聡によるゲーム風別√の提案と前半考察

 ここには、作者自身が2周目の読者のつもりで考えた前半部分の考察を、本編の合間にメモ風の日記を付けていた聡達に話し合わせる形式で執筆しました。


 勿論、作者側には全ての事情を把握しているという地の利が有りますが、本作の世界観は等身大な勇者の御二方と主人公の性格以外は初手と言う事で全体的にセオリー通りで分かり易いので、皆様もこの上を行く考察を目指して熟読して下さいね♪



 ちなみに、作者は恋愛ゲーム好きならルミナス√の流れは当初から推測できる筈と考えていました。 幼少期の回想の内から美麗幼女に興味を示し、本編の旅路でもひたすら小型種と柔和なお姉さんに肩入れしながら終盤までに賛同者を特定すると言う動きは、どう見てもその傾向の隠しキャラの√を目指していますからね。


 振り返ると、何種類もの立場の人物が短時間で話を纏める終盤は難読ですが、ルミナスについては恋愛物に明るい方がルリス(またはサニアとシャンナの関係)を中心に過去の出来事を推測すればストーリーラインも考えられる筈ですし。

 それでは、12話の続きと言う事で聡目線をしている考察回に入りましょう!



 あの日から、僕は今回の旅路に存在したであろう他の可能性について真剣に考えていた。 と言うのも、シェリナさんの国に降り立ちセフィリカさんと深く関わった僕の歩き方は、マルチエンディングのゲームで例えると最も優しい世界が演出される√[ルート(進み方)]の筈だからね。


 まず、こう言えば分かる筈だけれど、あの旅路には2つの運命の分岐点が有ったんだよ。 それは、初めにシェリナさんの国に降り立つか小蔭ちゃんの国に降り立つかの判断と、中盤つまり8章までに魔法具の過剰生成疑惑の首謀者と賛同者を特定できるかなんだけれど、本題に入る前にこの内の後者はシェリナさんの国に降り立った場合の話で、小蔭ちゃんの居る東洋怪異側に降り立ったら、もっとダークな御話になっていた可能性も有った事を先に伝えておくよ。


 各々の進み方に名前を付けるとしたら、1サニア&ルミナス√ 2セイレーン救出√ 3二人の調停者√ 4英知の暗躍者√と言った所かな。

この内、1の√はシェリナさんの側に降り立った上で、セフィリカさん関係の謎を解くために小蔭ちゃんよりもサニアちゃんを優先した結果、セフィリカさんの祖先を讃えていてサニアちゃんと似ているあの子が後半の重要人物になる僕の進み方だね。



 2のセイレーン救出√と言うのは、僕が小蔭ちゃんと繋がりの有る事が各国を回っているシュクレに伝わっていない条件下で、魔法具の過剰生成疑惑の首謀者と賛同者の特定が難しい場合だから、小蔭ちゃんと一緒に小型種の連立国に進んだ場合以外の進み方だね。


 この条件だと、東洋怪異に疑念の目が向いて数カ月経っても何も粗が出ない結果、スノードロップがあの事を教えていた筈がないシュクレやサラマンダー辺りが彼女等から見ても強国なプレシアを疑い始める筈だけれど、そうなると汚名を晴らそうとするあの子は、あの時に知った首謀者と賛同者の事を皆に話すか僕に尋ねる筈なんだ。


 でも、そんな事をしたらフェアリー達にも戦火が及び兼ねないから、この状況に立たされた人ならこれを引き合いに出してでもセフィリカさんから全てを教わる筈だし、彼女もそんな状況は重く受け止める様な人柄だから、アスピスが東洋怪異に技術協力という体裁の賠償をした上で全てを話してあの国の大型種にそれ以上の志願兵が出るのを食い止めるだろうし、シェリナさんも難しい情勢の中で戦火に巻き込まれなくて済むという、文字通りかつ筋の通る救出√だね。

 とは言っても、この世界の人達は勘が鋭い以上に優しいから、一年もしない内に不幸な行き違いだったと許し合える筈という点もセイレーン救出√らしいんだけれど。


 ちなみに、主人公がこの√に入る様な勘よりも熱さが売りの人の場合、プリバドの森であの子から魔力の実を6個貰ったらその内の2個を返さずに喜んで受け取る筈だから、ツリピフェラちゃんとの関わりが殆ど無くなる都合上、この√は硬派寄りな外交物になるとも僕は思うんだよ。



 次に、小蔭ちゃんの居る東洋怪異側に降り立った上で、あの子を連れてシュクレ側を目指した場合の割と閲覧注意な進み方だけれど、この場合は僕が小蔭ちゃんつまり東洋怪異の関係者である事が全く悪気の無いシュクレ伝いに全国に広まる訳だから、その僕が東洋怪異は無実だと言ってもプレシアを含む強国の市民には信用されなくなる上に、東洋怪異から疑われている筈のアスピスの国境もシェリナさんやフェアリーの国の仲介無しには関われない程厚くなる訳だけれど、あの国からの出発だから木本プリバドがあの呼称で怖れられている事も開始直後に知らされるという、ダークファンタジーな導入になった筈なんだ。


 勿論、シュクレ越しにサニアちゃんの協力を得られれば、僕が事前にこの世界の内情を知っていた暗躍者である可能性は否定できるけれど、どの道各国の市民からの蛇姫様への疑念は解けないし、その中で東洋怪異の潔白を証明したらプリバドや中堅国家に疑念が向く可能性も有る訳だから状況は非常にまずいよね。


 そう考えると、各種族が7割程と仲良しで3割程と仲の悪いこの世界の人達の光に焦点を当てた1の√は抑止力や疑念が出て来る割には優しい世界だった訳だけれど、その闇に焦点を当てたこちら側の後半は3二人の調停者√か4英知の暗躍者√になるのが妥当なんだ。


 この時点で何でそう言い切れるのかまでは分からなくても、この内の主導者が僕と木本プリバドである事が分かると言うのは、もはやその精霊界に付いて行く上での前提読解力だろうね。

 疑われ易い大国の潔白は大国自身では証明できないし、それ以外で全国に中立な立場から明確な影響力を与えられるのは内向きな木本プリバドの手を引いている部外者だけという事が一人称視点の説明少なめでも分かる様な人が対象になる訳だから。



 一般に無個性(普遍性)を目指すと言われる文学風に表現すると、要はこの両者の違いは力の有る大国が首謀者では無さそうな時点で、下手に技術の武装応用を各自で疑い合う事の方が世界に危険を招き兼ねないという真理が、各国の市民に理解されるかどうかの違いなんだよ。


 僕自身、異世界に残るか帰るかの判断を想定する中で今まで何度も考えて来た事だし、これはAのルミナス√の終盤でも改めて実感した事だけれど、多くの真理や合理性って追究する程優しい世界から遠ざかるものなのかも知れないね。


 ……数日前にこうやって振り返ってみた結果、僕は今ここに有る幸せを本当に大切にして行かないといけない事を再認識すると共に、この中のB.セイレーン救出√を導ける位の判断力や愛情を皆と共有しておいた方が良い事にも気が付いたんだよ。


 格好を付けるつもりは無いけれど、これが今日僕が皆に考察会を提案してみる事にした真面目な理由なんだよ。



聡「あの一件も一段落した事だし、ここで一つ今までの事を振り返る考察会をしてみようよ」


 皆がプレシア城の自室に集まった所で、僕はあの日の様に話を振った。


サニア「それも良いわね。 今後の参考になると思うし」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


 やっぱり、この子達が味方をしてくれると心強い。


ラフィール「それじゃあ、考察会の始まりなの!」



第一章について


聡「冒頭は丁寧に紹介したつもりだけれど、僕が残ったこの世界の2週間置きが地球側での1週間で、こちらの吉日と向こうの日曜日が対応していた事や、時間の速さに対する人々への影響が少ない事に関しては、異世界なのだからと納得するべきなんだろうね」


