付き合い始めは楽しい

第37話 コバたんの葛藤(コバたんside)

── 認めたくないッポ


 コバたんの天敵、ヒロが桜子にこくった。こくるつもりは無かったようだが結果的にそうなった。


 思わず自慢のクチバシでヒロを攻撃したがヒロの先輩たちに確保され、別室で話を聞くことになった。


── 身の毛がよだつ恐ろしい話だったッポ



コバたんが回想する。


「コバたん、コバたんが桜子さんを溺愛しているのは知っているわ」

「ええ、誰の目にも明らかよね」

「とても尊いわ」

「でも、その愛情が桜子さんを不幸にしてしまう可能性が高いわ」

「ク、クポ!?」


── 思いもよらない話だッポ…


「コバたんのお眼鏡に叶う男性は今後、桜子さんの前に現れるかしら?」


── それは無いッポ!

コバたんがフンと鼻を鳴らす。


「そうなると桜子さんは一生独身ね」

「栄光ある武蔵領の血筋を途絶えさせた領主として永遠に記録に残るのね」

「一生、肩身の狭い思いをして生きていくのね…」


「ク、クポ…」

── 弱気にならざるを得ない指摘だッポ


「世間は独身女性に対して残酷よ」

「行き遅れだの、貰い手がなかっただの、桜子さんに落ち度があるかのように噂されるでしょうね」

「クポー!!」

── 桜子を侮辱するのは許さないッポ!


「事実と違っていても、世間はそう見るのよ」

「ク、クポォ…」


 涙目のコバたんがヘナヘナと両膝と両翼を地について震える。


「それに…気づいているんでしょう?」

「クポ?」

「桜子さんもヒロさんに恋しているって」


「クポー!!」

 コバたんが駄々っ子のように頭をぶんぶん振る。


「コバたん、桜子さんはいずれ結婚するわ」

「それは受け入れなければならない未来よ」

「ク、クポ…」

 コバたんががっくりと肩を落とす。


「問題は、そのお相手ね」

「クポ?」

「いま現在の桜子さんの気持ちを尊重するならヒロさん」


── 気に食わないッポ!


「桜子さんは幸せになるわ。なぜなら桜子さんがヒロさんに恋しているから」


── 認めたくないッポ!


「将来性もあるわね」


── ポ?


「ヒロさんはヘタレだけど優秀よ。春狩領の将来性もかなりのものよ。桜子さんのパートナーに相応しいわ」

「それに隣り合った領地よ。何代も続いてきた武蔵領と春狩領の同盟関係は強固なものだし、過去にも婚姻の事例があるわ。お互いの領民に祝福されて桜子さんは幸せでしょうね」


「ク、クポ〜」

── それを言われると弱いッポ


「それにお互いの領地が近くて行き来が楽よ、桂子かつらこ様もお喜びね」


── 桂子かつらこといつでも会えるのは桜子にとって重要ッポ


「それに結婚年齢には、まだまだ時間があるわ。ヒロさんより相応しい男性が現れたら、その時に改めて邪魔したらいいのよ」


── ………それもそうだッポ!



コバたんが涙目でヒロを睨む。


── とりあえず仮の相手として認めてやるだけッポ!

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