で星羅は魔術を使って寝かしつける……否、無理矢理眠りにつかせた。


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