シェリナ「そうですね。 西洋同士と東洋同士で、言葉まで一緒な位ですからね」


 もしもこれが100%の物語だったら、精神的な成長が早い古風な女性と、それ程ではない現代の男性との差を埋めるための調整や、僕がこちらに定住した際の思考時間の確保がこうした主な理由になるのだろうけれど、勿論その場合には年下の女の子をヒロインとする目的も含まれる筈だよね。


 これは当事者起点の実写の様な物だから、そう言った打算よりも異世界らしさから元々そう言う物として構築されていたのだろうけれど。



サニア「それでも、向こうに居る人達が早く成長する様になっていた事に一番感謝しないといけないのは、きっと私よね」


聡「そうだね。 シャンナさんに慣れた今の僕なら大人になったサニアちゃんも見てみたいけれど、序盤の僕にはハードルが高かったと思うからね」


シャンナ「後一年もすれば身長は追い付く訳ですし、サニア様も可愛い聡様に甘えさせて差し上げると良いですね♪」


マリアンナ「それは良いですね! スノードロップで私にして頂いた様に、サニア様にも甘えて差し上げれば、きっと喜んで頂けますよ♪」


サニア「あら、そんな事が有ったのね」


シェリナ「あらあら、御主人様は本当に女性が好きなのですね♪」


 この場合の女性が女性的な精神性を意味する事は、僕等の間では暗黙の了解だね。

 精霊界は、メンタル清楚お姉さんと幼女が1/3位ずつ居る柔和な世界な訳だし。


ツリピフェラ「そう言う事なの」


シャンナ「でしたら……」



聡「それじゃあ、シャンナさんには、耳かき動画みたいにして貰おうかな」


シャンナ「あらあら、御主人様も甘えたかったのですね♪」


聡「そうだね。 こっちに来てからはいつも立て込んでいたし、こういう時は僕も積極的にリクエストして行った方が、皆にも張り合いが有ると思うんだ」


シャンナ「本当に、貴男は女性に理解の有る御方なのですね♪

 それでは、この魔法具でして差し上げますから、ベッドに横になって、私の御膝におねんねしましょうね!」


聡「御願いするよ」


 彼女は、振り返り際に壁側の魔法具から木位の質感のゲル風の耳かき棒を出現させると、セイレーンローブを専用の洋服掛けに預けてベッドに横になった僕の頭を優しく受け入れた。


マリアンナ「御主人様は私達の恩人ですが、聡様を見ていると、やはり可愛いという印象が先行してしまうのですよね♪」


小蔭「お姉ちゃん……魅力凄いの」


 二人に髪を撫でられて、僕はすっかり安心してしまう。


ラフィール「中型種の特権なの♪」



サニア「シャンナはプレシアだけれど、大筋は当たっているわよね。

 それにしても、こんなに安心し切った御顔をして……そんなに二人の愛情が嬉しいのかしら?」


聡「そうだね。 僕等の世界に居た頃は、中々こう言う事はできなかったからね」


マリアンナ「嬉しそうで何よりですが、私達がこうして幸せに暮らせるのも、御主人様がこの世界に残って下さった御蔭ですよね」


シェリナ「聡様も、これについては迷ったでしょう?」


聡「その事なんだけれど、実は僕は全く迷わなかったんだよ。

 どの道、向こうの世界には外見の違いから差別される大型種や小型種は連れて行けないし、体格差の少ないシェリナさんやマリアンナさんも向こうの個人主義な女性達とは馬が合わないだろうからね」


サニア「要は、民意や治安以前の問題だったという事ね」


聡「勿論、あの時にサニアちゃんやツリピフェラちゃんが僕に帰らない様に促したのは、辞書の言葉から治安の悪さを、僕との会話から民意の低さを理解していたからだと知ってはいたのだけれど、僕の居た国は人口の多くが近い人種で構成されている位だからね」


 勿論、向こう側の人達にあの挑戦状を見せた上で公式に行方不明として認めて貰えないと、僕がこちら側に定住した時に向こうの皆に他の可能性を心配させる事になるのは、数日前の会話からこの子達も理解している筈だけれど。



サニア「プリバドで例えると、人口の多くがラミフロルスさんの仲間みたいな大勢たいせいなのね。


 聡お兄ちゃんが話した様な人達が、自分自身の物ではない強大な力を持ち合わせた上でそんな事を始めたら、多少の不条理は仕方ないのかも知れないわね」


シェリナ「気付きませんでした」


ツリピフェラ「ゆがんだ国境線なの」


聡「それでも、こちら側は向こうとは切り離された平和な世界だからね。 これまで部外者だったルミナスさんとも和解できた訳だし、もっと明るい御話をしようよ」


小蔭「それもそうなの♪」



サニア「まあ、聡お兄ちゃんを見て来た人達にあの挑戦状を流せば、後は御察しな訳だし……次の部分に進みましょうか」


聡「そうだね。 ところで、大地や湖から取れるマナに対して生成されるオリハルコンの量が多い事は、芸術展の時に見た様な東洋怪異産の計測器具と貿易用のミックスフロートを見れば分かるとしても、どうしてシェリナさんは向こうの人間がこちら側に来ると魔法の適性が与えられる事を知っていたの?」


シェリナ「それは、古文書に書いて有ったからです。

 アスピスが建国された時期にルミナスさんが聖女とたたえていたその女性と恋仲になった男性は、聡様の様にこの世界に来てから魔法を覚えた人であった模様です。

 元々ロウやカオスとは御主人様の世界の言葉の様ですし、エンジェルは天界から多くの世界を見下ろして来たと言っていましたからね」


 本当は天界の言葉の筈だけれど、辞書にも載っている訳だから、シェリナさんがそう思っても無理はないね。



サニア「たまたま降り立つ事になった別の世界で恋人ができても、違和感は無いという訳ね」


聡「それじゃあ、カオス・エンジェルって人間の恋人とも安心して暮らせる場所を求めてこの世界にやって来た、スノードロップみたいな性格の天使と、その賛同者だったんだね」


マリアンナ「通りで、ルミナスさんも先人の肩を持とうとしていた訳ですね♪」


ラフィール「ああ、そう言う事だったの♪

 エンジェルって、意外と良い人達なのね!」


聡「そっか。 彼女等とは接点が無かった訳だから、そこも意外なんだよね」


サニア「まあ、当然よね。 それじゃあ、次を読みましょうか」


聡「そうだね」



第二章について


聡「僕が回復魔法の適性を持っていた事や、この系統が信仰魔法と呼ばれる事については持ち主の性格を考えれば分かる話だけれど、セイレーンの衛兵が今思い返すと槍みたいな大剣を持っていたのは、やっぱり対プレシアを意識しての事なのかな?」


シェリナ「そうですね。 プレシアには水魔法は効きませんし、中量までの斬撃や刺突では、文字通り歯が立ちませんからね」


聡「例えるなら、元々水に二段階抵抗を持つ種族が水耐性強化の第二補助魔法を持った事で無効化の三段階抵抗になっている上に、ドラゴンメイルは刃物を通さない性質から斬撃や刺突にも二段階抵抗を持っている様な話だね。

 その割に、内部損傷系の打撃には一段階抵抗が限界と考えれば、セイレーンも重量を利用した打撃特性を持つ大剣みたいな物を持ち始める訳だよね」


サニア「的確な例えね。 重量物の叩き付けは、防ぎ様が無いですもの」


ツリピフェラ「同感なの」


シェリナ「そこには、ツリピフェラちゃんも同感なのですね」


マリアンナ「理論上、フェンリルも効く位ですからね♪」


聡「スノードロップの攻撃が通るって言うのは、あまり参考にならないね。 フェンリルは中型種でも扱える様に作られた、打突特化のドラゴンアームみたいな物だし」


サニア「それもそうね。 古来生物特効とは、良く言った物ね」


小蔭「小蔭には、良く分からない世界なの」


ツリピフェラ「そう言う事かも知れないの」



 とは言え、あれらは極太の木刀と魔道属性器版の棒術スコップ位性質が違う物なんだけれど。 勿論、あの形状だと点で当たる分後者かな。


 あれは突撃できる対称形という隙の無さから両端を重くできたのだろうし、持ち手からの短さから体感重量以上に横殴りの威力が出ない事には、衝突の反動を利用した左右打撃と重量化により埋めている。


