#3.5

#3.5


セキュアが怒ったような顔で私を見下ろしていた。


「何勝手に落っこちているのよ。」


「それが一番よかったのよ。」


「なんでこんなに選択肢出しているのにそんなことするのよ。」


「じゃあどうすれば良かったのよ。」


涙が溢れた。開けっ放しの蛇口みたいにドバドバと溢れた。止まらなかった。


「こんなふうに思ってしまうなら、出会わなければよかったのかな。」


「ここまで来てそれを望むなら望み通り飛ばしてやる!」


叫びに近い声だった。


「セキュア……?」


セキュアは私のことをきっと睨むと、手にした鏡を勢いよく投げつけてきた。避けるまもなく鏡は私にぶつかる。



冷たい、もう何度も経験した、鏡を通り抜ける感覚がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る