第12話 告白と本心

いやあ、本当にびっくりした。まさか中学のころから美結が俺のことを好きだったなんて。たしかに今思い返してみれば、かなり積極的に話してくれていたし、けっこうアピールしてくれていたのかもしれない。さっきお詫びの話をした時に、毎日電話することになったのも実は俺のことが好きだからなのだろうか。でも、美結が俺と仲良くしてくれているのは、幼なじみで昔から知っているからだとばかり思っていた。まさか好きだからそうしてくれているのだとは全く考えてもみなかった。


「人に好かれるって、案外嬉しいもんなんだな。」


しかし、俺はどうなんだろうか。美結は俺のことを好いてくれているが、俺は美結のことを異性として好きなんだろうか。たしかに美結は俺にとって大切な存在だし、感謝もしている。それにかなり可愛いと思う。でもそれは幼なじみの美結に対する感情であって、女の子としての美結に対する感情ではないような気がする。こんな曖昧な気持ちのままで付き合ってしまったら美結を悲しませるんじゃないか。でも友達の延長みたいなカップルもいるって聞くしな…


「うーん、どうしたもんかな」


つい声に出てしまう。


「えーくん、待たせてごめんね。」


「ふおっ、おう、大丈夫。」


美結の声に驚いて変な声が出てしまった。


「あっ、あのねえーくん、さっき茜がその…私のこと言ってたじゃん?」


美結は顔を赤らめながらも真剣な表情で続ける。


「あれ実はほんとなの。私、中学の時からえーくんのこと好き。」


「いまも…だよな。」


「うん。」


「そっ、そっか…その、あり、がとう。」


俺の発したありがとうは今までにないくらいぎこちなかった。さっき上山から聞かされてはいたものの、改めて本人から言われるとまたドキッとしてしまう。チラッと横目で美結を見ると、顔を真っ赤にさせてうつむいている。その姿も本当に可愛い。でもこれは付き合うか付き合わないかって返事をした方がいいのか?正直俺には付き合う資格があるのか分からない。今は美結に正直にそう伝えよう。そう思って口を開いた瞬間、


「待って!ごめんね、えーくん、まだ返事はいいから。まだ私聞けない…ほんとはまだ告白するつもりなんてなかったんだもん。えーくんもびっくりしたよね、ごめんね。」


俺が話し始めるのを遮るようにそう言った。そうか、美結も俺と同じで気持ちの整理がついていないんだ。今すぐ返事をしなくて良いことが分かると内心ほっとした。


「じ、実は俺もどうしたらいいか分からなくて、美結の気持ちはすごい嬉しいし感謝もしてる。でも、昔からずっと一緒にいるから、付き合うとか付き合わないとかそういうのはまだ分からない…」


俺も本心を話すと、


「正直な気持ち話してくれてありがと。」


と言ってくれた。


「じゃ、じゃあ帰るか。」


「うん、帰ろっ。それでさ、えーくんお腹は大丈夫だったの?」


あれ、病院で診てもらった時、先生なんて言ってたっけ。全然思い出せない。


「…先生がなんて言ってたか忘れた。」


「ええ?!それって病院来た意味ないじゃんっ!あっ、もしかして私のことが気になって先生の話全然聞いてなかったとか?」


「そ、そういうわけじゃないって!」


「えー、嘘でしょー?絶対そうじゃん。えへへ。」


はい、嘘です、ほんとは気になりまくって先生の話なんてなんにも聞いてませんでした!だなんて恥ずかしくて言えない。


「なに笑ってんだよ。」


「えー別にー。ふふ。」


よかった、もういつもの美結に戻っている。なんだかんだで一件落着か。なんか疲れたな。まあでも楽しかった。

きらめく夕暮れの中を二人並んで歩いた。

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