 あれは、人間用の大剣よりも1.5倍は重い筈だね。

 重量に対して遠くを狙う必要が無い魔道武器で切れ味不問だし、そもそも重装備の亜人が扱う前提のフロート突撃武器だよ。


 打突という意味ではドラゴンアームも打撃型の両刃剣だけれど、あれの突撃も下腕部用の腕盾位ならどこぞのドリルみたいに角度をじ曲げながら押し込んで来そうだね。

 セイレーン以外の全員が盾を装備しているこの世界に合わせた構造なんだろうね。



サニア「それにしても、どうして私と聡お兄ちゃんは、こんなにも性格が似ているのでしょうね? ……気が合うという域を、軽く通り越していると思うのだけれど」


聡「性格は、小さい頃の印象深い経験にかなり依存するからね。

 湖越しの出逢いは勿論だけれど、僕の場合は小蔭ちゃんとの経験、サニアちゃんの場合はフェアリーとの距離感やロリポップちゃんとの関係が大きいと思うんだよ」


ラフィール「ああ、それで似た者同士なのね♪」


シェリナ「二人を見ていると、中型種の様な女性的な気質も含まれると思えますがね」


サニア「まあ、プレシアは大型種だけれど、性格は中型種ですものね。

 否定はしないわよ」


マリアンナ「その御蔭で、私達とも気が合うのですよね♪」


シャンナ「本当に、そうですよね♪」


 僕の耳元に柔らかく指先を添えながら、穏やかに微笑むシャンナさん。



聡「ところで、各国の国境について振り返ってみると、強国に挟まれながらも生き残れている国々って、上側は和睦寄りなフェアリー同盟で、左側は色んな意味で中型種最強のスノードロップだけれど、下側の通り道には小国のシュクレしか居ないんだよね。 こうして見ると、抑止力としての木本プリバドの影響力って、相当だよね」


サニア「チューリップフラワーの女神とも読める名前にも頷けるわね」


聡「その読み方の場合、チューリップ・フラワー・エル・アで、ツリピフェラと言う事だね」


ツリピフェラ「ツリの名前を、魔改造しないで欲しいの」


ラフィール「ツリピフェラちゃんは、初めから魔改造なの」


小蔭「それでも、乱用をしないから良い子達なの」


聡「本当にそうだよね。

 あれに関しては、セイレーンの大剣やミドルドラゴンアームとは大違いな訳だし」


 むしろ、あの強さで数十万人居る木本って、単一種の一存が世界観自体に影響を与えるタイプの世界系の強キャラなんじゃないかな?

 核の様な重力魔法を1000年の葛藤の末に牽制力けんせいりょくとして使い熟した聖木せいぼくとも読めるし。


サニア「そうやって比べると、セイレーンも中々よね。

 確かにこちらは片手剣だけれど」


シェリナ「光栄です♪」


 1m当たりの太さが刀の3倍以上有る突撃メインの打撃武器を剣と言うのかな?

 確かに形状は両刃剣だけれど、物理特性も切れないアーマーに対する打突だし。



聡「それと、これは魔力の実についてなんだけれど、あれって成長するとどうなるの? ソテツの上側にパイナップルが埋まっている様な形だけれど、そのままだと種をけないよね」


マリアンナ「それでしたら、ある時期から外殻を残して中央だけが伸びるのですよ。

 その急成長に使われる栄養が、パンになる実の周りの白い粉という訳ですね」


聡「ああ、そう言う事だったんだ。 通りで、あんな形をしている訳だね」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


マリアンナ「それにしても、御主人様は小食ですよね。

 光の属性値が高い筈ですのに」


サニア「聡お兄ちゃんは信仰心の塊なのよ。

 私も初めは属性値が高いのかなって思ったけれど、それなら属性値*重量も大きい筈でしょう?」


聡「ああ、それで生産種族のマリアンナさんは、シャンナさん位のマナコストなんだね」


 つまり、補助魔法の習得に必要なのは信仰心と属性値の相乗効果ではなく前者の方だったんだね。


マリアンナ「何だかこれでは、スノードロップも大型種みたいですね」


ツリピフェラ「ツリから見たら、マリアンナお姉ちゃんも燃費が良いの」


シェリナ「ツリピフェラちゃんは、三属性ですからね」


ラフィール「ラフィと小蔭ちゃんの分を分けられるから、丁度良いの!」


聡「本当に、そうだよね」


 属性値*重量の前者が高い小型種も、質の良い魔法具を作れる分マナコストが大きいらしくて大型種の7割は魔力の実を食べる訳だから、魔力も強い中型種なら尚更だよね。

 向こう育ちの僕が、こちらの人達よりも信仰心が強いのは日本でも言える様な現象だけれど。



シェリナ「私からも、一つ質問をしても宜しいですか?」


サニア「珍しいわね。 丁度良い機会だし、どなたからの質問も受け付けるわよ」


シェリナ「サニアさんと聡様は、種族の特徴や各国の立地からプリバドとアスピスに加えて、スノードロップを疑ったのですよね」


サニア「そうだけれど、それがどうしたの?」


シェリナ「確かに私は、プリバドとアスピスについては魔法具の生産国として紹介致しましたが、聡様にはスノードロップの立地までしか伝えなかった筈です。

 私達の様に難しい立ち回りが要求されている事は話しましたが、どうしてあの様に考えられたのでしょうか?」


サニア「それは簡単よ。 ねえ、聡お兄ちゃん」


聡「戦力の話に明るいサニアちゃんにとってはそうだと思うけれど、シェリナさんがそう思うのも無理はないね。

 あれは、隣国への奇襲が成功した時に、消耗した兵力が即座に隣国から強襲される可能性を考えると、東洋怪異かスノードロップにしか覇道による全国制覇はできないと判断した上で、皆から疑われていて大きくは動けない東洋怪異と、ワンチャンスも有るかも知れないけれど恋人を疑う訳には行かないからプレシアを除外したんだよ」


ツリピフェラ「そんな事は、木本プリバドが許さないの」


聡「そうだよね。 ツリピフェラちゃんはこう言った御話が嫌いだとは思うけれど、抑止力とか国境の話題って、元来そう言う物だからね」


ツリピフェラ「それはツリにも分かっているの。

 聡お兄ちゃんが、こう言った御話を好き好んでする様には、到底思えないし」


マリアンナ「御主人様は、愛されているのですね♪」


シェリナ「ツリピフェラちゃん……申し訳有りません」


ツリピフェラ「気にしないでなの。

 優しいシェリナ様には、殺伐とした話題が難しく見えただけなの」


 その難解な話題に付いて行けるのが、聖木たるこの子達なんだよね。

 最も、火力数人、補助数人なら単体の木本には勝てるから委縮しないで済んでいる事を考えると、柔和でありながらも高い戦闘能力を持つプレシアやスノードロップも相当なんだけれど。

 常人では、水土光属性や斬突特性が効かない時点で倒せないし。



小蔭「……何だか、蛇姫様と小蔭を見ているみたいなの」


マリアンナ「本当に、そうですね。

 蛇姫さんは強者ですけれど、小蔭ちゃん想いですからね♪」


サニア「そう言う所だけは、私達と似ているのよね」


聡「確かに、見た目は全く別の生き物だよね」


シャンナ「御主人様は、やっぱり細身な女性の方が好きなのですか?」


聡「そうだね。 小型種が、可愛くて仕方ない位だし」


小蔭&ラフィール&ツリピフェラ「聡お兄ちゃん、ありがとうなの♪」


 本当に、可愛い魔道生産種族だね。


小蔭「蛇姫様は、小さい内に奉公に出た小蔭に寂しければ儂が母親の様になってやっても良いとまで言って下さったけれど、聡お兄ちゃんも、あの時の姫君とどこか似ている気がするの」


