国の現状

「この後、城で報告会があるんだが、付き合ってもらうぜ?」

バレスは笑ってそう言ってくる。


「はぁ...なんで私が同行する必要があるんだ?」


「なんでってそりゃあお前、俺らのとこの一番の活躍者っつったらお前だからだよ」

ガハハと盛大に笑っているバレス。

この状態のやつは大抵断ってもしつこく誘ってくることは経験を持って知っている。


「わかりました。行きましょう」

内心ため息ものだ。


「おう、言ってくれると思ってたぜ!相棒!」

いつの間にか相棒にされているが、

わざわざツッコム様な場面では無いためスルーする。


「いい判断だ」

突然、漢の目になり、妙にカッコよく言ってくる。


イケメンという訳でも無いのに、

何故か女性からの声が多いのはこの漢の魅力が原因なのかもな。



気分が重くなってきた。

絢爛華美な王城に、鋼のフルプレートアーマーを着けた二人の門兵。極めつけは天使の様な笑みを浮かべる中年太りの男だ。

男は開口一番、

「よくやってくれた!」

そう言って頭を下げた。


「王、今はそんなことをしている場合ではありません」

誰だこのイケメンは!

と声をあげたくなるような漢が横から王に声をかけた。


よくよく見ればそれはバレスだった。


「そ、そうじゃな」

そう言って王は立ち上がり、

「謁見の間に来てくれ」

そう言い残して城の中に消えていった。


「よし、行くぞ相棒」

「はい」



随分と質素なのだな。この世界の王族は。


通された謁見の間には大きな円卓テーブル以外何も無かった。

本来あるはずの玉座や、数多の骨董品、それらの姿は欠片も無かった。


「気になるか?」

目の前、王が問いかけてくる。

「少し気になりますね」


「そうか、では話すとするか」


始まりは突然だった。突然平和だった空の色が赤黒く染まった。

異常気象の前触れかと思い、

一応対策するようにしていたが、

それは異常気象なんてものでは無かった。

災厄。それが相応しい名だと思った。


空から落雷が降ってきたと思えば、そこには魔物の軍勢が総勢2万程。

即座に騎士団を向かわせたが、

ここ──王都以外の街を守ることはできなかった。

だが、それでもマシなのだとつい最近わかった。

他の国は、全て飲み潰されたらしいからな。


それ以降、王都を拠点に、探索を進め、徐々に生活出来る範囲を広げようとしてきた。


だが、それはできなかった。

王国騎士団の総数は最初の2万の魔物との戦いで、8万を2万にまで減らしていた。


さらにこの国は大きな天然の防壁があるわけではない。

よって四方へ騎士団を派遣しなければ簡単に潰れてしまう。

数少ない騎士団を更に減らす。

これによって領地拡大は現状かなり厳しくなっている。


そして、遠征ということは当然食料やらなんやらが必要になってくる。

その資源を得るためには金がいる。

結果、王城内の全ての物を売り、金銭を獲得し、その金で準備等を進めている。


「なるほど...」


「そんなギリギリの時に現れたのは君だ。

聞いた所によると、君は魔物の指揮官を一撃で倒したそうではないか!」

興奮気味にそう言い放たれる。


「その力、どうやって身につけたのか、出事は何処なのか、そう言ったことは一切問わない。代わりに、この世界を、元の明るい世界に、戻してくれないか?」


必死に懇願してくる。

机に頭を擦りつけるほど頭を下げ、一生懸命頼んでくる。


「もちろんです。私もこの世界を救う理由がありますので」

一国の王にそこまでさせたら、断れる訳ないじゃないか。


「ありがとう...。あ、自己紹介がまだだったのロールマン・スティンガーだ」


「ルークスとお呼びください」


「では頼んだぞルークス」


「はい」


現状、何をすればこの世界を救えるかわからない。この世界を滅亡の危機に追いやっている原因も、何かわからない。


だから、できること、可能性のあることを全て試してみる。

そうすればきっと救う方法が見つかるはずだ。


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