2nd The Rising Suns.

『貴方の仕事ぶりにはいつも感服します。予定より10分早いですね。』

マリアの軽やかな声が聞こえた。


マリアはいつもこういう調子だ。しかし褒められるのは悪い気分ではない。気恥ずかしさを隠すように俺は答えた。

「これで仕事は終わりかな。」


『はい。問題ありません。そのまま帰投してください。報酬はいつも通りに。』

「長距離の稼働でマシンにも負担がかかっているので助かる。ではまた。」

『それではまた。』


そういうとマリアのメッセージウインドウは消えた。

俺はそのまま真っ直ぐガレージへと機体を向けた。


最新式の人型兵器とはいえ長距離の飛行はかなりコタえる。しかし、宇宙に近い高さから地球の輪郭と山脈と海とが大きく広がっているのを見るのは悪くない気分だ。山あいに小さく街も見える。現在時刻は午前3時50分を回っていた。まだ日の出には早い。一度だけこの高高度から見る日の出を見たことがあるが、それは雄大なものだった。暗闇にオレンジの光が差し込んでくる様子は宇宙の神秘を感じさせたものだった。また見るチャンスがあるといいのだが、


そう思った瞬間



後方から突如、閃光が襲ってきた。視界は真っ白、コクピットはアラートの騒音に包まれた。その直後、機体は轟音と共に激しく揺さぶられた。俺はすぐさま敵機の襲来を確認した。レーダーに敵機はなく、ディスプレイに情報も入っていない。


光の来た方向を見ると、三個の小さい太陽が並び、宇宙まで届くほどの轟炎の火柱が立ち昇っていた。


「あいつら、核を使いやがった。」

HUは旧世紀では実験以外使うことのなかった核兵器を使ったのだ。しかもそれを俺たちへ向けて。その事実に冷や汗が出て、自分の顔から血の気が引くのが分かった。赤子のように手を握りしめて自分の身体の無事を確認すると、スロットルを最大に引いてガレージへと最高速を出した。


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