サニア「あの蛇姫さんにも、そんな事が言えるのね」


マリアンナ「女性は、誰だって一度は小型種の御母さんみたいになってみたいと思う物ですよ♪」


聡「確かに、この世界の女性にとっては、そう思うのが道理なのかも知れないね」



シャンナ「(小声)聡様……やはり、帰らなくて正解でしたね」


聡「(小声)ある意味では、本当にそうだったよ」


 納得した様子で僕に囁いたシャンナさんに、慣れた返事を返す僕。

 蛇姫様にそんな一面が有ったのは意外だったけれど、アスピスの賛同者ことスノードロップの芸術品が他国とは比べ物にならなかった事は、今更言うまでも無いよね。



第三章について


聡「それじゃあ、次の章に行こうか。

 この部分は本格的な恋愛回だから、他よりも丁寧に紹介したつもりなんだけれど」


サニア「それも有るけれど、この章は今更考え直す必要なんて無いでしょう。

 聡お兄ちゃんが、聡明なんですもの」


シャンナ「確かに、御主人様は可愛いだけでなく、とても理知的でしたよね♪」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


 この子の事だから、丁寧な紹介と聡明という言葉から状況を推測したのだろうね。


聡「強いて言えば、伝わりにくそうなのは水属性と光属性以外の補助魔法の効果だよね。 風属性については、補助系の第四と第五魔法は使い手が居ないから光の第五補助魔法みたいに効果も不明だけれど、第二魔法が属性相性の悪さを相殺して移動し易くする事や、第三魔法が重力以外の土属性を等倍にする効果という事は紹介していなかったよね」


ラフィール「あの時は、ラフィと聡お兄ちゃんが手を繋いで速さを分け合っていたから、第二魔法を使う必要が無かったの」


サニア「身代わり石を付けたフェアリーの大群が、良い具合にタンクをしていたものね」


聡「その言葉だけを聞くと、凄いパワーワードだよね」


マリアンナ「そうですね」


 苦笑いをするマリアンナさん。

 きっと、コーティス様のあの言葉を思い出したんだろうね。



聡「次に、土属性は純粋な攻撃魔法が地震で、三元素の土属性は重力波だけれど、第一と第二の補助魔法は、第四魔法の重力で移動と方向転換に少しずつ干渉しながら風属性による飛行を制限する上に風の第三補助魔法を無効化する効果から、移動や方向転換への干渉効果を抜粋した物だよね。

 第五補助魔法は、広範囲に土属性値と防御力の上昇だけれど、東洋怪異の大型種には意外と純粋な土属性っ子が居ないから、どちらかを一回の蛇姫様は攻撃魔法を優先したんだよね」


サニア「確かに的確な説明だけれど……これを聞いた人達に彼は元々魔法の無い世界の出身だったなんて言ったら、どの位の割合で信じるのでしょうね?

 これじゃあ、どう聞いても魔法の達人じゃない」


シェリナ「その通りですね。 丁度良い機会ですし、氷属性と火属性についても、相応しい説明を御願い致します」



聡「そうだね。 氷属性は、第一魔法こそ水属性と同じ効果だけれど、弱点同士の物を等倍にする事で有利を取る訳だから、その使用感は全くの別物だね。

 第四魔法は知っての通り一方的に視野を遮って光属性を散乱させる物だけれど、第二魔法は火属性の第四補助魔法による炎抵抗の部分貫通効果の半分程に対抗する物で第三魔法は相手の方向転換速度に干渉するという様に、明らかに対点火系の刺突使いを意識した効果だね。

 コーティス様も第五補助魔法は使わなかったけれど、消費魔力の低減と物理回避上昇な訳だから、あの状況なら使っても良かったんじゃないかなって思っているよ」


サニア「補助魔法使いらしい見解ね」


聡「その通りだね。 氷属性とは対極的に物理攻撃を主体とする火属性は、第一魔法が攻撃力上昇、第二魔法が火属性値上昇、第三魔法が直接魔法と重複しない持続魔法剣に加えて水属性特効を付与、第四魔法がさっきも言った通りの貫通効果だから、サラマンダーは衝突の前に第三魔法以外を固めていた可能性が高いね。

 第五魔法も広範囲への攻撃力上昇だし」


シェリナ「それでサラマンダーは、直接魔法をあまり使わなかったのですね」


サニア「むしろ、魔力切れで使えなかったのよ。

 まあ、使う必要性を感じない程の攻撃力が出ていた筈だけれど」


聡「物理攻撃の基本はあくまでも重量*腕力だから攻撃力も1割未満しか上がっていないと思うけれど、防御力を引く前の彼女等の重複2割上昇は相当な影響力を持つ筈だからね」


サニア「火属性値もそれに近い効果が有る訳だから、(100+3*7%)*3700*180%-1000と考えると、光属性に対する抵抗貫通を含めた効力はかなりの物よね。

 打撃主体のプレシアの方が基礎攻撃力は高いけれど、突撃主体の彼女等の方が一撃必殺狙いだし」


 打撃型が4000位で、突撃型が3700の高クリティカル率という事だね。

 バランス的に1/3が1.5倍撃かな? セイレーンなら打撃特性と貫通考慮の火属性が両方1段階耐性だから、*2が出ても通常ヒットとミスならギリギリ耐えられる位の威力だろうね。



マリアンナ「外見以上に素早い事も考えると、ロウ・エンジェルの身代わり石を余裕で割れた事にも頷けますよね」


ラフィール「サラマンダーも、やっぱり凄いの」


小蔭「プレシアやスノードロップの皆も、当て方次第では一撃で倒しそうな程凄かったの」


聡「プレシアの打撃剣に対するサラマンダーの左腕盾。

 サラマンダーの両手持ちの大剣に対するプレシアの正面盾に片手持ちの水魔法剣と考えれば、その中ではバランスが取れているのかも知れないね」


シェリナ「実際に、そう言う物なのかも知れませんね」


ツリピフェラ「そう言う事なの」



第四章について


聡「この章で初めに気に成る事は、ミックスフロートと通信用の魔法具との親和性だよね」


シェリナ「そうですね。 私達の魔法具では、吉日にしか連絡を取れませんのに」


サニア「それは、水属性の種族だからよ。

 土属性の魔法具や湖上なら吉日以外でも構わないのだけれど、これは戦術にも関係する事だから東洋怪異も他国には配っていないのよ」


聡「プリバドの場合は、他種族とは距離を置いていた方が、争いが起こりにくい事を直感的に理解しているからじゃないかな?

 シュクレ自体は良い子だけれど、水系属性だし」


ツリピフェラ「そう言う事かも知れないの」


 僕等の世界の情報化にも、遠距離同士の争いが起こり易くなったという弊害も有る訳だし、豊かさの享受きょうじゅって、そもそも難しい事なのかも。

 シュクレが船を持ちながら大航海時代の様に輸送代の吊り上げとかをしない事にも、その辺りと抑止力こと木本プリバドが関係していそうだけれど。


聡「何だか、大型種や木本を理由にすれば、物理的な疑問には決着が付きそうな気がして来たよ」


サニア「実際、強国の影響力って、相当ですものね」


マリアンナ「聡明なのですね♪」



ラフィール「ラフィからも、質問をさせて」


 一時の間を置いて、意外な人物が切り出した。


サニア「珍しいじゃない。 この際だし、何でも聞いてね」


ラフィール「属性値と魔力って、魔法を覚えるにはどっちが必要なの」


サニア「それは……ねえ、聡お兄ちゃん」


聡「そうだね。 ラフィちゃん、それはね、魔力や信仰心の方なんだよ。

 小型種は魔法具を作る属性値は高くても、魔法の習得数は控えめでしょう?

