留学生 ジョン

第45話 留学生が来るぞ

「おはよう、なんだか騒がしいわね」


 桜子がヒロと一緒に通学するとクラスがざわざわしていた。


「アメリカから留学生が来るんですって。欧米は9月から新学年だから、この時期になるのかな」

「多分そうだろうな」

 きよと真太郎も詳しいことは知らないらしい。


「どんな方なのかしらね?」

「俺の友人だ」

「ヒロの?」


 桜子との毎日に浮かれて完全に忘れていたヒロだった。


「名前はジョン。俺がガキの頃から地元の工業大学に入り浸っていたようにジョンも地元のプリンセストン大学に入り浸っていたんだ。年齢が近いこともあって、よくチャットしたりオンラインゲームで対戦したりしていた」


「じゃあ留学のことも聞いていたの?」

「ああ。桜子と付き合い始めて毎日が楽しくて忘れていた」


「プリンセストン大学って物理や数学の分野で世界トップレベルの研究者を排出していたな。うちの領地とも交流があるはずだ」

「常陸領つくばの研究所ね」

 きよと真太郎はヒロのお花畑発言をスルーした。


「どんな方なの?」

「数学の天才だな」

「ヒロとは興味ある分野が少し違うんじゃない?」

「ああ、俺たちは専門が違うからチャットの内容はジョンが好きな釣りの話や、俺が好きなゲームの話が多かったな。ゲームはジョンも大好きだし。ジョンは俺があんまり興味ないアニメの分野も詳しい」


「領地の話はしないの?」

「ジョンは領主の息子じゃない。ただ才能を買われて幼い頃から地元ニュージャージーの領主には目をかけられているようだ」


「この学園は領主を育成するカリキュラムが特徴だから数学に関してだいぶ物足りないんじゃないか?」

 留学の目的が分からないという真太郎。


「ジョンは琵琶湖で釣りをしたいと言っていた。あと毎年日本で開催されるゲームの世界大会へのエントリーが目的らしい。短期留学なのにやりたい事が多すぎて忙しくなると言っていたな」


「清々しいほど、この学園に興味が無いのね」

「興味ゼロって訳じゃ無いらしいぞ。歴史の古い国の伝統的な学校に通ってみたいとも言っていたからな」

「アメリカ人っぽい理由だな」


「それに普通の学校生活を送ってみたいとも言っていた。あいつは天才だから普通の学校に通ったことがないから制服が楽しみだって」


「いつ来るの?」

「来週だな。うちに滞在するから」


「ええええええ!!」



 桜子との毎日が楽しくて忘れていたと他人事のようだったがヒロは関係者だった。

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