第12話

アイテム目当てにゴーストハウスに来てしまった舞衣。扉が勝手にしまり、家から出られなくなってしまった。


「とりあえず……1階から散策しようかな」


舞衣自身、そこまで幽霊の類に強い訳では無い。むしろ苦手だ。だが来てしまった以上、戻ることができない。


勇気を出して1歩を踏み出した瞬間、頭上から物音がした。


ゴンッ!!!


驚いて扉まで飛んでさがる舞衣。


すると、薄暗かった1階の電気がついた。

白熱電球のようなライトが天井からぶら下がっている。


舞衣は、もしかしたら開いてるんじゃないかともう一度ドアノブを捻ってみたが、そのドアが開くことは無かった。


「しかたない……頑張るか、怖いけど」


とても重い足取りで、全方位を警戒しながら進み出した。




廊下の突き当たりの部屋まで来ると、そこはダイニングキッチンのような部屋だった。

部屋の突き当たりには料理台と食器棚、左手にはテーブルと椅子があり、その奥は庭へと続く窓だった。

ただどれも埃を被っていて、壁の塗装や天井が剥がれ落ちたり電球も消えかけていたために不気味だった。


だが最も不気味だったのは、そのテーブルの上だ。

埃を被ったそのテーブルには、ロウソクに火が灯ったままが立てられ、フォークと1つの皿が置かれ中にはピンクのスープが入っていたことだった。


その横には1枚のメモ書きが残されていて、


―――――――――――

一緒に食べない?

―――――――――――


と記されていた。


スープはまだ温かそうで、湯気がたっている。オニオンスープのような匂いも漂っていて、仮想の食欲をそそらせる。いや、これは現実の食欲であるかもしれない。


「誰が食べるかぁ!こんな幽霊屋敷にご飯食べに来る人なんて早々いないよ」


舞衣がそう言った瞬間、メモの文字は薄れて消え、別の文字が浮かんできた。


―――――――――――

食べてくれないの?

そっか。わかった。

―――――――――――


文字はどこか悲しげだった。

再び文字は薄れ、次第に赤い文字が浮かんできた。


――――――――

じゃあ、死んでね

――――――――


その文字を視認した瞬間、テーブルの上にあったフォークが浮き上がりそのまま舞衣目掛けて飛んできた。


ある程度の反射神経を持ち合わせていた有咲は、フォークの刃がこちらを向いた瞬間に横に避けていた。


フォークの直撃は避けたが、部屋全体が揺れ始めた。


「え、地震?何?」


しばらくすると揺れはおさまった。


すると、ダイニングの扉は閉まり、食器棚の中の茶碗やコップが一瞬にして割れ、食器棚が開いた。


中から割れたガラスの破片が一斉に飛び出してきて、天井付近を回りだした。

フォークやナイフも出てきて、刃をこちらに向けている。


「やばいやばいやばい!このままじゃ死んじゃう!」


この世界で死ぬと、持ち物のうちランダムに1つが消失する。今舞衣のインベントリには武器やアイテム、それに素材なども入っていた。

運悪く武器を引いてしまったら大変だ。


「そうだ!庭から逃げれば!」


飛びつくように庭への窓を開けようとする舞衣。


しかしどれだけ力を込めて引いてもそこが開くことはなかった。


必死で逃げようとしている舞衣の背中目掛けて、


グサッ


ナイフが突き刺さった。


舞衣はそこで息絶えたのだった。

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