 初めはサニアちゃんも属性値との相互作用を疑っていたみたいだけれど、僕を見て信仰心の塊と確信したみたいだし」


シェリナ「流石は補助魔法の達人ですね♪」


聡「シェリナさんだって」


小蔭「それじゃあ、聡お兄ちゃんが三種類の第四魔法を使える理由って……」


聡「信仰心は博愛でもあるから、小蔭ちゃんの御蔭だよ」


マリアンナ「そう言う事ですね♪」



シャンナ「御主人様、片方は終わりましたから、向こう側に移りましょうね♪」


 シャンナさんが、僕の髪を撫でながら促してくれる。


マリアンナ「耳かきをしてあげる身としては、おなかで御顔を抱き寄せてあげる方が嬉しいものですが、それだと御話ができませんからね」


ラフィール「それじゃあ、ラフィが撫でていてあげるの♪」


シェリナ「でしたら、小蔭ちゃんもしてあげると良いですね」


小蔭「シェリナお姉ちゃん……ありがとうなの♪」


聡「それじゃあ、反対側に回るね」


シャンナ「皆さん、とっても良い子ですね♪」


 すっかりお姉ちゃん気分なシャンナさんも、これはこれで可愛らしい。



シェリナ「次は、ロッド・オブ・ピアースについてですよね」


マリアンナ「あの魔法バリアは、凄かったですよね♪」


 三人に甘えさせて貰いながらも、他の皆の朗読で考察会は続いて行く訳だけれど、やっぱり皆には、最後のあれの方が印象に残っているんだよね。


ツリピフェラ「三元素魔法にも、当然の様に有効だったの」


聡「水属性を含んでいるからね。 ツリピフェラちゃんとラミフロルスちゃん達が、御互いに理解し合っていて助かったよ」


ラフィール「ねえ、ツリピフェラちゃん。

 どうしてあの時、第五魔法を使ったの?」


 素直なこの子だからこそ、分からなくても疑問の方が大きいんだよね。



ツリピフェラ「ツリ達は、第五魔法の使い方を1000年位の間ずっと各自で考えて来たから、あの時の皆はそれを使わないつもりだったの。 他の子達が合わせて手加減をしてくれる前提でツリが発動できたのは、そう言う理由なの」


小蔭「使える事は分かったけれど、それだと使った理由が分からないの」


ツリピフェラ「それは、あの力を正しく扱うためには委縮していては駄目な事を知っていたのと、部外者達に対しての今後の牽制力になる事に気付いていたからなの」


ラフィール「分かったけれど、ラフィにはやっぱり難しいの」


サニア「この子に聞くからでしょう?

 それにしても、その後の事まで考えていたなんて、流石はツリピフェラさんね」


聡「同感だよ。 それに、ラフィちゃんにも分かる様に短く切って説明しているね」



「そう言う事だったの。 通りで光属性と補助魔法が使われた訳ね」


 僕等が声のした方に振り向くよりも早く、入口の方でドアの開く音がした。


ツリピフェラ「ルミナスさん、そう言う事なの」


 振り向くと、部屋の入口には二人のプレシア兵に案内されて来たらしい、白と赤のドレス姿のルミナスちゃんと案の定なメイド服姿のルリスさんが、対照的な表情で固まっていた。


ルミナス「貴男達……何をしているの!?」


サニア「見ての通り、考察会よ」


シャンナ「御主人様に、耳かきをして差し上げております♪」


ルリス「あらあら、可愛いらしい御主人様ですね♪」


プレシア兵「木本が居る事ですし、ここは大丈夫でしょう。

 それでは、私達はこれにて」


 やっぱり、プレシア兵の安定感は最強だね。

 ところで、この子にはどう説明しようか?


ルミナス「ありがとうね。 まさか……片思いの相手が、母娘ははこに甘える様な、可愛過ぎる人だったなんて……もう、慈愛の気持ちが抑えられませんわ!

 この通り、レイピアはルリスに預けましたから、皆さんも私に耳かきか愛撫を代わって頂けませんこと?」


 そっか。 エンジェルって言う位だから、万人に聖母になれる素質が有るんだね。

 シャンナさんとメイド服の小蔭ちゃんを親子と見間違えている事については、この際気にしないでおこう。


サニア「話し方と言ってる事が、合っていないわよ」


シャンナ「分かりました。 こんなに恋に一途な御方は、久し振りに見ましたし」


マリアンナ「そうですね」


 苦笑いをするマリアンナさん。

 まあ、スノードロップでは皆がこの位だからね。



ルミナス「ああ……おなか抱っこ嬉しい♪

 後ろ向きなのが心残りですけれど、やっぱり私達は、こうしてあげている時に幸せを感じる様にできているのよね」


ルリス「ルミナス様、嬉しそうで何よりです♪」


シェリナ「そうですね♪」


サニア「まあ、この際正妻の座を取ろうとしなければ構わないわよ」


ルミナス「こんなに可愛い子が決めた事を無下にはできないから、貴女も安心しなさいよね」


 口にはしないけれど、居心地の悪そうなサニアちゃん。

 向こうにマリアンナさんを連れて行ったらこの逆になる訳だから、彼女を中心に考えても帰らなくて正解だったのかも知れないね。


ルミナス「ところで、聡お兄さんの剣は随分と変わっているのね。

 水の魔法剣にでも対応しているのかしら?」


サニア「勘が良いのね。

 それは水属性で魔法剣をすると、暗い水色の刃が現れるのよ。

 まあ、基礎威力自体が高くても斬撃だからね。 サラマンダーすら切れないわよ」


聡「それってもしかして、基礎威力自体は5000と有る代わりに、一発ぽっきり?」


サニア「何だ、知っているんじゃないの。 どこかで話したかしら?」


聡「僕等の世界のゲームに、似ている物が有るんだよ。

 持続時間制と考えても、振りにくいと確かに水系属性の斬撃は厳しそうだね」


 最も、あれはマナと言うよりENだし、耐性概念も無いから無双できるけれど。



聡「もしかしたら、補助魔法の併用とかで遠距離に飛ばせれば使えるかも知れないね」


サニア「確かにそれなら使えそうだけれど、刃を遠距離に飛ばすなんて、良く思い付くわね」


聡「この流れだと、この世界にはそう言う要素も有りそうだからね。

 後でやってみよう」


サニア「そうね。 聡お兄ちゃんの予想だし、意外とできるかも知れないわね」


シャンナ「遠距離でしたら、折れませんし♪」


ルミナス「私は、こんな人達に戦いを挑んでいたのね。 強かったのも頷けるわ」


ツリピフェラ「そう言う事なの」



ルミナス「(小声)それにしても、サニアさんにも可愛らしい一面が有るのね」


 僕の耳を撫で始めた彼女が、感心した様子で囁いた。


聡「(小声)ルミナスちゃんだって」


ルミナス「(小声)何よ……そんな風に言われると、貴男を一人占めしたくなるじゃない」


サニア「全く……そんなにルミナスさんの愛情が嬉しいのかしら?

 聡お兄ちゃんの事をずっと慕って来たのは、私達なのに」


 大好きな女の子と、彼女に似ている少女の少しだけれた視線に挟まれて、僕はあわてて目線を行き来させてしまう。



シャンナ「やっぱり、恋愛結婚だったんじゃないですか♪」


 悪戯いたずらっぽい彼女の言葉に、僕等は揃って真赤になる。

 丁度ルミナスちゃんと目が合っていたから、御互いに見詰め合ったまま必要以上に意識をしてしまう。


マリアンナ「恋愛結婚♪ ステキな響きですね!」


シェリナ「政略よりも恋で決めた事が分かって、安心致しました♪」


小蔭「え、それじゃあ小蔭が側室なのは……」


聡「小蔭ちゃん、それとこれとは……」


サニア「政略関係に決まっているじゃないの。

 聡お兄ちゃんの好みは、小蔭さんみたいな語尾がなのになる小さい女の子なのよ。

 他に迎えた子の性格も、御淑やか、聡明、従順にメイド気質な訳だし、それらの全部を持っていて文化圏も似ている小蔭さんが一番でない訳が無いわよね」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


シェリナ「これについては、政略で安心致しました♪」


サニア「聡お兄ちゃんが優先している順序には、相手の立場や恋愛への興味に加えて忍耐力も深く関係している様に見えるからね。

 私を優先してくれる代わりに、シャンナやツリピフェラさんが最後の方になっている理由は、そう言う事でしょう」


聡「やっぱり、サニアちゃんには分かるよね」


ルミナス「それでは、私が貴方達の中に入れば、優先して頂けるという訳ね」


ラフィール「ルミナスちゃんも、聡お兄ちゃんと仲良くしたいのね♪」


ルミナス「貴女と一緒にはされたく無いけれど、そう言う事ね」


ルリス「むしろ、この子みたいな可愛い女の子が欲しくなったのではないですか♪」


ルミナス「ルリス、それは貴女の方でしょう?」


ルリス「え……!?」


 彼女の何気ない一言に、真赤になるルリスさん。



サニア「仕方無いわね。 好きにすると良いわ。

 皆さんも、そう思うでしょう?」


シェリナ&マリアンナ「歓迎致します♪」


ラフィール&ツリピフェラ「良かったね♪ ルリスお姉ちゃん」


 シャンナさんは小蔭ちゃんに何かを囁いている。 これ以上人数が増える事に抵抗を感じているのは、僕を含めても二人だけみたいだね。


聡「小蔭ちゃん、こう言うのも大家族みたいで良いと思うよ。

 流石に僕も、10人以上は親身に相手をしてあげられないと思うけれど、後はルリスさん次第で良いと思うんだ。


ルリス「それでは、これからは御主人様として、貴男を御慕い致しますね♪」


ルミナス「まさか、ルリスだけとは言わないわよね。

 私も正妻みたいに相手をしてくれないと、許さないんだから」


聡「分かってる。 ルミナスちゃんも、ありがとう」


ルミナス「何で……私の言って欲しい事を言ってくれるのよ?」


サニア「聡お兄ちゃんだから。 どう? 中々のお兄ちゃんでしょう♪」


ルリス「そうですね♪」


 優しく微笑む、ルリスさん。

 少女らしいツインテールのルミナスちゃんとは対照的に、大人びたストレートの金髪青目に黒を基調とした白エプロンのメイド服姿の彼女には、身長以上に細身ながらもマリアンナさんの様な魅力が有る。



ルミナス「それじゃあ、次を読んで貰えないかしら?」


 言い方こそ厳しいけれど、僕の耳を柔らかく撫でながら笑顔で促すルミナスさん。


サニア「そうさせて貰うわね」


 双子の様に、呼応する返事を返したサニアちゃん。

 これなら、きっと安心だね。


サニア「それにしても、良く聡お兄ちゃんは移動時間から湖の大きさを予測できたわよね。 勿論、湖側でセイレーンの国の半分を移動したのなら全体幅の1/20位でしょうけれど、外周から対岸までの距離を計算するには……目検討で1/3とでも考えたのかしら?」


聡「僕等の世界には、丁度そう言う物を計算する方法が定着しているんだよ。

 その御蔭で、外周の1/10から対岸までの距離を、湖から内陸までの距離から陸地の面積を予想できたんだ」


サニア「そう言う事だったのね」


 感心した様子のサニアちゃん。

 僕としては、むしろ円周率が定着していないこの世界でそこまで勘付く事の方が驚きだよ。



ルミナス「聡お兄さんの世界でしたら、そう言った理論も有るでしょう。

 上から見下ろしても、文明が進んでいる事は明白ですし」


シェリナ「それでは、聡様は住み易い国での生活以上に私達との恋を優先して下さったのですね♪」


マリアンナ「でしたら、私達も御主人様に不自由な想いをさせない様に、聡様の愛欲にはこれまで以上に応えて差し上げませんと行けませんね♪」


 シェリナさんに呼応する様に、嬉しそうにルミナスちゃんを見ながら話し始めたマリアンナさん。

 この人のしたい様にさせたら、一瞬で年齢制限が上がる事は間違いないね。


ルミナス「何よ……これじゃあまるで、私にはそう言った御話が似合わないみたいじゃない」


聡「ルミナスちゃんには、硬派なりの可愛さが有るよ」


ルミナス「ありがとうね♪」


 どうしよう? 素直に可愛いかったよ。



ルミナス「こんなに素直で純粋なんじゃ、皆が興味を持つのも当然よね」


 僕に耳かきASMRな愛情表現をしながら、少女らしからぬ流し目で僕を見下ろすルミナスちゃん。


シャンナ&マリアンナ「同感です♪」


サニア「聡お兄ちゃんを可愛いって思ったのは、フェアリーシールドを付けている所を見た時以来だけれど、これに関しては頷けるわね」


シェリナ「そうですね♪」


小蔭&ラフィール「同感なの♪」


ツリピフェラ「……同感なの?」


 一人だけ同感していない気がするけれど、まあ、この子には僕の行動次第では違った可能性も有り得た事や、あの時の僕や木本が本来硬派な立ち位置に有った事を僕以上に理解しているから、皆と同じ様には感じないのだろうね。


シェリナ「ツリピフェラちゃんは、御主人様を特に慕っている小型種ですものね♪」


 勿論、きっとそれも有ると思うけれど。


シャンナ「……聡明な聡様らしいです♪」


聡「お姉ちゃんだって」


 プレシアの国で長らく僕を見ていたシャンナさんには、僕がツリピフェラちゃんを見て考え込んでからシェリナさんの方を向いて同意した時点で、言わずもがななんだよね。



ルミナス「ところで、どうして聡お兄さんはフェアリーシールドなんていかにも軽そうな物を装備しているのかしら?

 この御話を見る限りでは、その国の姫君と繋がりが有ったみたいだけれど、この国を通った男性にはドラゴンアーマーとかが有ったんじゃないかしら?」


 ……これに関しては、勘と言うよりも前提知識の問題だね。


サニア「それはね、優しい聡お兄ちゃんが性格に対応する様に非力だからよ」


ラフィール「ラフィよりは、少しだけ力が有るの」


 ラフィちゃん、それフォローになってないよ。

 14歳になる頃には僕よりも確実に力の有る小蔭ちゃんも、シェリナさんみたいに苦笑しているし。


聡「これに関しては、ドラゴンや獣系の亜人の力が半端じゃないからじゃないかな?」


シャンナ「それは有りますね」


マリアンナ「私達がフェンリルを考えた理由も、彼女等の攻撃力ですし」


聡「スノードロップなら、頑張れば渡り合えるよ」



ルミナス「そう言う事だったのね。 通りで、私達よりも軽装な訳ね」


 確かに、ホーリーランスも4m近く有る片手用の打撃槍だったし。

 木本のアダマンタイトには、細過ぎたからか無効化されていたけれど。


聡「ところで、魔法攻撃って凄く強そうに見えるけれど、どうして物理攻撃でもそれと張り合えるのかな?

 耐性や魔法防御が高いからという理由だけでは説明が付かないと思うんだけれど」


サニア「そう言う物じゃないの?

 感覚的にはこの位で合っていると思うんだけれど」


聡「もしかして、この世界では魔法が腕力に合わせて弱体化されているんじゃなくて、腕力が魔法に合わせて超バフされているのかな?」


ツリピフェラ「そう言う事かも知れないの」


 ああ、きっとそれで確定だ。 ……この子が、頷いている。



マリアンナ「それでは、続きを読みますね♪」


ルミナス「今思い返してみると、聡お兄さんが優しかったりセフィリカさんが戦闘に長けていたのは当然としても、どうして彼女は大型種の居るこの世界の中で他国に警戒される様な事をしたのでしょうね? 勿論私達との国交に興味を示してくれたのは有り難いけれど、そのために自分達の身を危険にさらす必要は無かったと思うのよ」


聡「それについては、僕もこの考察会を提案する前に考えて有るんだ。

 まず、これを簡単に理解するには、彼女等はここまで情勢が悪化するとは思っていなかったと考えるのが一番だね。

 エンジェルが元々居たのはルミナスちゃんの様な天使が内政をしている天界だし、彼女等がこの世界に来てからは、一回も大規模な闘争は起こっていない筈だからね」


サニア「要は、大型種の怖さを知らなかった訳ね」


シャンナ「確かに、模擬戦こそ行ってもこちら側との国交は開けていましたからね」


シェリナ「そう言う事だったのですね。

 通りで彼女等に対する評価が、私達と他国とで分かれていた訳です」


聡「まあ、さっきも言った通り、国境って言う物は大抵国力とかで引かれるからね。

 隣国同士が不仲なのは、一昔前のプレシアにも言えた事だし」


サニア「確かに……数日前なのに、まるで一昔前よね」


シェリナ「本当に、そうですよね」



 勿論、彼女等も各国の疑念に気付いた段階で全てを打ち明けるか迷った筈だけれど、影口みたいな物は大抵シュクレみたいな子の居ない所で三つ巴な大国とかが勢力構図の中で始める物だからね。

 気付いた頃には、既に明かすリスクの方が大き過ぎたのだろうね。


シェリナ「あら? でしたら、セフィリカさんは聡様のロピスを見て、プレシアの魔法剣と気付いていたのでは無いですか?」


聡「それは、貿易品がミックスフロートで入るか陸路も有るか次第だね」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


ラフィール「シェリナちゃんでも分からなかったのなら、ミックスフロートの方なの!」


ルミナス&サニア「あら、意外と機転が利くのね」


小蔭「ラフィール様も姫君なの」


ラフィール「そう言う事なの♪」



サニア「次は、アクアさんと一緒にラフィールさんに会う場面みたいね。

 何だか、今更だけれど聡お兄ちゃんらしいわね」


シェリナ「御主人様は、皆のための御兄さんですからね♪

 単体でも十分に強い大型種とは、少しだけ距離を置いている様にも見えますが」


ツリピフェラ「弱い者の味方なの」


ルミナス「……貴女は、最強だったけれどね」


小蔭「聡お兄ちゃんは朱雀すざく様に似ているから、そう言う意味で強い人の味方なのかも知れないの」


ラフィール「強くて優しい、お兄ちゃんなの♪」



聡「皆は僕とツリピフェラちゃんを、セフィリカさんは柔和なシェリナさんを強者としたけれど、僕が入るのならサニアちゃんもその中に入ると思わない?」


シェリナ「確かに、お兄さんと妹の様に似ていますからね♪」


マリアンナ「何だか、セフィリカさんの気持ちが分かった気がします♪」


ルミナス「聖女の末裔まつえいと同感だなんて、ここには強い人達しか居ないのかしら?」


聡「ある意味、勇者の集団だよね。 精神的には、勇者ロボだと思うけれど」


 勿論、僕は世代じゃないから動画やビデオで見たんだよ。


ルリス「クスクス……考察勢なのですね♪」


ルミナス「ルリスには分かるのね。 世代だからかしら?」


サニア「そう言えば、貴女達は天界から色んな世界を見下ろしていたのよね。

 一体どんな人達なのかしら?」


ルリス「簡単に言うと、金属質な乗り物が人型の巨大ロボットに変形して悪の組織に立ち向かう、友情や正義をテーマにした男の子向けの映像劇です。

 合体がカッコイイのですよ♪」


サニア「明らかに見ていた人の話し方よね。 ……説明が、簡潔過ぎるわ」



聡「そう言えば、コーティスさんと朱雀さんは明らかにその流れを汲んでいるよね。

 全身銀ピカで対称形な鑓にわたくしがオリハルコンと、脇差使いで和洋折衷わようせっちゅうな炎の鳥な訳だからね。

 剣は始祖鳥しそちょうをイメージしたミドルドラゴンアームだけれど、龍を冠した両刃剣は王道だよね」


 それに、俺がオリハルコンだと言うよりは、俺達オリハルコンな事も能力的に明確だし。 マッハの方でも筋は通るけれど。

 同じサイズ基準で比較すると、明らかにスーパーじゃないと厳しい。


ラフィール「……とっても強そうなの」


サニア「あら、サラマンダーみたいな人達ではないのね」



聡「中型種の人間が考えた勇者だからね。

 サラマンダーみたいな火龍は人間サイズの戦記とかの影響でむしろ敵側として描かれる場合が多いんだよ。 勿論、この世界の彼女等は善人だけれど」


 スノードロップが警戒していたプレシアやサラマンダーって、ロボットサイズで例えると両方熱武器を無効化する本体が直撃する様にできている吸着ドローからの大剣打撃や殆ど必中な弾速をしたEN誘導砲撃からの大剣突撃をする訳だからね。


マリアンナ「……朱雀さんを挙げたので、心の問題かと思っていました」


聡「勿論それが一番の理由だよ。 僕が勇者として柔和な彼女等を挙げるのは、その良心や加護欲を高く評価しているからだし」


シェリナ「何だか、私達の様ですね♪」


 自分の事の様に微笑んで、同意の意志を示すシェリナさん。


ツリピフェラ「それならセフィリカさんも負けていないの。 結果的には皆を巻き込んだけれど、振り返ってみると一番自他の事を考えていたの」


聡「そう言う意味では、彼女等は別路線で皇帝を超えた者だった訳だね。 勇者の世界では救世主や光属性の斬撃は最強だし、彼女等が報われて本当に良かったよ」


 サニアちゃんが言った様に、勢力図の中での姫君は一人の帝王と言うよりも一国の皇帝だし、別の世界観には勿論別の描き方や魅力が有るよね。(とは言え結果的には情勢を乱した訳だから、英訳があの読みになる帝王と呼ぶのはやめておこう)



ツリピフェラ「無効化され易い光属性で、良く頑張ったの」


ルミナス「全く、光属性と斬撃が効かないなんて、一体どんな人達なのよ?」


ルリス「何だか、全員勇者と言うよりも、全員ラスボスみたいですよね。

 復活しますし」


聡「ゲームだったら、熱量で終止が鉄板な相手だよね。

 あくまでも人間サイズだけれど」


ルミナス「実際、硬い勢力図の中では、英雄としてたたえられるのは一握りでも、強敵として警戒されるのはほぼ全員なのかも知れないわね」


聡「英雄が、有力者に聞こえたよ。

 ……この世界の人達が柔和で、本当に良かった」


 実際、異世界なら民族性が違っても当然な事まで考えると、御都合主義はしていてしていない様な物なこの世界での強者は、英雄ヒーローと言うよりも有力者ドミナントだし。


 それに、ここまでテンプレに従ったラインナップだと、ロボSRPGに参戦していないロボ物のパクり疑惑と民族性以外への言及は、どれかのジャンルの根底を否定する事になりかねないから、本来言わないべきなんだよね。

 それ以外とは、どこかが明確に違うし。


 事実、キャラゲーや恋愛物の評価って気に入るか気に入らないかが9割だから多少のツッコミなら有って然るべきなんだけれど、人間サイズと機械サイズを同列で比べるのに無理が有るとすれば、5章でのセフィリカさんの戦いぶりや戦闘のルールに一番近いのは見た目は似ていないけれどマンモスコーラの世界線の赤い隊長だし、これだけ作品数が有る中では何かしらには例えられるよね。

 100%のオリジナルを否定したくは無いけれど、ジャンルという概念が有るよ。


サニア「……本当に、知り過ぎるのも不幸とは良く言った物ね」


マリアンナ「木本の強さから比べたら、私達の英知などまだまだですがね」



ルミナス「そう言えば、あの第五攻撃魔法が使われた時に渦の様な物が見えた気がするけれど、もしかしてあの世界線での渦って……」


ツリピフェラ「ツリにも分からない事は有るの」


ルリス「そうですね。 様々な世界線を見降ろして来たのは私達だけですし、ツリピフェラさんでしたらこの子目線で考えた時に悪政を敷いている城だけを狙った筈ですよね」


ルミナス「まあ、あれは主人公やラスボスでも身代わり石案件ですものね」


聡利「広範囲に18000みたいな物だし、威力的にはそう言う事だけれど、この子は例え干渉できても世界観そのものに危機感を与える様な事はしないよ。

 それに、ルミナスちゃんが送り込んだ物でもない事が分かって良かったよ」


ルミナス「まあ、私達だったら例え侵略戦争を恐れた周辺国の司祭に神格と交信する儀式の中で頼まれたとしても、市民を同時に巻き込む様な物は作らないし、もっと確実に王宮だけを滅ぼせる手段を選ぶわよ」


サニア「詳しい事情は分からないけれど、まあ貴女達ならそうするわよね」


ツリピフェラ「……ツリは、戦いの話は好きではないの」


マリアンナ「今回の木本も誰も喜んではいませんでしたし、そう言う事ですね。

 勇者とは何か。 考え始めるとキリが無いとはコーティス様も仰っていましたし」


聡「それでも、そう言った事にも前向きに考えられるのが真の勇者だと思うんだよ」


 これは勇者ロボ的にも、異世界勇者的にもね。


シェリナ「前向きなのですね♪ (小声)聡様、最近明るくなりましたよね♪」


聡「(小声)シェリナさん達の御蔭でね」


ルミナス「良かったわね。 御相手が貴女程の女性に釣り合う様な人で」


シェリナ「クスクス……光栄です♪」


 今までと同じ流れで、今までとは違った感情を表現したシェリナさん。

 やっぱり、ルミナスちゃんから見ても、シェリナさんは特別なんだね。



聡「……そう言えば、木本プリバドって、プリバドと言うよりもツリバドだよね。

 ツリリー、つまりツリーとリリー(樹とユリ)のバド的な意味で。

 ユリの木にも見えるし」


ツリピフェラ「そう言う事かも知れないの」


聡「良かった。 木本の考察は難しいけれど、これは正解みたいだね。

 ……それじゃあ次は、 Aha! That’s great! の人だね」


サニア「あら、良く分かっているじゃないの。

 やっぱり、外交に興味が有るのかしら?」


マリアンナ「御主人様は、私達の言葉も分かるのですね♪」


小蔭「小蔭には、やりますねえ♪ の方が分かり易いの」


聡「土と岩の大盾を出せる猫耳アサシンの時点で、小蔭ちゃんも中々だけれどね」


ツリピフェラ「そう言う意味では、チューリップちゃんも侮れないの」


聡「あの子は両手持ちの突撃型メイスに対空特性の重力魔法や光吸収だし。

 弱い要素が無いよ」


 園芸植物の人という意味なら、名前もブルーミーと言うかブルーマーだし、初見でこの意味が分かった人は、恋愛ゲーム慣れをしている僕以上に驚いた筈だよ。


マリアンナ「古来生物は、パワフルですからね♪」


ルミナス「私達から見たら、貴女達も相当強いけれどね」


聡「どこの世界も、古代要素が関わるとそうなる物だよね」


シェリナ「考察勢なのですね♪」



 いつも通り、あの時の様な事が無い限りノーとは言わない良心的なシェリナさん。


聡「いっそ、今までの考察を振り返りながら第五章以降を読んでみたら、何が起きていたのかが分かり易いかも知れないね。

 元々あの章は半分シェリナさん目線みたいな物だし」


シェリナ「そうですね♪ 戦況の解説が有りますし、難局の中で御主人様が解説役に努めていた訳ですから、私から見て丁度良い位なのですよね」


ルミナス「本当に、側室想いな旦那様ですこと」


マリアンナ「御主人様、愛しております♪」


サニア「私もそうだけれど、皆も良かったじゃない」


小蔭&ラフィール「そう言う事なの♪」


ツリピフェラ「そう言う事なの」



ルミナス「こっちも、これで一段落ね。 聡お兄さん、4章の事を踏まえれば5章は私達だけでも理解できるみたいだし、楽にしていて良いからね♪」


 そう言って、耳かきを終えたルミナスちゃん。


聡「そうさせて貰うよ」


ラフィール「良かったね、聡お兄ちゃん♪」


サニア「ここまで話せば戦力関係の5章と6章は説明不要だし、私は7章まで聡お兄ちゃんと一緒に居た訳だから、そこまでは皆さんなりに読み進めると良いわね。

 要約は、その後でも良いでしょう」


シェリナ「外国の御話は興味深いですし、丁度良いですね♪」


マリアンナ「そうですね♪

 あの時他国がどうしていたかには、私も興味が有りますし」


ラフィール「少し難しい御話だけれど、それはラフィにも興味が有るの」


聡「ラフィちゃんの境遇を考えれば、きっとそうだよね」


 今回の僕等の冒険は、物語として考えるとラフィちゃんみたいな全くの初心者が異世界ハイファンタジーやSRPGのあるあるを総合的に理解するのに丁度良い位の所にメインターゲットを置いている指南書とも言えそうだからね。


 その見方だと、後半のセイレーンとかは上級者を喜ばせるためと言うよりも、中盤までの筋書き通りを意識している様にも見えるし、前提知識の全く無いラフィちゃんとかなら固定観念による誤読もしないから、むしろ読み進めると言葉遣いの分かり易さから丁度良い位に感じるのかも知れないね。


ルリス「確かに、初見には特有の面白さが有りますよね♪」


ツリピフェラ「そう考えると、ツリもラフィール様みたいに感謝しないといけないの。 意味合いは、シャンナさんやマリアンナさんに近くなるけれど」


マリアンナ「そう言う意味でも、御主人様は私達の恩人ですよね♪」


シャンナ「聡様が、恋に明るい御方で良かったです♪」


ツリピフェラ「そう言う事なの」


メイドさんらしく、とても女性的な会話をする御三方。



聡「これを読み物にしたら、男性的な読者はこれを考察案件と呼ぶかも知れないけれど……ここは中型種以外の殆どが女性の方が大きい、慈愛に溢れる異世界だからね」


ツリピフェラ「それこそ、文字通りの愛情なの」


ルリス「本当に、そうですよね♪」


 これには、ルミナスちゃんも含めた全員が安心した様子で微笑んだ。

 僕も、ツリピフェラちゃんの事が尚更好きになったよ。 戦いの後に喜ばない理由だって、あの隠れた名作のピンク色をした龍の少女が泣き虫な理由と同じ訳だし。



後書き

 全てを解説すると等身大の考察物としてのこのジャンルらしさを削いでしまうという事で、7章以降の考察は次回作の主人公によるレビューと読み切れる読者の皆様の考察に委ねます。


 最後に、キャラクターの人気投票をしたら、誰が上位になるのでしょうね♪

 登場回数を無視して一人の女性として考えるとルリスさんとマリアンナさんが強いですが、恋人探し目線で活躍した人物と考えると、小蔭ちゃん、シェリナさん、サニアちゃんが有力ですね。


 ソフィアさんとセレーネさんは母親ですし、朱雀さんはヒロインではない古典東洋ですからね。 ツリピフェラちゃんも上級者向けですし、ロリポップちゃんは割と明確な脇役なので、あの子達は一般層から見たら中堅に入ると思います。

 後ろの御二方が幼少ですが……あの二人は主役級ですし、日本は古来から小さきものは皆美しと考える御国柄ですからね。

 そう言った意味では、ラフィちゃんもワンチャンでしょう。



 ちなみに、作者自身がシナリオの奥行きや人物としての魅力を熟考して並べた結果は意外に思われるかも知れませんがこれも割と順当で、ルリスさん、(若くて未婚ならセレーネさん)、聡さん、ツリピフェラちゃん、マリアンナさん、ルミナスちゃん、サニアちゃん、(同じく若くて未婚ならソフィアさん)、ラフィちゃん、(ヒロイン格ならセフィリカさんとコーティス様)、シェリナさん、小蔭ちゃん(古典東洋版ネコ何とか)、朱雀さん、シャンナさんの順になりました。


 その道の追及者には、清楚なお姉さんと理解有る少女の組み合わせの方が、ストレートに可愛い女の子よりも噛み合う事が如実に表れていますね。

 後、音響の好みと同様に♯系のⅥやⅦで表される明るくて強い女性よりも、♭系のⅢやⅣⅠで表される優しい中に陰りが見られる奥行きの有る人物が好きな事も。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る